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試合が終わり、リオンは控室へと戻っていった。
一方のガ―レット。
顔面にリオンの渾身の拳を受けた
彼は、医務室に運ばれていった。
こうして、試合は幕を閉じた。
試合後、医務室で治療を受けるガ―レット。
そこへ、ガ―レットの仲間である少女メリーランがやってきた。
ベッドで横になっているガ―レットの傍にある椅子へ座る。
しばらく沈黙が流れる。
最初に口を開いたのは、ガ―レットの方だった。
「負けたのか…オレが…」
「はい…」
「メリー…」
悔しさを滲ませながら言うガ―レット。
それに対し、メリーランは静かに返事をした。
彼女の目からは涙が零れ落ちていた。
まさかこんなところで負けるとは思わなかった。
半年以上前に殺したと思ったリオン、その彼に負けるとは。
「クッ…俺がアイツに…うぅ…」
「起きちゃダメです!寝ていないと…」
「うるせぇ!」
そう言い放つと、ガ―レットは無理やり起き上がろうとする。
だが、力が入らず倒れてしまった。
「大丈夫ですか!?」
慌てて駆け寄るメリーラン。
「クソッ…何でだよ…」
倒れたまま拳を強く握りしめ、歯ぎしりするガ―レット。
口に血の味が広がる。
先ほど受けた、リオンの渾身の一撃で傷ついていたのだ。
鼻も折れ曲がり、出血している。
腕も折れた。
涙を流し嗚咽を漏らすガ―レット。
その様子を見たメリーランが、そっと彼の手を握った。
「今は休んでください。ゆっくり治せばいいんです。ね?」
優しく語り掛けるメリーラン。
それを聞き、少し落ち着きを取り戻した
その後、彼女はガ―レットの回復を待つため、しばらくの間、付き添うことにした。
「そういえばメリー、他のヤツはどうした?」
「ええ、まずは…」
バッシュは次の試合に向けて休息中。
ミドリはそれに付き添っているらしい。
キョウナは姿が見えないらしく、メリーランも知らないらしい。
ルイサは…
「ルイサは、急に倒れてしまって…」
とのことだった。
彼女も試合の疲れがたたったのか?
いや、そうではないようだ。
なんでもどうやら突然倒れてしまったらしい。
ガ―レットの応援をしている途中に。
「あの時はビックリしましたよ…」
ルイサは医務室の別室で寝かされているとのこと。
メリーラン曰く、特に異常はないそうだ。
だが、念のため安静にしているらしい。
「私も少し調子が悪いので、少し休んできます…」
そう言ってメリーランはその場から去って行った。
一人になったガ―レット。
まだ身体が痛む。
そのまま眠ることにした…
一方その頃。
ガ―レットの仲間であり、大会を勝ち進んでいる少女バッシュ。
現在は準決勝を控え、休憩を取っている。
控室には誰もいない。
今のうちに次の対戦相手の情報を整理しようと思い、参加者の資料を読み込んでいた。
「ふう…」
資料を読み終えたバッシュ。
ふと彼女は、先ほどキョウナが持ってきた料理が目に入った。
中にはパンと肉料理が入っていたバスケット。
肉料理はルイサたちが食べてしまったのでほとんど残っていない。
残っているのは、『ガ―レットが取った分』の肉料理のみ。
試合が終わった後に食べるつもりだったのだろう。
「あいつの料理か。喰わなかったんだな」
しかしパンは少しだけ残っていた。
それを一つ取り出し食べる。
「んっ…」
頭を使っていたので、やはり腹が減っていたのだろう。
あっという間に平らげてしまう。
そんな時、バッシュは肉料理の入っていた入れ物に目が入った。
彼女は牛肉が嫌いなので料理自体に興味は無い。
しかし…
「これは…」
肉料理に使われていたと思われる香辛料。
バッシュが気になったのはそれだ。
粗く削られたそれが、入れ物に落ちている。
「ほう…」
そう呟くと、何かに気付いたようにハッとする。
