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帰りがけに、未央は閉まりかけたスーパーに飛び込んで買いものをした。あしたの仕事は夕方からだから、少し時間がある。日中に作ってあさっての試食会に備えようと、材料を買い込んだ。

 

自転車に乗る前に、亮介にいま最寄り駅に着いたと連絡しておく。話したいことってなんだろう。

 

そうだ。新田先生に宣戦布告されて、すっかり忘れていたが、橋本先生のこと! 郡司くんにレシピ開発部の話もしなくちゃ。きのうは酔っちゃって、あんまり話せなかったから、ちゃんと聞こう。ついでに……好きって言えたらいいな。

 

未央は自転車にまたがって、帰り道を急いだ。荷物を置き、サクラのご飯を用意して、バタバタと亮介の部屋へ向かう。

 

「郡司くん、ごめんね遅くなって」

 

──コンコン、ドアをたたいても応答がない。あれ?もう寝ちゃったのかな。22時……。寝るっちゃ寝る時間だけど。ピンポンを押すには時間も遅いし気が引けた。残念だけど、あしたの試作の仕込みでもするか。そう部屋へ戻ろうとしたとき、亮介の部屋のドアが開いた。

 

「未央さん、おつかれさま。どうぞ」

 

シャワーを浴びていたのだろう。濡れた髪の毛をふきながら、上半身裸での登場。ドキッとするが、さっと亮介は部屋へ入ってしまった。

 

キャラ変はしてないようだ。緊張しながらはじめて亮介の部屋へ上がった。未央の部屋と対になった間取り。きれいに掃除されていて、ベッドが一つに、テレビとローテーブル。シンプルだけどセンス良くまとまっている。

 

「ごはんまだでしょ? 生姜焼きだけど、食べますか?」

 

「ありがとう、すこしもらおうかな」

 

亮介の料理はドーンと豪快だった。味つけは生姜と醤油と酒でシンプルかつ

王道。ビールに合わせたのか、濃いめの味がたまらない。

 

商店街の肉屋で買ったという厚めのロース肉は、やわらかくボリュームもあって最高だった。

 

「郡司くん、料理上手だね。おいしい」

 

「未央さんに褒められるとうれしいです」

 

未央はおなかぺこぺこだったので、ビールをもらいながらパクパクと生姜焼きを食べた。亮介はレモンチューハイを開けて、ほてった体を縁側に座って冷やしている。「郡司くん、museさんとのコラボの件、私も話し合いに参加することになったから、よろしくね」

 

「あの新田さん……でしたっけ。未央さんと代わったんですか?」

 

「ううん、新田先生もそのまま担当なんだけど、サポート役で私も話し合いに同行することになったの。もしかしてそちらに、ご迷惑おかけしてないかと心配してて……」

 

「あー、そう……ですね。はい大丈夫……です」

 

これはかなり迷惑かけてる感じだな。

 

「気にしなくていいから、何に困ってるか教えてくれる?」

 

「はい……。最初に未央さんに話した時は、3つメニューを考えたいって言ったと思うんですけど、こっちの都合でフードだけお願いすることになったんです。

 

それが新田さん、せっかく考えたからドリンクもぜひやらせて欲しいって言って、一歩も引かずにマネージャーと張り合うので、僕が板挟みになってまして……」

 

「ええっ!? ごめんね気がつかずに。あした、連絡しておくね」

 

「それと……」

「他にも?」

「デートに誘われてます」

 

……でっ、デート!! まじか!?

 

「そっ、そうなんだ」

 

宣戦布告どころか、もう戦いの火蓋が切られていたとは。

 

「結構断ってるんですけど、試作を家でやるから来てくれとか、市場調査に行きたいから一緒に行こうとか……いろいろ理由つけて誘われてます」

 

「へぇ、それはすごい……ね」あまりの敵の大胆さに思わず黙り込んだ。あの可愛さだったらそれくらいできそう。郡司くんはどう思ってるのかな。

 

「そうだ、未央さん。兄のことなんですけど」

 

敵の先手を喰らって愕然としていたので、へっ!? と変な声が出た。

 

「あ、あぁ橋本先生ね。きのう聞いてびっくりしたよ。きょうはお会いしてないけど。またごあいさつしてみるね」

 

しどろもどろになりながら、ビールを飲み干す。まだ橋本先生が郡司くんの兄だというのが信じられない。

 

「たぶん、仕事先にはカミングアウトしているし、秘密にするような人じゃないので、気にせず話して大丈夫だと思います。実は未央さんのこと、兄からよく聞いてました」

 

「え? 橋本先生が? 私の話を郡司くんに?」

 

「はい、その話の人と、未央さんが同一人物だって知ったのは最近ですけど」

 

「そうだったんだ。気になるけど、ちょっと怖いな」

 

未央は食べ終わったお皿を持って、台所へ立った。亮介はそのまま置いといて、と言ったが、手を動かしていたかったので洗い物をした。橋本先生に、何言われてたんだろう、怖い。

 

「ふふっ、大丈夫。いいことですよ。レシピのセンスがいい子がいるってよく話してました。ちょっとした味付けの発想がいいんだって。レシピ開発部にああいう子がいたらなって言ってたので、それで異動を未央さんに打診したのだと思います」

 

きょうはなんだかベタ褒めされるな。一生分褒められてるみたい。「うれしい。私が前に一本筋の通ったひとになりたいって言ったでしょう。あれ、橋本先生のことなの」

 

洗った皿を水切りカゴに入れる。亮介はこっちこっちと、未央を隣に呼び縁側に並んで座った。

すき、ぜんぶ好き。

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