「おぉ、そんな怖い顔すんなやー。びっくりしたんか?」
ラグは腕を大きく広げて、まるで久しぶりの再会を喜ぶかのようににこやかに笑った。だが、その笑みはどこか冷たく、不気味に胸をざわつかせる。
「……誰やお前、まじで」
ルイズは鉄パイプを握った手を微かに震わせ、声を低くして警戒する。
「えー?? ぼくのこと覚えてないの〜? あの頃の、ちょっと面白い思い出の……友達、みたいな?」
ラグは軽く首をかしげ、楽しげに教会の中を歩き回る。
「ほらほら、そこの傷だらけの二人、せっかく仲良くしてんのに邪魔したら悪いなぁ、なんてね」
「……邪魔って……お前の目的は何や」
ロディが起きて問いかける。戦闘後でも警戒心は衰えていない。
ラグはにやりと笑うだけで、答えははぐらかす。
「目的? そんなの、まだ決まってないよ?今日はただ、久しぶりに顔見たかっただけだし〜」
その言葉と裏腹に、目の奥には計算しつくしたような光がちらつく。
ルイズは不意に背筋が寒くなるのを感じた。
「……なぁ、ラグ。あんた、俺のこと……ほんまに覚えてるのか?」
ルイズが尋ねると、ラグは少し首をかしげ、まるで考え込むように微笑んだ。
「覚えてる覚えてる。でも、全部は覚えてないんだよね。楽しかったことだけ、ね」
その言葉にルイズの胸はざわつく。楽しかったことだけ……? それは本当なのか、それとも嘘なのか。
「まぁ、これからゆっくり思い出していこや。お前らとぼくの、夏の物語の続きを――」
ラグの声が柔らかくなる。だが、そこに漂う不穏さは消えない。
夏の朝の光の中、ラグの笑みは温かく見えるのに、どこか冷たい。
「……俺は、あんたを信用しねーよ」
ルイズは鉄パイプをしっかり握り直した。
「……ぼくもや。」
ロディも戦闘後の疲労を押し殺すように、ラグを睨む。
ラグは二人の視線を楽しむかのように、ふっと笑った。
「ふふっ、そんなのでいいんだよ。信用とか、信頼とか――そんなもんは、まだ早いから!」
静かな教会の中に、夏の朝の光よりも冷たい緊張が漂った。
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