くるみは空を飛んでいたが、次第にその羽が重く感じられた。
体力は限界に近づき、シールドを張り続けることもできなくなってきた。
「もう、ダメだ。」
後ろから迫るヒーローたちの気配を感じるたびに、くるみの心はさらに重く沈んだ。
「お願い、来ないで…」
その思いが彼女の胸を締め付ける。
緑谷出久、爆豪勝己、そして他のヒーローたちが、次々にくるみを追い詰めてくる。
くるみは必死に羽を動かし、必死に逃げようとした。
けれど、もう体が動かない。
「逃げられない…」
ヒーローたちの声が近づく。
緑谷が優しい声で呼びかける。
「くるみ、お願い。僕たちが助けるから、もう逃げないで。」
けれど、その声さえもくるみには届かない。
彼女はそれを拒絶し、心の中で叫んだ。
「だれにも助けられない…。」
その瞬間、くるみは目の前がぼやけて、足元がふらついた。
体が限界を迎え、意識が遠のいていく。
「うるさい!」
くるみは頭を振って、必死に逃げようとするが、もうその力も残っていなかった。
ヒーローたちの声が耳に入る。
「もう逃げなくていいんだ。」
「俺たちは君の味方だよ。」
その言葉が、くるみの心の奥で何かを揺さぶるが、それでも彼女は耳を塞ぐようにして、また空に向かって飛び上がる。
その強がりの裏には、ただただ怖くて怖くてたまらない自分がいた。
しかし、ついにくるみは空中で力尽き、堕ちていくような感覚を覚えた。
その時、視界が暗くなり、意識が遠くなる。
「もう、私には何もできない。」
心の中で、そう思った。
「どうして、私はこんなに弱いんだろう?」
その瞬間、突然、何かがくるみを受け止めた。
「くるみ!」
それは、緑谷出久の声だった。
彼はくるみを必死に抱きとめ、彼女の顔を覗き込んだ。
「くるみ、大丈夫だよ。僕がいるから。」
その言葉を聞いた瞬間、くるみの目から涙があふれた。
彼女の心に、少しだけ温かいものが流れ込んできたように感じた。
「本当に、大丈夫?」
緑谷は無言でくるみを抱きしめ、そのまま空を飛びながら地上へと降りていった。
周りのヒーローたちも、それを見守っている。
爆豪は少し苛立たしげに腕を組んでいるが、言葉を発することはない。
くるみはそのまま、緑谷の腕の中で静かに目を閉じた。
心の中で、あふれる感情に対してどうしていいのかわからず、ただただその温もりを感じていた。
「まだ、私は一人じゃないんだ。」
くるみはそう心の中で呟くと、涙が止まらなかった。
それでも、少しだけ、心が軽くなったように感じた。
ヒーローたちに捕まり、地上へと降り立ったくるみは、ただ静かに立ち尽くしていた。
彼女の中で、何かが少しずつ変わっていく予感がした。
これから先、どんな選択をするかはわからない。
でも、少なくとも、もう一人ではないということが、少しだけ希望を与えてくれる気がした。
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