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テラーノベルの小説コンテスト 第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで
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その部屋に小さめのスーツケースを置かせてもらうと、尊さんがまた手招きして手前の部屋を案内してくれた。


「ここは俺の書斎」


「ほう……」


部屋にはデスクやパソコンがあり、あとは本棚に本がびっしり詰められてあった。


奥にある十五畳ほどの寝室には、どでかいベッドとゆったり座れる長ソファセット、こちらにも液晶テレビがある。


ウォークインクローゼットは二箇所あり、スーツや私服、小物などが整頓されて並んでいた。


主寝室には専用のトイレ、洗面所、シャワーボックスまでついている。


「あと、リビングから通じる防音部屋にはピアノがある。質問は?」


「……ピアノ弾くんですね」


「まぁな」


「……一人で寂しくないです?」


心から疑問に思った事を言ったけれど、嫌そうな顔をされて終わってしまった。


そのあと、ポンと頭に手を乗せられる。


「これからお前と住むんだろ」


「…………はい!」


そう言われると、顔のにやつきが止まらなくなってしまった。






リビングに戻ると町田さんが料理をダイニングテーブルに並べていて、尊さんがワインセラーからワインとシャンパンを出した。


尊さんいわく「仕事を頑張った褒美に、肉を用意しておいた」らしい。


綺麗な薔薇色のローストビーフが、大きく厚めに切られ、お皿の上に並べられている。


他にも前菜三種盛り、様々な種類の温野菜を山葵ベースのドレッシングで和えたサラダ、ゴボウのポタージュもある。


「それでは、どうぞ召し上がれ」


町田さんはすべての仕事を終えたあと、明るく言って帰っていった。


「彼女、今日で仕事納めなんだ。正月料理とか、張り切って作ってくれて、冷蔵庫や鍋の中にある。ま、年末年始、食っちゃ寝しようぜ」


尊さんはシャンパンの栓を開け、グラスを斜めにして注いでいく。


「楽しみです」


「お前が好きそうな酒、とりあえず全部揃えておいた」


「嬉しいですけど、大酒飲みみたいな言い方やめてください」


減らず口をたたくと、彼はクスクス笑った。






その日は美味しいご飯とお酒を食べて飲んで、お風呂に入ってイチャイチャして寝た。


翌日、三十日は早めに起きて、尊さんと一緒に築地まで行ってでかいカニや海老、大トロに中トロ、ウニ、いくらを買ってくる。


尊さんに「なんでそんなに目を見開いて食い物を凝視してるんだよ」と笑われたが、無視した。だって美味しそうだったんだもん……。


買い物を終えて車で帰ったあとは、海鮮をでかい冷蔵庫にしまい、近くのラーメン屋さんへ行く。


午後はテレビで映画を二本見て、夜になってから銀座にある高級寿司店に向かった。


メニューが〝お任せ〟しかない恐ろしいお店で、最初は緊張していたけれど、最初の平目を食べてから美味しくて感動し、集中して味わっていった。


お寿司に合う日本酒も飲んで満足した私が、帰ったあとに〝寿司代〟として尊さんにペロリといただかれたのは言うまでもなく……。


三十一日は遅めに起きて、お昼前に尊さんが作ってくれた海鮮丼を食べた。


昨日築地で買った海鮮を使った高級食材丼で、私は「おいしい、おいしい」と涙ぐみながら食べた。その姿を見た尊さんが、震えるほど笑っていたのは言うまでもない。


そのあとはまたゆっくり過ごし、夕方にお風呂に入って落ち着いたあと、A5ランクの但馬牛リブロースで最高のすき焼きを食べた。


お肉が溶けるという現象を初めて味わった私は、満足いくまですき焼きを食べ、少し脂っぽくなった口の中を、尊さんが前もって自由が丘で買ってくれたソルベで洗い流す。


二人で片付けをしたあと、私たちはテレビをみながらソファでぐうたらしていた。


「……死んでしまうかもしれないです」


尊さんに膝枕をしてもらっていた私は、ボソッと呟く。


「は?」


「こんなに美味しい物、食べた事なかったです。こんな幸せな年末も経験した事なかったです」


「あと、カロリーやべぇな」


「言わないで!」


ボソッと言った尊さんの言葉を聞き、私はバッと両手で耳を覆う。


それを見て彼はクスクス笑い、私の髪を弄ぶ。

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