テラーノベル
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「嘘。顔すっごく赤いよ?」
「うるせぇ!!」
廊下を通る生徒たちの視線がじわじわと集まってくるのを感じ
俺は恥ずかしさのあまり、直哉の制服のブレザーの腕を力任せに引っ張った。
「いいから、人がいないところに!!」
嬉しそうに俺に引きずられていく直哉。
……くそ。
なんでこいつは、俺が怒っているのにこんなに嬉しそうなんだ。
その日の夜
自室のベッドに座って、今日習ったノートを見返していると、トントン、と控えめなドアのノック音が響いた。
「兄さん、入ってもいい?」
「…もう、なに。いいけど」
ガチャリとドアが開くと、直哉は「お邪魔します」とも言わずに、当たり前のような顔をして俺の隣のスペースへと腰を下ろした。
狭いシングルベッドの上。肩と肩が触れ合うほどの距離。近い。
全然、慣れる気がしない。
「ねえねえ兄さん」
「ん」
「今日のお昼、やっぱり嫉妬してたよね」
「……してない。何度も言わせるな」
「じゃあ、なんであの時、他の女子と話してる俺を見て、そんなに怒った顔してたの?」
「はっ?!そ、それは……」
言葉に詰まった。
図星だった。
言葉を失って黙り込む俺を見て、直哉の口元が優しく、愛おしそうに綻んでいく。
「兄さん、本当にどこまでも可愛い…分かりやすくて」
「……あーもう、うざい。お前、マジで生意気…!一応俺の方が兄貴なんだからな?!」
「でも、そんな生意気な俺のことが好きでしょ?」
さらりと、逃げ場を無くすような言葉を投げかけられて、ドクンと心臓が大きな音を立てた。
直哉はそのまま、大きな体を小さく丸めるようにして、俺の右肩へと自分の額をそっと預けてきた。
柔らかな髪が、俺の首筋を微かにくすぐる。
「俺、兄さん以外の人間には、男とか女とか関係なく、本当に興味ないから。兄さんだけが特別だからさ、不安にならないでね」
低く、けれど芯のある声だった。
一切の冗談を排除した、真っ直ぐすぎる言葉。
そんな風に、直面から混じり気のない好意をぶつけられるなんて。
ズルいだろ、そんなの。
格好良すぎるんだよ。
「……知らねぇよ、バカ」
「ふふ、照れてる?」
「黙れって言ってるだろ」
俺が顔を真っ赤にしてそっぽを向くと、直哉は低く小さく笑った。
そして、額を離したかと思うと
今度はその長い両腕を俺の背中に回し、優しく、けれど拒めない強さで俺の身体を抱きしめた。
「…早く素直になってね、兄さん」
耳元で、熱い吐息と共にそう囁かれて。
俺は、自分の顔がこれ以上ないほど熱くなっていくのを、どうしても止めることができなかった。
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