テラーノベル
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クリスマスになった瞬間から、僕たちは、三人の幼馴染から、恋人同士になった。
そこからは、めくるめく恋人たちの甘い時間…がある訳もなく、風磨くん騒動で疲れ切った僕たちは、ベッドに直行して、泥のように眠った。
ひろぱ達が出て行ってから、僕は碌に睡眠も取れていなかった。ベッドの両傍が、空いている。僕の両手に伸びて、暖かく包んでくれるその手が、ない。それだけで、僕の心は押しつぶされそうに軋んで、眠りにつくのを妨げたのだ。
恋人になれたその夜、いつものようにベッドに入った僕たちは、手を繋いだ。暖かく、懐かしいその温度。僕は、二人に気付かれないように、実はこっそり泣いていた。両側から、すうすうと可愛い寝息が聞こえてくると、その音に安心しながら、僕も深い眠りへと落ちて行ったのだ。
クリスマスを終えると、それまでのキラキラとした夢のような時間が嘘みたいに、今度は年末年始に向けて現実が足早に過ぎていく。
僕たちも、仕事納めやバイト納めをし、三人で踊りながら、歌いながら、ふざけながら、部屋の大掃除を終わらせた。
「さて、じゃあ帰りますか。」
「えー、めんどくさ。」
「別にここでいいじゃん、どーせ一緒なんだし。」
「ダメダメ、ちゃんと家族と過ごさないと、それが日本のしきたりです。」
「何言ってんだ青い頭で。」
「二人のせいでしょお!」
僕は、文句ばかり垂れている二人を引きずって、この春に巣立ってから一度も帰っていない実家へと運んで行った。
「ただいまぁ〜。」
僕が、実家の玄関扉を開け、靴を脱ぐ。
「ただいまー。」
「ただいま〜。」
「え、なんで?!自分家帰んなよ!」
「ここ、ほぼ俺ん家。」
「大して変わらん。」
「いやいやこれこそ、あっちの部屋にいるのと変わんないから!」
そんな僕を素通りして、二人が僕の実家のリビングへとズカズカと入っていく。どうだろうね、あの態度。ホント、親の顔が見てみたいよ。なんて。
「「「おかえり〜。」」」
二人の後ろからリビングに入ると、そこには見てみたい親の顔が勢揃いしていた。
「…え?」
「どーせあんた達、涼架くんとこに入り浸ると思って、先にこっち来といたわよ。」
「うわ迷惑。」
「どの口で!ちゃんと自分家に帰ってきなさいよ、全く…。」
「おかえり、涼架くん。うわ、髪の毛すごいなぁ。」
「いいでしょおじさん、俺らプロデュース!」
「なんだ、なかなか似合うなぁ、息子。」
「息子って呼ばないでよ…。」
父親達は、テーブルで酒盛りしているし、母親達は、ソファーの方でお茶会と決め込んでいた。僕は呆れて溜め息をつきつつも、久しぶりのこの空気に安心していた。
「あ、そうそう、俺たち、三人で付き合ってるから。」
ひろぱが、全体に向かって言った。
僕は、固まった。
みんなが、僕らを見ている。
何か、何か言って誤魔化さないと…と、僕が口を開こうとした時。
「おおー、よかったなぁ元貴!」
「あんたグイグイいくから、涼架くん困ったんじゃないの?大丈夫〜?」
「滉斗、やるじゃないか。お前はスターだよ。」
「ここまでくるのに、長かったわねぇ〜。」
「ムコの貰い手があってよかったな、息子。」
「お料理は大丈夫だろうけど、その他が心配だわぁ。よろしくね、もっくん、ひろくん。」
口々に好き勝手な事を言って、またそれぞれに酒盛りとお茶会に興じていく。
僕は、終始ポカーンとして、何も応えられなかった。
「だってさ、良かったね、涼ちゃん。」
元貴が、肩をポンと叩く。
「やっぱり俺ら、間違ってないでしょ?」
ひろぱも、肩に手を乗せてきた。
「…いや、ここの人たちみんながおかしいんだと思うけど…。」
「気にしちゃダメだよ涼ちゃん、ケセラセラ。」
元貴がさらりと言って、二人とも当たり前のように僕の部屋へと上がって行った。
