テラーノベル
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⚠️注意⚠️
左手君がよわよわです(泣いてる)
嘔吐表現あり
それでも良い方どうぞ!!
左手「…、」
あつい。
そう思って目を覚ます。全身汗をかいていて、服や髪の毛が肌にくっつくのに不快感を覚える。
この感覚、…いやちげぇよな。うん、そうに違いない。
脳内に浮かび上がってくる単語に気付かないふりをしてベットから立ち上がった。その瞬間、ぐらっ、と世界が回る。
左手「…ッ!!、とあぶね、」
前に倒れ込みそうになった体を無理やりベットの方に方向転換させ、危機を逃れた。
あ~ぁ、これもう確定じゃんかよ…ぜってぇ風邪ひいてる
ベットに顔を埋めてそんなことを考える。
左手「う゛ぅ…」
左手は風邪が大嫌いだ。風邪になると治るまでベットの上で安静にする必要がある。その治るまでの時間が退屈で退屈で仕方がないから。そして、何より風邪を引いたら父親に殴られるから。迷惑をかけやがって、なんていう言葉とともに飛んでくる拳を思い出し左手は顔を顰めた。
昔のことなんてもう忘れちまったはずだったんだけどな
心と体は連動しているというのは本当のようだ。身体が弱っているせいなのか心なしかメンタルまで弱っているような気がする。
ま、こんなんすぐ治るだろ。つーかもう8時だしそろそろリビング行ってやんねぇと
フラフラとする体に鞭を打ち左手はもう一度立ち上がった。裸足に触れる床の冷たさを心地よく感じた。
リビングのドアの前。深呼吸をする。体調が悪いのがバレてしまったら千トが泣くそれに今日は依頼もある、尚更バレる訳には行かない。
ドアノブに手をかけて1歩踏み出す。
千ト「左手君、!おはよう!」
左手「おはよ」
右手「おはようございます左手。今日は珍しく遅かったですね」
左手「昨日夜更かししちまって、はぁ…ねみぃ」
我ながら名演技だわ、俺天才かも
千トの高い声が頭に響き、生理的に涙が浮かんでくる。それをあくびで誤魔化し、ソファに座った。
千ト「夜更かしって…また外出てたの?」
左手「いや?」
千ト「じゃあなんで?夜更かしは健康に悪いよォ」
左手「ん〜秘密」
千ト「えぇ、?なんでよ」
左手「なんでも」
隣で喋られると余計に頭が痛くなる。勿論千トが悪い訳では無い…が、今回ばかりは千トを恨んだ。
兄貴にバレたらどーすんだよ…
ズキズキと痛む頭でそう考えたのであった。
右手「……」
そして依頼中。左手の容態は……
左手「……」
頭いってぇ……気持ちわりぃし地面が波打ってやがる
悪化していた。視界が歪んでいて足取りは不安定だ。だが壁に寄り掛かり何とかやり過ごしている。
千ト「犯人は……あなたです。」
「なッ、!!!」
それから淡々と千トが言葉を紡ぎ事件の謎が紐解かれてゆく。数段低い声で喋る千トの声が心地よくじっと耳を傾けていた。すると
「あぁぁぁぁぁ゛!!!!!やめろォ゛!!!!!」
左手「ぁ゛ッ、」
突然の雄叫びに頭が割れるように痛くなる。その拍子に足の力が抜けその場に膝から崩れ落ちた。
……はずが、膝と地面が接する寸前に体を支えられた。
右手「”やっぱり”、体調悪かったんですね」
上から声がする。何年も聞いてきた声、これは…
左手「ッ゛、兄貴、」
「…!!いまのうちッ」
右手「無駄ですよ」
「は、」
パトカーのサイレンの音がけたたましく響き渡る。
千ト「大人しく捕まってください」
「ちッ゛、クソがァァァ゛!!!!!゛」
左手「ぅ゛あッ」
右手「千ト、急いで帰りましょう。体が熱を持っています。」
千ト「ね、熱ってこと?!」
右手「あまり大きな声を出さないで」
千ト「あっ、ごめん」
そんな会話をしながら右手は左手を横抱きにして歩き出そうとする。
左手「ッいい、歩けるから、降ろせ」
右手「何言ってるんですか、立つのも辛いくせに」
