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それから一ヶ月ほど。
いとは寝室の隣にある縁側に座って月を眺めていた。
今宵は上弦の月だ。
いとは夫を待っているが、なぜか遅い。
もうかれこれ四半刻待っている。
こんなに遅いことは初めてだった。
いとは少しの寂しさを感じた。
人に寂しさを覚えるのも十年近くぶりだった。
いとはとりあえず貴時を信じてみることにした。
この二ヶ月、夫と接してそうしてみることにしたのだ。
見返りを求める人間があんなにも優しい眼差しをするだろうか。
やわらかく笑うだろうか。
いとは実家で欲にまみれた人間を山程見てきた。
欲にまみれた人間は明らかに下心のある目をしており、下卑た笑みを浮かべる。
貴時はそんな人間には見えなかった。
演技しているだけかもしれないが、一旦信じてみる。
貴時が誠実な人間であればよかったと思えるし、そうでなければその時は仕方がない。 信じてしまったこちらの責任だ。
賭けるしかないのだ。
疑いが絶えない世界でも、月は美しい。
いとは柱にもたれかかり、貴時をもう少し待つことにした。
と、その時。
「いと」
「は、い」
待ち望んでいた声に名を呼ばれ、振り返って驚いた。
振り返った目の前に、犬の顔があった。
犬は舌を出してへっ、へっと息をしている。
つぶらな瞳と表情が愛くるしい。
いとは反射的に犬を受け取った。
毛のもさもさとした感触が手に広がった。
「……この子は?」
いとは顔を上げ貴時に尋ねる。
貴時はいとの隣に座りながら答えた。
「業者から買い取った柴犬だ」
「しばいぬ?」
「そう言う種類の犬だ」
へぇ、と言いながらいとは視線を犬に戻す。
子犬なのか、いとでも持ち上げられるほど身体が小さい。
犬の表情を見ていると、自然と笑みがこぼれた。
「遅くなってすまなかった。こいつがすばしっこく逃げるから……。気に入らなかったか?」
いとの反応が薄いことが不安になったのか、貴時が問う。
しかし、いとは初めて見たときから犬を気に入っていた。
見れば見るほどかわいらしく思える。
それに、貴時は自分を喜ばそうとわざわざ業者から買い取ったのだろう。
それが何より嬉しかった。
……やはり彼を信じてみてもいいかもしれない。
いとは犬を胸に抱き、貴時に心から笑いかける。
「いいえ、ありがとうございます」
すると貴時は目を見開き、かと思うと下を向いて額に片手を当てた。
「……やはり雄にしたのは間違いだったな」
「え?」
貴時がぼそりと呟いた言葉がよく聞こえず、いとは首を傾げた。
「何でもない。気に入ってもらえたならよかった」
貴時は首を横に振り、いとの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「西条、いるか」
突然貴時が後ろを向き香世を呼ぶ。
すると、すぐに香世は駆け寄ってきた。
「はい、若旦那様」
「この犬を預かっておけ。それと、いつも言っているが、夜間はこの部屋に寄りつくなよ」
「承知致しました」
貴時はいとの方を向き、犬を渡すよう促した。
いとは名残り惜しかったが、また明日も会えるだろうからと渋々貴時に渡した。
貴時はいとから受け取った犬を香世に渡した。
香世は犬をしっかり抱くと、一礼して去っていった。
香世の姿が見えなくなると、貴時は急にいとを横抱きにしながら立ち上がった。
「きゃっ」
いとはびっくりして思わず貴時の首に腕を回してしがみついた。
貴時は強めの力でいとを抱きながら歩き、部屋に入って襖を全て閉めた。
そして、いとを布団の上にそっと下ろし、彼女を組み敷いた体勢で彼女に口づける。
「んんむ……、んんっ、……ふ……」
舌同士を絡める卑猥な接吻。
いつもしているのに、やり方はなんとなくわかってくるのに、いとは恥じらいが拭えなかった。
貴時の舌はいとの舌を捕らえ、彼女の口内を舐り、かと思うと唾液をじゅうっと吸い込む。
「んんんっ……」
いとは頭がふわふわするような感覚に陥った。
下腹部が疼き、もじもじと脚をすり合わせる。
しばらくして貴時は口づけを解いた。
銀色の糸が尾を引き、すぐに切れる。
貴時はいとの顎に垂れたどちらのものかもわからない唾液をちろりと舐った。
貴時は自分といとの襦袢を剥ぎ、脱ぎ捨てる。
そしていとの脚を開き、濡れ具合を確認した。
いとの秘所はもう既にたっぷりとぬかるんでいた。
いとは口づけだけでぐっしょり濡れるようになってしまったのだ。
貴時は硬く勃起した自分の一物をいとの秘部にあてがう。
いとが秘部を見やった頃にはもう遅かった。
貴時は一気にいとを貫いた。
「あぁあああっーーーーーーーーー 」
いとは気をやった。
身体を痙攣させ、背を曲げる。
しかし、落ち着く暇はなかった。
貴時はすぐに激しい抽挿を始める。
「ああっ、……あっ、待っ、あああっ……」
子宮に直接振動が届くような重い抽挿だ。
貴時はいとの指に自分の指をぎゅっと絡ませ、布団にいとの手を縫いつけた。
「ああんっ、……あっ、あっ……、ひあっ」
深い快楽だけがいとを襲う。
一度これに支配されると、貴時に抱かれている限り、制御不能だった。
「あんっ……ああっ、んああっ、ああんっ」
いとの甘い声に煽られ、貴時は加速した。