僕の部屋で昔のように、ゴロゴロしたり、漫画を読んだり、雑誌に目を通したりと、それぞれに過ごした後、夜ご飯を三家庭みんなで頂く。
「あんた達、もう結婚しちゃえば。」
「そうだよなぁ、もうここまできたら、ジジイになるまで一緒だろ。」
「いやいや、ダメでしょ、この子達まだ学生だから…。」
僕が困ったようにそう答えると、二人は目を輝かせてこちらを向いた。
「学生じゃなくなったら、結婚してくれんの?」
「え?」
「言ったね、涼ちゃん、もう確約だからね。」
「は?」
良かったなぁ、と、またやんややんやと盛り上がる。僕は、はあ、と溜め息をついて、食事の手を止めた。
「あのねえ、みんな。」
全員の視線が、僕に集まる。僕は、真剣な顔をしてみんなを見回した後、ニコッと笑った。
「ありがとう。僕ね、今、すっごく幸せ。」
元貴とひろぱが立ち上がって僕に抱きついてきた。僕も、両手で二人を抱きしめて、ポンポンと優しく背中を叩く。みんな、ひゅーひゅーと口を鳴らしたり、拍手をしたりして、僕らを囃し立てる。この、バカでもいいんだ、アホでもいいんだと、全てを受け入れてくれる愛しい世界で育ってきて、僕は本当に良かったと、心から嬉しく思った。
二階に上がり、寝る準備をしていると、二人がいそいそとベッドに昇ってきた。
「え?いやいや、そこに布団あるでしょ。てかホントに自分家帰んないの?」
「なんで俺と若井が床で並んで寝なきゃいけないわけ?おかしいでしょ。」
「おかしくないよ、お泊まりってそういうことでしょうよ。」
「なんで?俺たち、涼ちゃんの彼氏だよ?」
ひろぱの、『彼氏』という言葉に、僕はドキッとしてしまって、言葉に詰まった。二人がベッドに腰掛けて、じーっと見つめてくる。顔が熱くなってきた。
「…涼ちゃん、それは…誘ってるね?」
ひろぱが訊いてきた。
「…誘う?何を?」
「…これ。」
ギシ、とベッドに手をついて、顔を近づけたひろぱに、キスをされる。突然のことに驚いたが、キス自体は嬉しいので、目を閉じて受け入れた。すると、パジャマの裾から、暖かい手がスル、と入ってきた。
「…っ?!」
目を開いてその方を見ると、元貴の手が僕の身体を優しくさすっている。腰、腹、そして上の方へ昇ってきた。
「ん…!ん!」
ひろぱに何度もキスをされながら、元貴の手を押さえるが、全然止めようとしない。それどころか、元貴が首筋にキスをしたかと思うと、舌を這わせてきた。ヌル、と滑るそれが、僕の背中をゾクゾクと揺する。
ひろぱもキスを唇から頬、首筋、鎖骨へと移しながら、僕のパジャマのボタンを一つずつ外していく。
え、え、ちょ、ちょっと…ちょっと…!!
「ちょっとまったあーーーーー!!!」
家がちょっと浮いたんじゃないかと思うほどの声量で、僕が二人の動きを止める。二人は手を止め、僕の顔を見た。
「…うるさ…。」
「なに?」
「な、なに、じゃない!!何してんの!!」
「何って…。」
「恋人同士でしか、できないこと。」
「や、まっ…だ…!」
「やまだ?」
「だれ?」
二人がまた僕にのしかかって、手を伸ばしてきたその瞬間。僕の部屋のドアが勢いよく開いて、元貴とひろぱの首根っこが吊り上げられた。
「何やってんだお前ら!!」
「涼くんが嫌がってたらすぐにやめなさい!!」
「無理やりなんて男が廃るぞ!!」
「今日は帰るぞ。涼くんの貞操が危ない。」
それぞれの父親達に叱られ、シュンとしたまま引きずられるように帰っていく。僕は、震える手でボタンを止め直しながら、顔が真っ赤になるのを感じていた。
恋人しか、できないこと…?
二人は、何をどこまでするつもりだったのか…。
というか、これから、どこまでも、いっちゃうってこと…?!
今でさえ、胸がドキドキして、心臓が破裂しそうだったのに、僕は、二人の200%の愛を、受け止め切れるのだろうか。ああもう、なんだか身体が火照ってしょうがない!
