テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
リクエストより。己好みなのでお口に合うかは分かりませんが書かせて頂きました。ありがとうございます。
死ネタ
それでも宜しければお進み下さい
「避けろ仙蔵ッ!」
声が聞こえた時には既に手遅れだった。真後ろからぐっと髪を引っ張られる。腹を一突き。一寸の後に己の髪を切った。そのまま振り払い煙幕を張る。煙が身を隠している間に傷の確認をした。私を貫くそれは恐らく臓物も傷つけたのだろう。温くて酸っぱいものが胃から込み上げて私の口あてを赤く汚した。これは、まずい。致命傷になるには十分の傷だった。視界がぼやける。遠くに、駆け寄ってくる同室が見えた気がした。
すまない、いつもお前が手入れしてくれていた髪を、切ってしまった。
次に目を開けた時、ぽたぽたと熱い水滴が私の頬を流れていくのに気づいた。文次郎が私の名前を呼び続けていた。
「もん、じろ」
「仙蔵ッ!」
「すまない、髪、きって」
「そんなことはいい!」
「わたし、」
「もう喋るな! 今伊作を連れて、」
「もんじろうのことが、すきだ」
「は、?」
「一年のころから、ずっと、おまえをあいしていた。なのに、おまえが手入れしてくれた髪を」
「そんな遺言みたいに言うんじゃねえッ! 謝罪も告白もいつだって聞いてやるから! なあっ早く、伊作は!」
ごめんな、文次郎。致命傷なのは自分がいちばんよく分かっている。せめてどうかこの想いを伝えさせてくれ。
「あいしてる、おにいちゃん」
「やだっ! いやだッ! 殺してたまるか俺の同室を!」
私の愛しい同室よ。どうか泣かないでおくれ。これが運命、私の人生なのだ。私は幸せだったよ、お前と居られて。
文次郎。私の文次郎。たった六年一緒に過ごしただけの、私の人生を変えた男。
濡れ羽色の髪がさらさらと流れるのがあまりにも美しかった。あまりにも、あまりにも。
コメント
5件
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ😭😭😭😭 自分の想像していたものの上の上の上の遥か上で昇天です😇😇 大好きです…すっごいお話です…😩🫶💕 ありがとうございます🥹🫶💕💕💕