テラーノベル
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翌朝
鳴り響くアラームの音で無理やり意識を引き戻された。
体中が鉛のように重い。
特に、彼に何度も強く抱き寄せられた腰と、執拗に痕を刻まれた首筋が熱を持って疼いている。
(…信じられない。本当に、朝までなんて……)
隣を見ると、黒瀬くん───
蓮くんはもう起きていた。
彼はシャワーを浴び終えたのか、腰にタオルを巻いただけの姿で、私のキッチンで平然とコーヒーを淹れている。
「あ、舞さん。おはようございます。よく眠れました?」
振り返った彼は、昨夜のケダモノのような激しさが嘘のように、柔らかく微笑んだ。
でも、その裸の背中には
私が無意識に立ててしまった爪の跡が幾筋も残っていて、昨夜の出来事が現実だったことを突きつけてくる。
「れん、くん……。もう、会社行かなきゃ……」
「そうですね。でも、その前に」
彼は歩み寄ると、ベッドに座り込む私の顎をクイッと持ち上げた。
鏡を見るまでもない。コンシーラーを何度重ねても隠しきれないほど、私の肌は彼の色に染められている。
「……これ、職場の人に見つからないといいですね」
冗談めかした口調。
けれど、瞳の奥は一切笑っていない。
私は震える手で、一番襟の高いブラウスをクローゼットから引っ張り出した。
◆◇◆◇
一時間後
オフィスに出社すると、案の定、フロアは慌ただしく動いていた。
自分の席に座り、パソコンを立ち上げる。
視界の端には、先輩社員と談笑する黒瀬くんの姿。
「黒瀬くん、昨日の契約の件だけど……」
「はい!今すぐ資料持って行きますね!」
ハツラツとした、一点の曇りもない「可愛い後輩」の顔。
誰も、彼が数時間前まで私の部屋で私を貪っていたなんて想像もしないだろう。
「舞、顔色悪いぞ。……昨日、遅くまで残ってたのか?」
背後から小笠原が声をかけてきた。
私はビクッと肩を揺らし、慌てて首元の襟を正す。
「え、ええ……。ちょっと、まとめなきゃいけない資料が多くて」
「無理するなよ。……ん? 舞、その首……」
小笠原くんが、私の襟元から覗く「赤紫色の痕」に気づき、目を細めた。
心臓が口から飛び出しそうになる。
その時だった。
「小笠原さーん! 部長がお呼びですよ。急ぎみたいです!」
絶妙なタイミングで、黒瀬くんが割って入った。
彼は小笠原くんを急かすように送り出すと、入れ替わりで私のデスクに手をつく。
「く、黒瀬くん…!今…あいつにバレかけたのよ、ってか、絶対バレたかも……」
「いいじゃないですか。僕たち、そういう仲でしょ?」
「…っ、だ、だからあれは……」
「勢い、ですか。……じゃあ、今夜もその『勢い』、思い出させてあげましょうか?」
デスクの下、人からは見えない位置で
彼の膝が私の太ももに、愛撫するように、ゆっくりと押し当てられた。
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