僕は二人に、ごめん、と心の中で謝りながら、さっき二人にされた事を思い出して、自家発電してしまった。
冬休みが終わって、元貴の大学に、僕とひろぱが呼び出された。元貴と一緒に、あの心理学ゼミ室へと入る。
「いらっしゃい、藤澤くん、若井くん。」
「お久しぶりです、ニノ…みや先生。」
「ニノ先生でいいですよ。」
ニコッと笑って、僕たちを見る。その隣には、気持ちばかり身を小さくして座っている、風磨くん。
「ほら、風磨。」
ニノ先生が、風磨くんを促す。風磨くんは俯いていたが、チラ、と僕を見て、また視線を落とした。
「…涼架ちゃん、すみませんでした。」
「…ううん。」
「…俺、大森元貴に当てつける為に、涼架ちゃんと付き合ってた。ごめん。」
「…うん。でも、風磨くんは、ニノ先生が好きなんだよね?」
風磨くんは、ニノ先生を見て、少し睨む。
「…好きじゃねぇし。」
「あれ、昔はあんなに素直で可愛かったのになぁ。」
ニノ先生が困ったように笑う。そして、風磨くんの耳に顔を近づけた。
「…また可愛くしてやろうか?」
「…っ!いらねぇ…!」
顔を真っ赤にして、それでもどこか嬉しそうな風磨くんを見て、僕はクスッと笑う。ふと、ニノ先生の胸元を見ると、あの黄色いネックレスが掛かっていた。ああ、やっぱり風磨くんは、僕へのプレゼントを選んだわけじゃなかったんだ。
僕たちは、少し他愛もない話をして、大学を後にした。
家路に着きながら、三人で話す。
「良かったね、元貴。風磨くんとも仲直りできて。」
「…仲直りかぁ?あいつ全然反省してないだろ、アレ。」
「なあ。もっとちゃんとニノ先生に躾けてもらわないと。」
「躾け?ああ、ペットの猫ちゃん?」
「………。」
二人がぼくの顔をじっと見つめる。
「…え?イタチの方?」
僕が訊くと、二人が顔を見合わせた。
「…ねえ涼ちゃん、それってボケ?それとも本気?」
「なにが? 」
「いやどっちにしろ怖いわ。」
「なにがよ。」
「やべえな、これどーする?」
「俺ら一生出来ないかも、こんなの。」
「うわ最悪…。」
また二人が、ブツブツと何かを言い合っている。なんか久しぶりだな、この空気。僕は嬉しくなって、二人の肩を組んだ。
「まあまあ、いいじゃないの!帰ろ、僕たちの家に。」
二人は少し溜め息をついて、僕の腰に手を回して、一緒に歩いてくれた。
季節はかなり春を感じる3月の終わり頃、僕は亮平くんのお店に呼ばれていた。
お店に着くと、『本日貸切』の看板。何かイベントが入っているのかな、と中へ入ると、スーツを着た亮平くんが手招きする。
「おはよう、亮平くん。」
「おはよう。早速だけど、奥の部屋に来てくれる?」
僕は言われるがまま、奥のスタッフルームへと着いて行った。
部屋に入ると、白いジャケットに、白のレースが可憐なハイネックのシャツ、そして白いズボンに白いレースのオーバースカートが、ハンガーにそれぞれ吊られて待っている。
「これに、着替えて欲しいんだ。」
「え?僕?」
「うん、頼まれたの。」
「誰に?」
「もちろん、もっくんと、ひろぱ。」
二人の名前が出てきて、僕は目をぱちくりとさせた。え?これまでも何も聞いてないし、今朝だって、僕に何も言わずに、先に家を出て行ったけど、どういうこと?
