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こんにちは!!
それではどうぞ!
地雷↪︎
昼休みの屋上。風が吹くたびに、フェンスの影が揺れる。
二人きりの空間で、ヒロは黙って空を見上げていた。
「……また来てたのか?」
背後から静かな声。
振り向けば、そこに立っていたのはうり。
いつも通りの無表情。だけど、瞳の奥がどこか揺れていた。
「うりさんこそ。授業、抜け出してまで何の用?」
「……別に。ただ、ヒロくんがまた一人でいると思って」
「一人が好きなんだよ」
そう言って、ヒロは小さく息を吐く。
それ以上近づこうとしないうりを、視界の端で見ながら。
「ヒロくんってさ、いつも平気そうな顔してるけど」
「してるつもりないけど」
「……嘘つくの下手だよな」
うりの声が少しだけ震えた。
ヒロは目を伏せたまま、ポケットの中で拳を握る。
「……うりさんにだけは、言われたくないなぁ」
「俺?」
「そうだよ。うりさんだって、本当はずっと我慢してるんでしょ」
風が一瞬止んだ。
うりのまつ毛が、かすかに揺れる。
「……気づいてたんだ」
「当たり前だろ。隣にいたんだから」
「ヒロくん、いつも遠く見てるから、俺のことなんて――」
「見てたよ」
その一言で、うりの呼吸が止まった。
「うりさんのことばっか見てた。
でも、見てるだけで十分だと思ってた。
踏み込んだら、壊れそうで」
「壊してもいいのに」
「……え?」
「俺は、ヒロくんに壊されたかった。ずっと」
うりの言葉は、風よりも静かで、
それでいて胸を刺すほど真っ直ぐだった。
沈黙の中、ヒロが一歩だけ近づく。
指先が触れそうで、触れない距離。
「……ずるいな、うりさん」
「知ってる」
「そういうとこ、嫌いじゃない」
二人の間に小さな笑いが零れた。
屋上の空に、少しだけ光が差し込む。
その瞬間、ヒロの胸の奥で淡い灰色の光が灯った。
それは“心の色”──
誰にも見せられない痛みを包み込む、静かな優しさの色。
曖昧で、儚くて、それでも確かに温かい。
うりの存在が、ヒロの中の“無彩”を少しずつ染めていく。
「……うりさん」
「ん?」
「また、明日もここ来いよ」
「……うん」
二人の影が、ゆっくりと並んだ。