そしてそれを口に含み、粗く削られたその香辛料を噛み砕く。
軽い笑みを浮かべるバッシュ。
この料理を作ったのはキョウナだった。
この香辛料、作ったのはキョウナ。
倒れたルイサ達…
「ははは、そういうことか」
バッシュはニヤリとした表情で、不敵な笑い声をあげた。
そして、控室から出て行った…
そして数時間後…
試合会場、そこには大勢の観客が集まっていた。
皆、次なる戦いを見ようと集まっているのだ。
その中には、もちろんアリスとシルヴィの姿もあった。
二人は観客席の最前列に座り、試合が始まるのを待っていた。
しばらくして…
「さあ!これより準決勝戦を始めたいと思います!」
司会の男が叫ぶ。
同時に歓声が上がった。
準決勝はリオンが出場する。
対戦相手は木刀を二本使う流派の男だ。
「それでは、選手入場です!!」
大きな掛け声と共に、二人の選手が姿を現す。
リオンと二刀流派の男。互いに向かい合い構える。
「両者、準備はよろしいですね?」
司会者の確認に、二人とも無言のままうなずく。
「それでは、試合開始!」
合図と同時に、先に仕掛けたのは二刀流派の男だった。
「ハアッ!」
勢いよく走り出すと、両手に持つ二本の木刀を振り下ろす。
それに対し、リオンは無防備のまま棒立ちしている。
このままだとやられてしまう。
観客たちはそう思った。
だが…
「ぐわッ!?」
悲鳴を上げたのは、リオンではなく相手の方であった。
男は地面に倒れ込む。
無防備に見えたのは観客だけ。
実はリオンが相手の動きを先読みし、男の攻撃を見事に避けていたのだ。
そして隙ができたところを狙い、カウンターを決めたのだ。
「なかなかやるな…」
「あなたもね…」
「あのガ―レットを倒した男に褒められるとは、うれしいねェ…」
そう言いながら立ち上がる二刀流派の男。
顔からは血を流しているが、まだ闘志を失っていないようだ。
彼は再び、剣を構える。
それを見たリオンも、身構えた。
二刀流派の男の構え、それはリオンのまったく知らないものだった。
「見たことの無い構えだ…」
「極東の剣技だ、このあたりじゃああまり見ないだろうな」
そう言うと、男は再び突進してきた。
先ほどと同じように、二本の木刀による攻撃。
それを冷静に見極めると、今度は攻撃を避けずに受け止めた。
「何ィ!?」
驚く相手に対し、リオンはニヤリとした。
そのまま力任せに押し返すと、体勢が崩れたところを狙って反撃する。
「グフゥ…」
胸元に強い一撃を受け、男は苦しそうな表情で膝をつく。
だが、それでもなお戦う意思は消えていないようだ。
なんとか立ち上がり、またもや向かってくる。
かなり撃たれ強い人だ、リオンはそう判断した。
対する二刀流派の男も、リオンの攻撃読みの正確さを評価していた。
互いに出し惜しみをしていては負ける…
そう考えたのか、次の瞬間には両者とも全力を出す。
「行くぞォオオオオッ!!!」
「来いッ!!」
叫び声を上げ、激しくぶつかり合う。
激しい攻防が繰り広げられ、会場は大盛り上がりとなった。
そして数分後…
決着がついた。
「はぁ…はぁ…」
「くっ…」
結果はリオンの勝利。最後の方は疲労により動けなくなっていた二刀流派の男。
それに対し、リオンは最後までしっかりと立っていた。
「勝者、リオン選手!!」
司会の宣言を聞き、さらに盛り上がる観客たち。
しかしそんな中、悔しがっている人物がいた。
二刀流派の男だ。
彼は木刀を落とし、その場に崩れ落ちた。
負けたことがショックだったのだろう。
そんな彼に、リオンは手を差し伸べて言った。
「いい試合でした」
「…へ、ありがとうよ」
差し出された手を握り、起き上がる二刀流派の男。
そしてリオンと握手を交わすと、その場から去って行った。
先ほどとは打って変わっていい試合だった。
しかし最後の試合には不穏な空気が漂っていた…