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「ミッションをクリアできなければ、僕らは地獄に落ちるんだって____。」
「地獄に、落ちる……?」
「そうだよ。つまり、本当の意味で “死ぬ” 訳だね。」
「死ぬ…… 嫌だよ……、地球に戻りたいっ……!」
「――じゃあ、僕と一緒に ミッションクリアしなきゃね____。」
「うん…!」
本当に死にたくなければ、ミッションをクリアしなければならない___。
そんな危機を背負う責任感が強く、緊張の空気が漂う。
だけど、そんな中で 追い打ちがかかった。
『ごきげんよう、爽牙さん・静乃さん。私は指示者の「松中」という者。』
『君たちには、私が出すミッションを“全て”クリアしてもらう。分かったかな?』
「……っ」
指示者のアナウンスが流れ、私達は息を呑んだ。
そして、更に声が聞こえてきた。
『二人で協力してこなしてくれ。では、始める。まずは最初のミッションだ。』
『1.ここから、向こう岸まで泳ぎ切る。制限時間は15分とする。』
「……泳ぐ、か……」
爽牙くんは「泳ぐ」事に大して、凄く不安そうだ。
もしや、泳げないのかも知れない。
「ねぇ、爽牙くんって… 泳げる?」
「僕、全く泳げないんだよね―――。」
「え…!?私は水泳習ってるから、泳げるんだけど____」
そう答えると、彼は 美しい瞳を輝かせて私の方を見てきた。
「じゃあ、背中に乗らせてよ。」
「背中に、乗る…?!」
「うん。」
おっとりとした口
調のまま、でも淡々と答える。
――だけど、背中に乗られたら まともに泳げるわけもない。
「なんか、カメみたいじゃない…… 流石に無理だよ……。」
「____でも、泳げるんでしょ?じゃあ、出来るんじゃないの?」
「いくら泳げるからって、流石に乗せて泳ぐのは無理だよ…」
そんなおねだりを聞いていると、アナウンスが会話を遮るように話し始めた。
『今からミッション時間を開始する。 ―――よーい、始め!』
それが流れると同時に、タイマーの1秒1秒の音が聞こえてくる。
残りたった15分で渡りきらないといけないなんて、正直 不可能に近い。
私、どうすれば良いんだ…?
「早く行動しよう。まずは―――、あそこに移動だね。」
爽牙くんが 冷静に指さしたのは、浜辺と海水の境目の所だ。
どうやら、そこで私の背中に乗るらしい。
「早くっ!」
歩いて移動する私に、彼は焦りの声をあげた。
そして、私の左手を掴み、走って行くように誘導した。
「!(ドキドキ…)」
「(異性に 手を掴まれたこと無かった… ちょっとドキッとしちゃったな……、、)」
いや、こんな事を考えてる暇があったら 早く移動しないと…!
今のことは忘れて、連れて行かれるがままに 移動した。
――指さされた所に着いて
彼は、私の背中に乗る気満々で 私をうつ伏せで寝転がし、海の波に流そうとしていた。
「…じゃあ、行くよ?」
「うん…!」
その合図で、彼に体をドンと押されて 海に飛び出した。
そして私は手を必死でこいで、ただ向かい岸を目指して泳ぎ続けた。
泳ぎ始めて数秒後から背中が重くなったけど、そんなの気にせず ただ泳いだ。
爽牙くんが 声を張り上げて応援してくれたけど、それを耳に入れる余裕は無かった。
――数分後
ひたすら泳いでいると、指示者からまたアナウンスが流れた。
『残り3分、そして残り14m……。』
彼は、何だかクリアが惜しそうに そうつぶやいた。
私はそれに少しニヤけながら、何とかゴールに辿り着いた。
「おぉ、さすが静乃!」
「流石って何?笑笑」
私は微笑をこぼして、彼を背中から降ろした。
彼の足が陸に着いた途端、私の背中は一気に軽くなった。
今、どれだけ重い物を背負っていたかが よく分かった。
でも―――
次のミッションが待ち受けているんだ……
その嫌な予感が当たった。
『さぁ、次のミッションに移ろうかね。続いては、少し難易度が上がる。』
またのアナウンスと共に、浜辺には冷たい空気が流れ込む。
さっきとは一味違った空気になり、私達は動揺を隠せない。
それを見た「松中」は、いかにも不気味な笑いを浮かべていそうな 声で、次の指令をした。
『2.天秤を持ち、二人で均等さを保ちながら 建物まで運ぶ。』
「天秤…」
「秤の一種、だよね。天秤座、とか。」
「だよね…!でも… 天秤を“均等に”運ぶって…」
『ではまず、実物を見てもらおう。これが 天秤 という物だ。』
その松中の声に合わせ、どこからか 金色の天秤が降りてきた。
それはだいぶ古びていて、いつ壊れてもおかしくないような見た目をしていた。
『この2つの皿には、それぞれ違う重さの物が入っている。それを均等に運ぶ、というミッションだ。』
「…」
爽牙くんは黙り込み、空気はしんと静まり返った。
浜辺には、アナウンスの声だけが響いている。
『だが見て欲しい。天秤を二人で運ぶ、とはおかしいだろう__?』
確かに、天秤は一人で真ん中を持って運ぶ物だ。
『だから、天秤を2つ用意した。2つとも全く同じ物が入っている。それを 二人で協力し、2つの皿が同じ位置に来るようにし て運びなさい。』
『だが、それだけなら簡単だろうと思うかも知れないが、それは違う。』
『どちらも重さが極端に違うため、均等に運ぶためには 体を傾ける等の工夫が必要だ。体力は削られ、建物まで辿り着く 制限時間まである。』
「制限時間、またあるんだ…」
爽牙くんは嫌な目つきをし、天秤をじっと見つめている。
『では早速スタートする。 よーい、スタート―――。ちなみに、制限時間は5分とする。』
5分…
建物までは確かに近いけど、均等に運ばなければ 即終了だ。
二人のどちらかがミスをすれば、たちまち私達は 世から消え去ることになる。
協力プレイも必要なミッションだ―――。
そこで、彼は話しかけてきた。
「じゃあ、とりあえず持とうか。この地面の線を超えたら スタートだから、まず重さを確かめよう。」
「そうだね…。」
そう短く返し、私達は同時に天秤を持ち上げた。
左の皿は軽く、すぐに浮かび上がる。それに対し右の皿は、明らかに重量だ。
体を大きく左に傾けると やっと均等さが保てるぐらいで、これをずっと運ぶのは厳しそうだ。
でも、クリアしないと―――!
私はそんな責任感と危機感に追い込まれ、二人で同時に スタートラインを渡った―――。