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そう、空にはホークスがいたのだ。
くるみは空をひたすら飛び続けていた。
ホークスの声を振り切り、心の中で「怖い」と叫びながら逃げたその先には、もう何も感じたくない冷たい空気が広がっていた。
けれど、次第に感じる不穏な気配。
「くるみ、待って!」
また、聞き覚えのある声が響いた。それは、ホークスではなく、別の声だ。
彼女は一瞬で反応し、体が震えた。
他のヒーローたちが追ってきている。
くるみは無意識に羽を広げ、飛行速度を一気に上げた。
その速度で空を駆け抜けても、追跡者の気配は確実に迫ってくる。
ヒーローたちの存在が、ただただ圧倒的に感じられた。彼女の心はますます孤独で、心細さが募る。
彼女はどうしても止まらなかった。止まることは、自分が捕まることと同義だ。
捕まりたくない。
その一心で飛び続けた。
「何をそんなにこわがってんだ!」
後ろから声がかかった。
それは、爆豪勝己の鋭い声。彼の怒鳴り声がくるみの耳に突き刺さる。
くるみは振り返ることなく、さらに速度を上げた。
彼女の心は叫び、逃げることに必死だった。
「怖い、怖い、怖い!」
その後ろには、爆豪のほかにも数人のヒーローたちが追ってきている。
緑谷出久の声も聞こえた。彼は優しい言葉をかけようとしているが、くるみにはただ恐怖を呼び起こすだけだ。
「お前らなんかに、私の気持ちなんてわからない!」
くるみは羽を動かしながら、空を切るように飛んでいく。
他のヒーローたちも必死に追ってくる。誰かが手を伸ばし、捕まえようとしている。
その瞬間、くるみはふと目の前に光を見た。それは、彼らの放った攻撃だ。
「やめて!」
くるみは反射的にシールドを発動させた。
すると、空中に巨大な防御壁が現れ、光線を受け止めた。
その一瞬の隙に、くるみは再び勢いよく飛び立ち、シールドを解いて加速した。
「こっちに来るな!」
くるみは心の中で叫びながら、必死に逃げた。
「私は、誰にも捕まりたくない。」
「私は、もう一人で生きる。」
それでも、ヒーローたちは決して諦めない。
次々に攻撃が放たれ、くるみはその度にシールドを展開する。
けれど、シールドを張り続ける限界はある。
どんどん体力が削られていく。
「こんな…」
「くるみ、お願い、逃げないで!」
それは、緑谷出久の声だ。
彼の声には、力強さと優しさが込められているが、くるみにはもう聞き入れることができない。
彼女の心の中には、ただ**「逃げろ」「逃げろ」**という思いが渦巻いていた。
突然、くるみの頭に思い浮かんだのは、あの日、両親と一緒に過ごした穏やかな時間だった。
その日々が、まるで夢のように思えた。
「あの日に戻りたい。」
しかし、現実はそう甘くない。
彼女はヒーローたちから逃げ続け、そして…
気づけば、彼女の体力は限界に近づいていた。
シールドも効かなくなり、足がふらつく。
「もう、ダメだ。」
くるみは空中で一瞬立ち止まる。
それは、限界を迎える直前の瞬間。
そのとき、後ろからヒーローたちの足音が近づいてきた。
「くるみ、お願い、俺たちと一緒に帰ろう。」
その言葉に、くるみは少しだけ心を乱されるが、すぐに強く振り払った。
「行きたくない!」
だが、再び迫るヒーローたち。
くるみは、もう逃げられない。
その時、彼女の中に沸き上がったのは、諦めのような気持ちだった。