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「ごめんね、蒼太。ごめんねぇ…」
泣きながら僕に謝る母を、僕は必死に否定する。
「母さんのせいじゃないよ。僕の不注意だったんだ。それに…」
僕は付け足した。それに、手術は成功したんだし。
「今もこうして生きてる。生きてるだけで幸せなんだろ?」
”俺たちが生きてるだけで幸せ”これが母の口癖だ。
「謝るのはこっちだし。ごめん、母さん。慶太もごめんね。」
僕は申し訳ない気持ちで母さんと慶太を見る。
「にーにー」
にへへっと、慶太は状況が分からないまま僕を見る。母さんは更に目に涙をためる。
「ごめんね、もう少し居てあげたいんだけど…」
申し訳なさそうに僕を見る母。
「いーよ、別に。僕のことは気にしないで。大丈夫だから」
その後、母さんと慶太は病室を後にした。
(喉乾いたな…)
僕はそう思いながら車椅子に身を預け、自動販売機へ向かう。
穴に小銭を入れ、飲みたい物を選択する。冷たいソーダで涼んでいると、ふと目に談話室が目に入る。僕は、寄ってみることにした。
(こんなところがあったんだ)
談話室に座り、ゆっくりとソーダを飲む。その時、ある少女が目に入った。揺れるカーテンの前で、読書をしている。なびく髪、髪を耳にかける仕草、ペラとページをめくる綺麗な指、茶色の明るい瞳、スラリとした鼻筋。
「綺麗だな…」
僕は思わず、口に出してしまっていた。急いで口を塞ぎ、彼女を確認する。彼女と目が合ってしまった。
「結ばれない恋って、辛いよね。」
彼女が本に視線を固定したまま、ポツリと言葉を放つ。
これが、僕と彼女の出会いだった。