僕が困惑の表情で黙っていると、いいからほら、と亮平くんがそれらの服を手渡してきた。
「着替え終わったら呼んで、ヘアメイクしてあげる。」
パタンとドアを閉められ、一人にされる。仕方なく、おずおずと着替え始めた。ふと鏡を見ると、その姿はまるで…。
「…結婚式みたい。」
全てを着替えて、ロッカーの横にある姿見で、僕はクルクルと回って自分を眺めた。
コンコン、とノックされて、亮平くんが顔を覗かせる。
「あ、着替え終わったね。いいね、可愛い、似合ってるよ。」
「亮平くんこれって、もしかして…。」
「うん、バレバレだよね、涼架くんが思ってるので合ってるよ。」
「…結婚式…?」
「まあ、そこまで畏まったものじゃないみたいだけど。宣誓式、かな。二人にとっての、ケジメなんでしょ。」
「…そうなんだ。」
僕は、既に泣きそうになって、亮平くんにハンカチを差し出される。その後、亮平くんの手によって、ライトブルーに色落ちした髪の毛はふわふわのウェーブにされ、そしてあちらこちらに白い小花の飾りをつけてもらう。メイクも施され、自分で言うのもなんだけど、すごく可愛くしてもらえた。
なんだか、ドアの向こうがガヤガヤと賑やかになっていて、人が集まっているらしいことが窺える。
「さ、行こうか、涼架くん。」
亮平くんがエスコートしてくれて、僕はその手を取り、ゆっくりとドアの向こうへ出た。
僕、元貴、ひろぱの両親と、蓮くん。ニノ先生に、風磨くん。さらに、おそらく他のゼミ生の人達と、あれはひろぱの調理グループの友達だろうか。同じ年頃の男女が、何人か集まっている。一斉にこちらを見た後、お店の中の、テーブルや椅子を避けてまっすぐ作られた道の両脇に、みんなが並んで立つ。
人垣が分かれると、その道の先に、白いスーツを着た元貴とひろぱが、お店の真ん中に立っていた。二人の向こうには、大きな窓ガラスがあって、明るい陽射しが二人を照らす。
「ご両親と歩く?」
亮平くんが僕に訊いたが、僕は小さく首を振った。
「それは、結婚式に置いとく。ここは、亮平くんと、歩きたいな。」
僕がそう言うと、にっこりと微笑んでくれた。そして、僕の両親へ頭を下げて、二人の元へ揃って歩いていく。
みんなの暖かな拍手の中、二人の前まで辿り着いた。
「亮平くん、ありがとう。」
元貴が笑いかける。
「涼ちゃん、おいで。」
ひろぱの言葉に合わせて、元貴も手を差し出す。
僕は、涙ぐみながら、微笑んで二人の手を取る。ゆっくりと振り返り、みんなの方を向く。
「私、大森元貴は、生涯をかけて、藤澤涼架を愛すると誓います。」
「私、若井滉斗は、いかなる時も、全身全霊をかけ、藤澤涼架を愛すると誓います。」
僕も、二人の手をギュッと握って、深く息を吸う。
「私、藤澤涼架は、大森元貴と、若井滉斗を、分け隔てなく、平等に愛し、守り抜く事を誓います。」
わあ、と歓声が上がり、割れんばかりの拍手を浴びる。僕は、涙が零れて、二人が両側からハンカチで優しく押さえてくれた。
「…こんなの、いつ計画してたの?」
「全然気付かなかったでしょ。」
「涼ちゃんサプライズしやすすぎ。」
「しやすすぎって…なんかヘン。」
涙を拭いながら、僕は笑った。みんなが席に着き、、亮平くんの用意してくれたご飯を食べ始めた。
僕たちも、挨拶回りに行かなきゃ、と歩みを進めようとした時、二人からそっと耳打ちされた。
「…涼ちゃんが名実共に処女の時に、バージンロード歩かせようと思って。」
「…今しかできないでしょ。」
「…え?」
僕が訊き返しても、二人はニコッと笑って、みんなのところへ歩いて行ってしまった。
処女?って、あの?僕男だから、童貞だけど。あれ?まあいいか。
ちょっと首を傾げながらも、二人に追いついて、それぞれのテーブルに行き、会話と食事を楽しんだ。
会食が終わって、みんなもすっかり帰った頃、僕は亮平くんと蓮くんに、改めてお礼を言いに行った。
「亮平くん、蓮くん、ホントにありがとう。僕、すごく嬉しかった。また、改めてお礼させてね。」
「うん。次は、僕たちの時にお願いね。」
亮平くんが、ニッコリと笑って、僕に左手を見せてきた。蓮くんも微笑んで、左手をかざす。二人の薬指には、キラリと光る指輪が着けられていた。
「え…もしかして…。」
「うん、僕、蓮にプロポーズしたんだ。蓮が大学卒業したら、結婚する。」
「ホントは俺が卒業する時にプロポーズするつもりだったのに…。」
「残念、早い者勝ちだよ。」
少し悔しそうに呟く蓮くんに、亮平くんが嬉しそうに笑いかける。亮平くんも蓮くんも、お互いに向き合って、この二人で精一杯の幸せを築いていくことにしたんだ。僕は、なんだか涙が止まらなかった。
