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「……へえ、蓮、付き合えたんだ」

街に初雪がチラつく冬のある日。俺は、親友の蓮からとある報告を受けた。

「そうなんだよ……!無理かと思ってたんだけどさ、勇気を出して言ってみたら『よろしくお願いします』って!」

蓮が、幼なじみの子と付き合うことができたらしい。そのおかげで……いや、そのせいで、普段はおとなしい蓮のテンションが朝からとても高い。

俺はそんな蓮の話を聞き流しながらスマホゲームに没頭する。

「……ねえ、辰哉。聞いてる?」

「うん、聞いてる聞いてる」

「いやそれ絶対聞いてないでしょ……」

「いやいや。ちゃんと聞いてるよ?」

正直言うと、ちゃんと聞いてなんていなかった。だって……俺も、彼女のことが好きだったから。



去年クラスが一緒になって、偶然にも席が隣になった。話しているうちにその子が蓮の幼なじみであることを知り、俺たちの仲はより深まっていった。

笑顔が眩しくて、誰に対しても優しくて。でも、昔から一緒にいる蓮に対しては口調が強かったり、次第にその口調が俺にも向けられるようになったり。


クラスではなんとなく彼女と一緒にいて、帰り道は蓮とも合流して三人で帰る。寄り道にゲームセンターに行って、俺の得意なクレーンゲームで彼女の好きなキャラのぬいぐるみを取ったり、彼女の好きなクレープを食べ歩いたり。

いつでも無邪気な彼女のことが、俺は気付けば好きになっていたんだ。



「あ、やべ。授業始まる!じゃあまた後で!」

慌ただしく隣の教室に帰っていく蓮。今年は、去年とは反対に俺一人だけが違うクラス。

……神様って、こんなにも分かりやすいイジワルをしてくるもんなんだな。

ホームルームが始まる直前の一人きりの時間。周りは騒がしいのに、俺の周りだけは妙に静かで。

ふう、とため息をつきながら、俺は次第に積もり始めている窓の外の雪を眺めていた。



「え、お前の好きな人、お前の親友と付き合ったの!?」

「だから、何回も言わせんなって……」

放課後の体育館でも、この話題から逃れることはできなかった。とは言っても、俺が一言こぼしてしまったことが原因。

「珍しいな、お前が女を逃すなんて……」

「おい、言い方悪すぎだろ翔太」

「だって事実じゃん?辰哉ってずっと、好きなやつには速攻して、相手の心にうまくシュート決めてたのに」

そう言いながら、中学からの友達で同じバスケ部に入っている翔太がシュートを打つ。

ポスッと気持ちいい音を立てて、ボールはリングを通過した。

「バスケとかけなくてもいいだろ、別に」

俺もシュートを打ったけれど、そのボールはリングの端に当たって俺の方に返ってきた。

「あは、今のお前と一緒じゃん」

「……いや、俺はシュートすら打てなかったから」


ポツリと呟いてボールを見つめる俺を見て、翔太は言った。

「……なあ、ちょっと気晴らしに行かね?」

「え?」

翔太はキャプテンのところに行って何かを話すと、俺の方に戻ってくる。

「行こ、辰哉」

「でも、部活……」

「今日は大丈夫だから。それに、部活に参加したところでシュートもまともに入んないんじゃ、話になんないだろ?」

そう言われて返す言葉もなかった俺は、おとなしく翔太についていくことにした。



部活着から着替えて、翔太と一緒に校門を出る。思えば、翔太と二人でこうして帰るのは高校生になってからは初めてかもしれない。

軽く積もっている雪をキュッキュッと踏みしめながら、しばらくの間無言で歩いた。



「なあ、この店入っていい?」

不意に翔太が指さしたのは、この前彼女が来たいと言っていた小さなカフェだった。

「……いいよ」

気晴らしには、甘いものを食べるのがちょうどいいかもしれない。


「……辰哉はさ、何にモヤモヤしてんの?」

「え?」

注文を終えると、翔太が俺に問いかけた。

「辰哉の百発百中のシュートが外れるほど悩んでるのは、何が原因?」

改めてそう聞かれると、なんと答えればいいかわからなかった。黙っている俺の様子を見て翔太は言う。

「……んじゃ、まずはそのモヤモヤの原因探しだな。今日あったこと、その時のお前の気持ち、全部素直に言ってみて?」

「……まず、朝蓮に会ったら突然、あの子と付き合ったって言われて。正直、めっちゃ辛かったし悔しかった。それから、あいつの惚気話をずっと聞かされて……ほとんど聞き流してた。授業にも集中できなかったし、休み時間も二人に会いたくなかった」

「まあ、そうなるだろうな。それで?なんで二人に会いたくなかったの?」

「それは……」

翔太に言われて、俺は思考を巡らせる。なんで会いたくなかったんだ……?

今まで、というか、昨日まで。ずっと三人で過ごしてたのに……

そこで、俺はハッとする。



「そうか、ずっと三人だったからだ」

「……と言うと?」

「今まで、ずっと三人で過ごしてたのに、俺に一言も相談なく付き合って……二人だけで話が完結してるのが、嫌だったんだ」

「あー、なるほどね。蓮があの子を好きだったってことも、逆にあの子が蓮のことを好きだってことも、何も知らなかったんだもんね」



それはやだねえ……と小声で呟きながら、翔太はさっき届いたカフェラテを口にする。

「……辰哉的には、二人のことどうなの?応援したいって、思える?」

また難しい質問を投げかける翔太。

そりゃあ、仲のいいあの二人が幸せになってくれるなら……

「思える、かな」

ありがとうございます、と届いたモンブランを受け取りつつそう言った。

翔太もロールケーキを受け取りながら、驚いた表情を見せる。

「へえ、思えるんだ」

「うん。蓮も良いやつだし、あの子が幸せなのが一番嬉しいから。蓮じゃなかったら、こう思えるかはちょっと分かんないけど」

「すっげえな……俺は絶対無理だけどなあ」

そう言ってロールケーキを頬張り、うわ!うんまあ!!と声をあげる翔太。

「え、そうなの?」

「うん、だって俺、好きな人には自分の隣にいてほしいって思っちゃうから」

「……ヒューヒュー」

「茶化すな!!」

ドヤ顔気味で答えた翔太は、顔を赤くしながら照れて怒る。まあ確かに、自分の隣にいてほしい、とは思うけど。

「俺は、あの二人とこのまま仲良くいれるなら、それでいいかな」

「……そっか。大人だなあ、お前。辛くなったら言えよ?今日みたいに相談乗るから」

「ありがと、翔太」

その後は他愛ない世間話をしながら、二人で美味しいケーキを堪能した。



店を出ると、翔太は言った。

「あのさ」

「ん?」

「お前の気持ち、伝えるだけ伝えとけば?」

「……え?」

「辰哉の想いがこのまま無かったことになるの、俺嫌だわ」

「翔太……」

俺の気持ちを考えてくれる翔太の優しさが、いつも以上に沁みた。でも、

「いや、いいよ」

「……ガチで?」

「うん……翔太が分かっててくれるだけで、いいかな」

「ふはっ、なんだそれ」



店にいる間に雪は止んだようで、雲の隙間からは太陽の光が差し込んでいる。さっきより高く積もっている雪も、きっと明日には全て溶けてしまっているのだろう。

少し寂しさを感じるけれど、今はそれで良いような……そんな気がした。

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