「昨日の撮影、あの橋のロケが最後だったの?」
「そう…」
「で、今朝になって見てみたら…カフスボタンが無くなっていたと…」
「そう」
「だとしたら…橋のロケで落としたんじゃないの?最後って事は、もう暗かったんでしょ?」
「そうなんだけど…。今朝方、スタッフが数名で…わざわざ橋の上を探してくれたらしいけど。見つからなかったって聞かされた…」
そう言った渡辺が、胃の辺りを抑えて辛そうな顔をする
「翔太…大丈夫?胃が痛むんでしょ?」
心配そうに覗き込む岩本…
「心配させて、ごめん…。大丈夫だけど…ちょっとだけ、休ませて…」
渡辺は、岩本の肩を借りて目を瞑る…
程なくして、寝息が聞こえて来たので、身体をソッと抱いてベッドへ運ぶ…
「無理するなって言っても、無理な話か…」
目の下には眠れないのか隈が有り…頬も痩けている様に見える
「………」
ジッと眠っている渡辺を見つめていた岩本は
しばらく何かを考え、頷いた…
【用事が出来たので、出掛けてきます】
そう書き置きをして、外に出て…
そのまま車に乗って出て行った
「ここか…例の橋…」
橋の上は撮影スタッフが数名で、明るい内に探したと言っていた…
そうなると、残る場所は…
「冷たっ!」
ズボンを捲り上げ、川の中に入って行く…
川と言っても、それ程大きな深い川では無い為…流されずに済んでいる
「ドブ攫いでもするか…」
岩本は、スマホのライトを頼りに川を攫って…たった一人でカフスを探す…
1時間、2時間と時間が過ぎて…空が白み、辺りが明るくなって来た
スマホの充電が切れて、ライトが付かなくなったものの…
日が出て来たおかげで周りが見える
「こっちじゃ無いとすると…反対か?」
橋を挟んだ逆側に移動して、懸命に捜索を続けて行く…
一方、その頃…渡辺は
部屋の中で書き置きを見つけ…首を傾げる…
取り合えず、今日もドラマのスタジオ撮影がある為…
一旦自宅へ帰ろうと部屋を出る
「照、一体何処に居るんだよ…」
LINEをしても既読が付かない岩本に…
渡辺がポツリとそう呟くが、当然返事は返って来ない
「はぁ…」
仕方なく、タクシーを呼び…乗り込んで
岩本の部屋を後にした
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