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「・・・さん・・・姫野さん・・・目を覚ましてください」



増田の呼びかけにやっと目を覚ました浩二は、自分が最初どこにいるのか分からなかった、頭がぼんやりと霞んで視界が揺れる、まるで深い海の底から浮上するような感覚だった



「う・・・ん・・・増田さん・・・ここは?」



増田はホッとした様子で柔らかい笑みを浮かべた



「ああ!よかった!あなた全然起きなかったから!ここは須磨のヨットハーバーですよ」



眠い目を擦ってむくりと浩二は起き上がった、すると自分は豪華なヨットの中のソファーに寝ていた、柔らかな革の感触が背中に残り、周囲には淡い照明が揺らめいている、波の音が微かに聞こえ、船体がわずかに軋む



「俺の船ですよ!ここにくる途中であなたに出会ったんですが、随分起こしても起きなかったから先に俺の用事を済ませてしまおうと思ってね、ついて来てもらったんです」



「ああ・・・そうでしたか・・・なんかすいません!ご迷惑をおかけして」



浩二がヨットの中をキョロキョロ見回す、そても豪奢な内装だった、磨き上げられた木目、かすかな潮の香り・・すべてが非日常の贅沢を纏っていた、さすが伊藤コーポレーションのCEOだ、いずれは自分も休日はこんな豪華な船でヨット遊びを優雅に出来る人間になりたいものだ、素直に浩二は増田を尊敬した



「いえいえ、迷惑なんて、先週ここで社の後輩達とバーベキューをしたんですよ、んで冷凍庫に、神戸牛を残しているのを思い出しましてね、ほら!」



そう言うと増田はキッチンに立ってフライパンに分厚い肉の塊を入れて焼いている所を見せた、ジュージューと音を立て、香ばしい匂いが船内に広がる、その旨そうな肉を見ると浩二の腹がぐ~っとなった、


増田はアハハと笑った、明るい笑い声が、浩二の心を少し和らげる



「一人じゃ食べきれないんで、一緒に食ってくださいよ!それから姫野さんの家まで送りますよ」


「すいません・・・なんだか・・・何から何まで世話になりっぱなしで・・・」



―いい人だよな・・・―



浩二は心の中で思った、こんな人の良い彼も鈴子の下で働いていて嫌なことなんかないんだろうか・・・、増田の穏やかな笑顔が浩二の疑念を優しく溶かしていくようだった



「それにしてもご立派な船ですね・・・」




感慨深い気持ちで浩二が船の中を見渡す、デッキの向こうに広がる夜の海が、星を映して黒く輝いている



「先代の船ですよ、生前に俺に譲ってくれたんです、船が好きな人でした」




先代と言えば・・・伊藤定正・・・鈴子の夫だった人だ・・・

なぜか浩二はムッとした、胸の奥に得体の知れない嫉妬の棘が刺さる



「そうですか・・・先代とは親しかったんですか?」




増田は笑った、歯が白く光る



「それはもう!俺をこのビジネスの場で育ててくれたのはあの方です!俺は父親を早くに亡くしましたからね、それは本当の父親の様に慕っていました・・・最初に会長が先代と結婚すると聞いた時はそれは驚いたものですよ」


「へぇ~・・・」



浩二は何故か、もう死んだ伊藤定正を思って瞳をキラキラさせて思い出話をする増田に嫉妬した、鈴子の元夫はかなり偉大な人だったのだろう、増田がこれほど言うのだから、浩二の心に、なんとなく鈴子を共有しているような苛立ちが湧く



「焼き上がりましたよ!デッキで食べましょうよ、今夜は星空が綺麗だ」


「おおっ!いいですね!ありがとうございます」




そう言って二人は山盛りに盛られた神戸牛のリブステーキが乗った大皿を手に、デッキへ出た、夜風が頰を撫で、星々が無数に瞬く

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