余命、半年

🖤え…？嘘でしょ？やめてよ、こんな時間に。

蓮は信じられないのか、俺の言葉を冗談だと思ってにこにことしている。

この笑顔を壊したくない。

でも、これ以上蓮の病気が進行してしまうのはもっと嫌だ。ちゃんと伝えなければ。

💚本当なんだよ。

🖤…

💚最近具合悪かったでしょ？それも、全部病気のせいだって。来月から入院もして欲しいって

🖤ふざけんなよ

💚っ蓮？

🖤今が大事なとこなんだよ！なのに余命半年なんて、、信じらんないよ…

怒っているのかと思ったが、蓮の唇から零れたのは嗚咽だった。

大粒の涙を流して崩れ落ちる。その姿は絶望そのものでしかなかった。

震える肩をそっと抱き寄せると、俺の頬にも生ぬるさが伝った。

悔しい。どうして俺たちがこんな思いをしなきゃならないんだ。ふたりで肩身寄せあって、慎ましく暮らしてきただけなのに。

もっと早く気づいていれば良かった。なんで気づかなかったんだろう。蓮は時折つらそうにしていたのに。

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あっという間に月日は過ぎ、入院の日になった。

蓮の表情は重苦しい。俺にはどうしようもできず、大きな病院に車を走らせるだけだった。

経過観察のために病院には何度も来たが、ついに入院ともなると気持ちが沈む。

受付を済ませて案内された先には、にこやかで活発そうな看護師と、体格のよい医師がいた。

💛初めまして。目黒さんですね。かかりつけ医が育休期間に入ってしまったので、僕が代わりに担当させていただきます。医師の岩本です。

🩷看護師の佐久間です！お荷物、預からせていただきますねー！

🖤💚よろしくお願いします。

俺は手続きがあるので蓮とは別れた。先ほどの医師は初対面だったが、真面目で誠実そうな人だ。

💛えっと、阿部さんは目黒さんのご友人ということでよろしいでしょうか？

💚あ、えっと僕たちは恋人同士で…

💛そうなんですか。いいですね、仲が良さそうで

💚へっ？

💛僕も同性の恋人がいるんですよ。残業ばかりであまり一緒に居られないんですがね笑

💚そうですか…

岩本と名乗った医師は、くしゃっと笑う笑顔がなんだか可愛らしく見えて、思わず照れてしまった。

💛失礼しました。入院の費用に関してですが…

俺は宣告されたあの日から、必死に資料やネットを漁って入院や病気のこと、メンタルケアの方法などを独りで調べていた。

でも、人から説明されるとこうも分かりやすいものか。今までネットの膨大な情報量に追い付いていなかった頭は、すらすらと説明する医師の話を理解できている。

岩本の説明にメモを取っていたら、あっという間に時間が過ぎた。

💚今日は、ありがとうございました。

💛いえ、目黒さんはかなり珍しい症例なので、私たちも初めてのところではありますが、徹底的にサポートさせていただきます。ご不明な点などありましたら、いつでもご相談くださいね。

💚ありがとうございます。心強いです！

帰り際に病室に顔を出すと、蓮はさっきの看護師と親しそうに話していた。

💚蓮、体調は変わりない？

🖤あ、亮平。来てたんだね。今のところ落ち着いていると思うよ。

💚そう、良かった。今日から寂しいと思うけど、またすぐ来るからね。

🖤ふふっ 子供じゃないんだから大丈夫だって。亮平も体調崩さないようにね。

🩷目黒さんこう言ってるけど、あなたと離れるのが相当嫌みたいですよ！

💚へ？

髪をピンク色に染めた看護師が、ひょこっと横から顔を出す。

🩷だってここに来てから目黒さん、ずーっ惚気ばっかり話してるんですもん笑笑 おふたり、ラブラブなんですね～

🖤ちょっと佐久間さん…やめてくださいよ…//

蓮は恥ずかしそうに俺から目を逸らす。その横顔は隣にいる、佐久間と呼ばれた看護師の頭と同じ色をしていた。

🩷あははっ！照れてるぅ～

💚じゃあ、寂しくならないように明日も来るね。

🖤ほんとに！

蓮の顔がぱあっと輝いた。佐久間と目をあわせて笑った。最初の重苦しい気分が、ちょっと晴れたような気がした。

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