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村娘・秋奈との出会い
森を抜けた先に、小さな村があった。
木造の家が並び、ゆっくりとした時間が流れている。
「……やっと、人の住む場所だね」
野口瑠璃子がそう呟いた、そのとき。
村の外れで、帽子を被った一人の女性が牛たちに干し草を配っていた。
大きな牛の背を優しく撫でながら、穏やかな声をかけている。
「こんにちは!」
そう言って、にこっと笑う。
「モー……」
牛たちが嬉しそうに鳴く。
「可愛いね。牛たちに餌をあげてるの?」
瑠璃子が話しかけると、村娘は頷いた。
「うん。みんなお腹すきだから」
その横顔を見た瞬間、由貴がはっとした。
(……この雰囲気……)
由貴はそっと花凛の袖を引く。
「ねえ……もしかして、秋奈ちゃんかもしれないよ?」
「え? ……言われてみれば……」
二人がひそひそ話していると、村娘が首を傾げた。
「あの? なにか?」
少し困ったような、でも優しい声。
瑠璃子は一歩前に出て、正直に言った。
「私たち……ちょっと行き倒れてて。
森を抜けてきたら、お腹がすいてしまって……」
その言葉を聞いた瞬間、村娘はぱっと表情を明るくした。
「それは大変!
よかったら、うちに来て!」
そう言って、牛たちを小屋に戻し、手招きする。
「遠慮しないで。ちょうどお昼作るところだったし」
案内された家は、木の香りがする温かい家だった。
扉を開けると――
「おや……客人かい?」
中には、白いひげをたくわえたお爺さんが腰掛けていた。
「お爺ちゃん、この人たち森から来たんだって」
「ほう……それはそれは」
お爺さんは、にこりと穏やかに笑う。
「ゆっくりしていきなさい。
この村は、困ってる人を放っておかんからな」
その言葉に、四人は顔を見合わせ、自然と笑みがこぼれた。
――こうして一行は、
村娘・秋奈との出会いを果たすことになる。
この村が、
次なる物語の“鍵”を握っているとも知らずに。
村娘の表情は、どこか曇っていた。
さっきまでの柔らかな笑顔が、少しだけ影を落とす。
それに気づいた由貴が、そっと声をかける。
「……なにか困り事?」
村娘は一瞬ためらい、それから小さく頷いた。
「実は……動物たちの餌代が高くて……。
うちは、そんなに裕福じゃなくて……毎日ちゃんと買うのが難しいんです」
牛小屋の方へ目を向ける。
そこには、大人しく草を噛む牛たちの姿があった。
「この子たちを手放すことは、できないから……」
沈黙が落ちる。
そのとき、上田麗奈が一歩前に出た。
「だったら……」
優しい声で、はっきりと言う。
「私たちのパーティに入らない?」
「……え?」
「一緒に冒険して、依頼をこなせばお金も手に入る。
動物たちも守れるし、あなた一人で背負わなくていい」
村娘は驚いたように目を見開き、言葉を失っていた。
⸻
そして次の日の朝。
「……あれ?」
目を覚ました村娘は、頭を押さえた。
次の瞬間、扉の前に立つ四人の姿を見て、声を上げる。
「え!?
瑠璃子さんに、花凛ちゃんに、由貴ちゃんに……うえしゃん!?」
「……秋奈ちゃん?」
瑠璃子がそう呼ぶと、村娘――秋奈は、はっと息を吸った。
「思い出した……!
私、声優の……秋奈だよね!?」
由貴が頷く。
「うん。実はね、私たちも同じで……
なぜか異世界に来て、記憶を失ってたの」
「でも勇者の瑠璃ちゃんが、私たちの記憶を取り戻してくれたんだ」
「……そっか……」
秋奈は胸に手を当て、少し照れたように笑った。
「じゃあ……私も、一人じゃなかったんだ」
そして、顔を上げる。
「ねえ……実はね。
この世界、他にも知ってる声がいる気がするの」
四人が一斉に見る。
「もしかしたら……小倉唯ちゃんたちも、ここにいるかもしれない」
その言葉に、空気が変わった。
「……探しに行こう」
瑠璃子が静かに言う。
全員が、強く頷いた。
こうして秋奈は、
仲間としてパーティに加わることになる。
村で起きていた小さな異変は、
やがて大きな物語へと繋がっていくのだった。
⸻
キャラクター紹介
■ 秋奈
職業(現実世界): 声優
異世界での職業: 村娘
村で動物たちの世話をしながら暮らしていた少女。
当初は記憶を失っており、自分が声優であることを忘れていた。
生活力が高く、動物への深い愛情を持つ。
瑠璃子たちとの再会をきっかけに記憶を取り戻し、
パーティの仲間として共に旅をすることを決意する。
村と動物たちを想う優しさが、仲間たちの心を支えていく存在。
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