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「舞先輩、この進捗表の数字、一度チェックしていただけますか?」
午後の静かなオフィス。
黒瀬くんが、いかにも真面目な後輩を装って私の隣に椅子を寄せた。
小笠原がこちらを気にしている気配を感じて、私は平静を装いながら彼のパソコン画面に目を向ける。
「……ええ、いいわよ。どこが気になるの?」
「ここです。……ちょっと、画面の反射で見えにくいですね」
そう言って、彼は私の椅子をぐいっと自分の方へ引き寄せた。
肩と肩が密着する。
周囲からは、熱心に仕事の指導を受ける「仲の良い先輩と後輩」にしか見えないだろう。
けれど、机の下。
彼の長い脚が、私の膝の間に強引に割り込んできた。
「っ……!」
声が出そうになるのを、必死で飲み込む。
彼は平然とした顔でマウスを動かしながら、机の下では革靴の先で私のふくらはぎを執拗になぞっていた。
「舞さん、ここの数字──」
耳元で囁かれる低く掠れた声。
「数字」と言いながら、彼の指先が私のキーボードを打つ手の上に重なる。
その指先には、昨夜私のすべてを暴いた時と同じ、圧倒的な支配の熱が宿っていた。
「……れっれん、くん…ダメだって…」
「大丈夫ですよ。誰も見てません」
彼はマウスをカチカチと動かしながら、今度は私の太ももの内側を、指先でじわじわと這い上がってきた。
ブラウスの襟元を正しても、体温がどんどん上がっていくのが自分でもわかる。
「……顔、赤いですよ? 舞さん。……昨日のこと、思い出してるんですか?」
「っ……、う、るさい……」
「小笠原さんが見てますよ。…もっと、先輩らしく凛としていてください」
意地悪く笑いながら、彼は一番敏感な場所に指をかける。
私は必死にデスクにしがみつき、快感と恐怖で震える吐息を押し殺した。
オフィスという、誰の目があるか分からない「公の場」。
そこで私を弄ぶ背徳感に、彼は悦びを感じているのだ。
「……あ、本当だ。修正しておきますね。ありがとうございます、舞先輩!」
パッと手を離し、彼は満面の笑みで立ち上がった。
そのあまりに鮮やかな切り替えに、私はただ呆然と
熱を持ったままの身体で彼を見送ることしかできなかった。
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