右手「だからさっき壁に寄りかかっていたんでしょう?」
千ト「……朝から体調悪かったの左手君」
右手「はい、余裕をこいて来たけど悪化した……という所でしょうか」
なーんだ、やっぱ兄貴にはバレバレかw
流石双子と言うべきか右手には全てお見通しだったらしい。だからもう諦めて体を委ねることにした。
千ト「右手君、事務所に帰ったら2人でいっぱい左手君を甘やかそうね」
左手「はッ」
右手「……そうですね♡」
こいつら、俺が甘やかされるの苦手って知ってるくせに……
事務所に着いてからというもの、さっき千トが言っていた通り左手はどろどろに甘やかされていた。
千ト「大丈夫だよ、頭痛いねすぐ良くなるから」
右手「粥を作りましたが…食べれそうですか?あまり無理しないで」
左手「ぅ゛、う゛ぅ゛……」
2人に頭やら頬やらを撫でくりまわされ、羞恥心と頭痛と吐き気が重なって自分でもよく分からない声が出る。
千ト「顔真っ赤っか……熱上がっちゃった?」
左手「ぉまえらの、せいだよ……゛」
千ト「なんのこと?」
右手「…ッふふ、何故でしょうか?何もしていないんですけどね……」
にやにやと笑いながらこちらを見てそう言う右手。そんな右手に左手は苛立った。
こんのクソ兄貴……!!!!!
左手「…粥食べる」
とりあえず話題変えよ…
そう思い右手の持ってきた粥を食べようと匙を持つ。その瞬間
左手「あ」
カーンッ!!
鉄製の匙が床に落ち、つんざくような音を立てる。その音が頭に響き顔を歪める。
左手「ッ、」
やっべ、手に力入んなかった…
千ト「左手君大丈夫、?」
驚きながらも控えめな声量で問いかけてくる。
左手「……ぉう、わり、兄貴これ洗ってくんね」
右手「わかりました」
落ちた匙を拾い上げ右手に手渡すとそのままキッチンの方へ消えてゆく。
千ト「頭痛いねぇ…大丈夫?手に力入んなかった?」
左手「ちょっとな」
千ト「そっかぁ……」
そう言うと左手より一回り小さい手で左手の手を握り、頭を抱えるように抱きしめた。
あったけぇ…
人の体温はこんなにも心地の良いものだっただろうか、その温もりで少しずつ頭痛が収まっていく。
右手「洗ってきましたよ」
左手「ぁ、さんきゅ」
そう言って受け取ろうと伸ばした手は宙を舞う。
左手「???」
右手「そんな状態ではまた落とすだけですよ」
右手「ほら、口を開けて」
粥を掬って口の前に差し出してくる。
……え?
左手「いや、もう大丈夫だから自分で食えるって」
右手「病人なんですから甘えてみては?」
左手「……」
その言葉にもう諦め、素直に粥を食べる。決して目の前の美味しそうな粥にもう耐えられなくなった訳では無い。断じてな。
左手「、」
右手「食べれそうですか?」
左手「ん」
千ト「よかったぁ…これでお薬も飲めるね」
そうしてゆっくりと飲み込み二口目を口を開けて待つ。そんな左手を見て右手は驚きの表情をする。
左手「あんだよ」
右手「いや…やけに素直だと思いまして、相当キてるんですね」
左手「…兄貴が甘えろっつったんだろ、早く二口目寄越せ」
右手「はいはい」
右手の言う通りかもしれない。確かにいつもなら甘えてみろなんて言われても絶対にそんな事しない。
そうして粥を3分の2程まで食べ進めた。
左手「…もぉ無理」
千ト「ちょっと残っちゃったね…でもちゃんと食べれてえらいよっ!」
左手「分かった、わかったから頭撫でんのやめろ」
千ト「えぇ…なんで……」
右手「ふふ、」
甘やかしてくる感覚がなんだか変な感じがして、撫でてくる千トの手を剥がした。その様子を見て右手が吹き出す。
こいつら2人…、
そう思いながらも、少し居心地が良くてたまにはいいな…なんてことを脳の隅で考えた。
それから薬を飲んで寝た。
気持ち悪さで目が覚めた。布団を被っているはずなのに、寒くて熱が上がっているのを感じた。
やっべ、吐きそ……
