テラーノベル
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また唇が触れる。
さっきから何度目か分からない。
チャンスのキスはさっきまでの軽いものじゃない。
逃げる隙もなくて。
近くて。
息が混ざる。
「……ん、」
頭がぼんやりする。
さっきまで煽ってたはずなのに。
今はもう。
考えるのが追いつかない。
くらくらする。
体の力が抜けていく。
落ちていくみたいな感覚。
ふと。
いつもの癖で。
手が動く。
ネクタイを掴もうとする。
くいって。
落ちないように。
でも。
指が空を掴む。
……ない。
そうだ。
さっき。
チャンスが外した。
一瞬焦る。
足場がない感じ。
またキス。
息が浅くなる。
「……チャン、ス」
声がうまく出ない。
無意識に。
今度はチャンスの服を掴む。
シャツの布。
ぎゅっと。
でも。
なんか違う。
落ちていく感じが止まらない。
心臓がうるさい。
頭の奥がじんじんする。
チャンスが少し離れて言う。
「……エリオット?」
俺はぼんやりしたまま。
もう一度手を動かす。
今度は。
チャンスの手。
指先が触れる。
一瞬。
チャンスが止まる。
俺はそのまま。
指を絡める。
ぎゅ。
手を繋ぐ。
その瞬間。
不思議なくらい。
落ちていく感じが少し止まる。
呼吸が戻る。
「……あ」
小さく息を吐く。
チャンスが低く聞く。
「どうした」
俺はまだ手を離さない。
むしろ。
少し握る。
「……これ」
少し笑う。
「落ちない」
チャンスが少し黙る。
それから。
指を握り返す。
ぎゅ。
そのまま。
また顔が近づく。
今度のキスは。
さっきより少しゆっくり。
手は。
ずっと繋がったまま。
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ゆゆゆゆ
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#doublefedora