「おめでとう…おめでとう、二人とも。僕、ホントに二人が大好きだから、すごく、嬉しい…。」
「うん、ありがとう。涼架くんのおかげだよ。僕も見習って、素直になれた。」
「俺も、逃げてばっかじゃダメだって、亮平にまっすぐ向き合えた。涼架さんのおかげだよ。」
僕は、首を振る。僕は何も、何もしていない。ただみんなが、好きな人を大切にできてるだけだ。
「僕は、何も…。」
「涼架くん、涼架くんはね、僕にとっては、奇跡だよ。きっと、あの二人にとっても。」
「涼架さんには、涼架さんだけの、奇跡があるんだよ。もちろん、俺らにも。涼架さんが、それを気付かせてくれたんだ。」
ありがとう、と二人から手を握って言われて、僕は、ただ頷いて、嗚咽を漏らして泣いてしまった。
僕らは、僕らだけの世界で、幸せに生きていける。それが、とても愛おしくて、大切なことなんだ。
元貴とひろぱも僕のそばに来て、みんなで抱きしめ合った。その暖かな腕の中で、僕は確かにそう感じていた。
新しい年度が始まり、元貴とひろぱは一つ学年が上がった。
風磨くんは無事に卒業し、ニノ先生と一緒に暮らし始めたそうだ。彼らも、彼らだけの世界で、その幸せを築いていく。
ピピピピ…
無機質なその音が、また新しい朝が来た事を告げる。僕は腕を伸ばして、その音を止めた。そのままうつ伏せになり、もう一度寝ようかな…と意識を手放そうとしたが、右からギュッと強く抱きしめられて、それを阻まれる。
「ぅぐ…ひろぱ。」
「うーん、涼ちゃんー。」
グリグリと頭を擦り付けられる。痛い。重い。やめろ、と言おうとすると、今度は左から、覆い被さるようにのし掛かられる。
「ぐぇ…元貴。」
「涼ちゃん、あったかい…。」
背中に体重を乗せられ、身動きが取れない。痛い。重い。
「あーもー、離して!」
「やーだよーん。」
「もっと吸わせろ。」
二人で僕の身体をさわさわと弄り始めたので、僕は身体をバタバタさせて、抵抗する。
「やめろおー!くすぐったい!!」
「うわ…色気ない声。」
「ねえ涼ちゃん、そろそろ俺ら先に進もうよ。」
元貴が僕に話しかける。僕は身体を起こして、あぐらをかく。
「先にって?」
「だからぁー、恋人にしかできない事。」
ひろぱもあぐらをかく。
「だから、それなに?って。」
「なにって…わかんだろ。」
元貴が呆れた顔をして、あぐらをかく。
「わかんないよ。はっきり言ってよ。」
「だから、イタチと猫ちゃんだよ!」
「ペットの話?ここペット不可だよ。」
「お前わざとだろ。」
「なにが。」
「こんなことある?成人した大人が、バカすぎない?」
「バカというよりアホ。」
「ちょっと、怒るよ。」
「ちょ、マジで、いっかい勉強会しよ。もうちゃんと教えないとダメだわコイツ。 」
「そうだな、こんなふうに育てたのは、俺らだからな。」
「はあ?何言って…」
ふと時計を見ると、そろそろ急ぐ時間になっていた。
「あーもー!もう難しい話はここまで!早く準備しないと、遅れるよ!」
「やば!」
「涼ちゃんのせいだ!」
「なんでだよ!」
ドタバタと洗面所や荷物部屋に散らばって、身支度を済ませていく。
急いでカーテンを開けて、朝陽を浴びる。
僕は、二人のお弁当を急いで作り、朝ごはんをテーブルに並べた。
「二人とも、ご飯できたよー!」
「はーい!」
「ありがと。」
元貴が、シャツのボタンを閉めながら、椅子に座る。ひろぱが、腕時計を着けながら、椅子に座った。僕も、最後にコーヒーを運んで、椅子に座る。
「それでは、手を合わせてください。」
「「「いただきます。」」」
あなただけの世界が
だけの世界で
『私らしく「おはよう」』
難しいことは
ここらでやめて
身支度を済ませて
陽の光を浴びて
朝食を済ませてゆく
『breakfast』完食
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完食、ありがとうございます🍳🍴 本当に美味しく、頂きました🤤❣️ 名実ともにバージンロードがお気に入りです🫶笑 大円団も、ラブコメの王道で大好きです❣️ 9月に私も幸せに滅びそうでしたが、💙の生誕祭が👀✨と引き戻して貰えました💕 朝からTVに釘付けで見事遅刻しかかったのは私です😇 早く寝たのに、あんまり意味がなかった、、、笑
完食(完結)おめでとうございます!!❤💛💙が結ばれてほんとによかったぁ!もう毎日breakfast見るために1日がんばってました! もしできたら…次に進んだところもみたいなぁなんて、、、
お久しぶりのコメントですいません (*_ _) 今回も大好きな作品です(,,>᎑<,,) いつもありがとうございます(* ᴗ͈ˬᴗ͈)” 次の作品も待っています(*•̀ㅂ•́)و✧