生憎、熱のせいで体は動かずベッド脇のゴミ箱にすら届かない。
ここに吐くわけ行かねぇしなぁ…
そんなことを考えている間にも刻一刻と吐き気は増していく。
左手「ぅ゛ッ゛、ゴプッ、……ぉ゛えッ゛」
口元を手で抑え必死に耐えるもえずきが止まらず…喉まで吐瀉物が上がってきて息が苦しい。
むりむり、ヤバイ出るッ゛
ガチャ
右手「左手体調は…左手?!」
もう限界に達していたところ右手が様子を見に部屋に来た。すぐに状況を察知した右手はゴミ箱を取り左手に手渡す。
左手「お゛ぇ゛ッ”.ぅ゛ッ゛、……え゛ッ゛」
我慢していたせいか、吐瀉物が喉に突っかかり上手く出てこない。目からは生理的な涙が出てきていて、体は小刻みに震えている。吐きたいのに、吐けない…その感覚が気持ち悪くて仕方ないのだろう。そんな左手を見かねた右手は
右手「失礼しますね、」
そう言って後頭部に一回り手を添えると、長い指を左手の口に突っ込む。そのまま舌の付け根を思いっきり押した。
左手「ん゛ぐっ”?!?!、ご”ぽッ゛、ぉ゛ッ゛え”…はっ、ぁ”、は〜ッ、は〜ッ、……」
ごぽッという音とともに塊がゴミ箱の中に吐き出される。塊が出ると、左手の体が大きく脈打ちゴミ箱を掴む力が強くなった。
右手「大丈夫…ですか?」
左手「う゛ぅ”、…はッ、ふぅ…」
左手「ふぅ、……、」
しばらく右手が背中を擦ると落ち着いてきたのか、苦しそうな呼吸音が聞こえなくなった。
右手「落ち着きましたか?」
そう聞くも返事は無い、その代わりに
ぽすっ
右手「!」
左手が右手の腕の中になだれ込む。嘔吐で体力を使ってしまって気絶したのだろう。
いつもは吐き慣れていますし……体が熱い、先程より熱が上がっているのでしょう、余程限界だったのですね。
にしても…これでは動けませんね、
千ト「右手君、左手君どう…ってえ?」
右手「千ト!、ナイスタイミングです」
状況を見て、千トが疑問の声を漏らす。
千ト「ぇ、あもしかして左手君……」
右手「吐いてしまいました、」
千ト「だ、大丈夫……?」
右手「じゃないです」
千ト「だよねぇ…」
マスクをした千トが近寄ってくる。
右手「とりあえず、吐瀉物の処理と…あと手を洗ってくるので左手をお願いします。」
千ト「わ、分かった!」
そうして右手は部屋から去っていった。
左手君、大丈夫かなぁ……さっきよりも熱いし、震えてる、
ゴミ箱を持っていた手は放り出されていて、汗が滲んでいる。
左手「ぅ゛…」
千ト「あ、あれ左手君起きたの、?」
長いまつ毛が揺れ、小さく声を漏らす。
左手「、ぁ、?千ト…?」
千ト「そう、千トだよ、大丈夫?」
左手「、、むり…」
千ト「だよねぇ……」
いつもよりスローテンポで繰り出される言葉、左手にはそれで限界だった。
右手「戻りました」
千ト「あ!おかえり右手君」
袋を取り換えたゴミ箱を元あった場所に置くと、体温計をポケットから出す。
右手「体温、上がってるでしょう、測りますよ」
左手「…ん」
もう自分で測る気力は無く、スウェットを少しだけはだけさせ、右手に測れという目線を送る。
千ト「ゆ、左手君、///」
右手「貴方ねぇ……他の人のところでそんなことしないでくださいね」
少し呆れ気味にそう言うと脇に体温計挟む。それから数十秒。
ピピッ
左手「…なった」
右手「どれ…、」
体温計を手に取り、数字を見ると右手は顔を歪ませた。
左手「、何度だよ」
右手「これ…言ったら余計辛くなりますよ」
左手「…きになるから、早く言え」
右手「40,5です」
千ト「たかっ、?!」
あまりの高さに驚く。
千ト「辛いねぇ……」
そう言って左手の頭を撫でようと千トの手が伸びてくる。普段なら抵抗するが今は抵抗する力など残っていない。大人しく受け入れようとしたその時、熱のせいか視界がぼやけ、千トの手と父親の手が重なって見えた。
左手「、ッは、?」
ばちんッ!!
