テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

 

「未央さんあれになっちゃだめです」

 

「仕事では、すごくハキハキしてかっこいいんだよ。自分の意見をきちんと順序立てて話せるし、否定的な意見でもちゃんと耳を傾けて、まとめようとしてくれる。それが一本の|大木《たいぼく》みたいでうらやましい。ああいう人になりたいの」

 

亮介は、大木? と聞き返した。

 

「そう、大木。どしんと腰を据えて、みんなを見守ってるの。少々の風が吹いても折れないし、むしろその風すらも楽しんでいる。ときには傘になって守ってくれた。橋本先生は素晴らしい上司だよ」

 

未央は亮介に笑顔を向ける。兄、いや姉をほめちぎられて亮介は恥ずかしそうにしていた。

 

「そうだとは知らなかったです。僕にとってはただのうざったい兄でしかないので」

 

ちらりと亮介は未央を見たが、照れからか、ぱっと庭先に向き直した。

 

「郡司くん、ゴキブリを頭に乗せたっていうのが……」

 

「はい、そうです。兄です」

 

「まさか黄色い声って……」

 

「兄の影響です。家では兄が女性であることを家族みんな受け入れていました。兄ももちろん女性として過ごしていましたので、びっくりする時はきゃーとか、いやーとか言ってました。

 

小さい頃からそれをみていたので、そういうものだ勘違いして、直すに直せなくなり、いまに至ります」

 

なるほど。なぞがひとつひとつ解けてきた。

 

「も、もしかしてキャラ変も?」

 

「きっかけは兄ですね。自分の幼い頃、兄はまだ外では男性として過ごしていました。それが家に帰ると女性になるので、どうしてなのか、幼い僕には理解できなかったんです。

 

兄に直接聞いたところ、本を読むと変身するといわれて。

冗談のつもりだったらしいんですけど、自分はそれを鵜呑みにし、さらには楽しみ始めたので、失敗だったとあとで言われました。

 

父は面白くていいじゃないかと肯定的だったので、そのままにされたみたいです」

 

郡司くんの家はきっと笑いが絶えない家庭だったのだろう。お兄さんを、お姉さんとして受け入れ、キャラ変の自分を肯定しているのも、家庭の環境ありきだなと未央は思った。「なんか、楽しそう。いいね、家族って」

 

「かなり変わってますけどね」

 

「私もいつか、家族ができるのかな」

 

言い終わってハッとした。亮介は穏やかに笑って未央を見つめている。

 

「未央さん、さっきのデートの話」

 

「新田先生との?」

 

「僕が行ったらどう思います?」

 

「郡司くんが行きたいなら私は止めないし……」

 

あわててそう言ったが、本心はもちろん違う。亮介はすっと未央に近づいて首筋に唇を這わせはじめた。

 

「ちょっ……郡司くん?」

 

「そんなこと聞いてません。未央さんはどう思うんですか?」

 

亮介が首筋や耳、頬にキスする音が、きらきらと星になって、静かな部屋の中を飛び回る。

 

郡司くん、私──

loading

この作品はいかがでしたか?

1

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