千ト「ぃ゛ッ、」
乾いた音が響く。目の前には驚いた2人の顔と少し赤くなった千トの手。
今、おれなにした?
左手「ぇ?、あ、わりッ」
熱で鈍くなっている頭に焦りと申し訳なさが大量に押し寄せてくる。頭はとっくにキャパオーバーしていて、息を忘れていた。尋常じゃない量の汗が出て、息苦しさで涙が膜を貼る。
左手「ひゅッ、は、ぁ゛」
千トの手赤くなっちまってんじゃん、なにしてんだよほんと。てか、あんなやつと千ト重ねて見たのか俺、さいあく ひやさないと うごけよ俺のからだ
くるしい、いきできないだれかたすけ、
右手「…で!左手!!!」
左手「はッ、」
名前を呼ばれて、びっくりし瞬きをすると涙がこぼれ落ちた。
左手「あに、き」
右手「大丈夫です、驚いただけで千トも平気と言っていますから」
千ト「そ、そうだよ!大丈夫、大丈夫だから…」
左手「ぅ゛あッ゛」
本当に幼い頃、精神が未発達ですぐ泣いていたあの頃、殴られた兄貴が痛々しくて何故か兄貴じゃなくて俺が泣いてた。
その時、兄貴に慰めてもらって安心して、もっと泣いて兄貴を困らせたっけ
その時と重なって涙が溢れてきた。
左手「うぇ゛ッ、ひぐ、、……ッ゛」
「「?!?!」」
千ト「うぇ、え、?左手くッ、?え?」
右手「、…」
困惑する千トとは反対に右手は冷静だった。
双子だからだろうか、同じ事を思い出していたらしい。
右手「大丈夫、大丈夫”だよ”」
千ト「…右手君?、」
左手「ッ、、ぐず、ッ゛」
右手「安心して、今は……もう大丈夫だから」
右手がそう言うと左手は眠りについた。
千ト「……」
2人のにしか分からない何かがあるんだろうなぁ、
少し寂しさを覚えながらも千トはそう思った。
数日後。
左手「よっしゃ、熱下がってきたぜ♪」
体温計を片手に笑顔でそう言う。
右手「下がってきたとはいえまだ37.8とかでしょう、安静に」
左手「え〜つまんね」
千ト「そうだよ左手君、数日治んなかったってことは相当免疫とか弱ってたんだろうし、まだちょっとフラついてるでしょ!」
ソファに座らせられた左手にブランケットをかけながら叱る。ボンパにされ、顕になった額にはシートが貼られていて、少し紅潮している頬はまだ熱ご下がりきって居ないことを主張していた。
左手「はぁ、暇だッ゛げほッ”、ごほッ゛”、、」
話していると苦しそうに咳をし始める。
右手「ほら、安静にしないから……せめてその咳が治るまでは散歩禁止です。」
左手「ん゛ッ゛んぅ”ッ……わ〜ったよ」
咳払いをしてから、不服そうに返事を返した。
それからというもの、毎朝千トに抱きつかれて体調・体温チェックをされるらしい。
左手「だるいって」
千ト「怠い、?!?!大変!右手君!!!左手君が怠いって〜!!!」
左手「そういう 怠いじゃねえわバカタレ!!!」
この小説実は6月から温めてました……😢😢
6月1回風邪ひいたんですけど、その時に「まてよ、左手に風邪移したら尊くね???」ってなって書き始めたらワーク、期末テストに追われて出すのが遅れました😭申し訳ないです🙇♀️
体調不良でメンタル弱って過去のトラウマ起こしちゃう受けとか可愛いですよね、私の癖です
コメント
18件
リクエストいいですか? ナイトアウル3人組がホラー映画を観てて、右手が、叫んだりはしないけど千ト並みに怖がってて、2人に揶揄われて照れちゃうっていうのがみたいです!
左手君って直ぐ風邪になりそうだよね🤔 風邪を推しに移すなよ お前の嘔吐とか泣いてる時の表現めっちゃすき
今からイラストあげるドン!カワノハシさんいつもどうり神作