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狂人⭐︎
待てど暮らせどこの工事は
終わりそうにない。不便でしょうがない。
溢れ落ちるくらい抱えた荷物じゃ
はみ出てた愛に気づかない
上手くやってたつもりでも
テレビの音とため息の中で。
ふたりの時間が減っていることも
気づいてたはずなのに
はぁ。まったく、待てど暮らせど、この工事は終わりそうにない。
仁人がいなくなってから、1ヵ月。
海沿いのロータリーは、白い柵で囲まれていた。
遠回りしないと学校にも行けないし、海も見えづらい。
「……不便でしょうがない。」
小さく吐き捨てても、
返事をする声はなかった。
仁人がいたら笑ってくれたかな。
なんて。いなくなってから仁人が俺にとって、どれだけ大切で、
かけがえのない人だったのか思い知らされる。
重たいリュックを、無意識に背負い直した。
教科書や、参考書。スマホに、充電器、飲みかけのペットボトル。
、、、でも、これくらいで重たいなんていっていたら、なにも耐えられそうに無い。
それくらいの重さだった。
きっと、仁人はもっともっと。
俺には想像ができないほど重たいものを、独りで抱えていたんだろうな。
なんて、工事中のロータリーを横目に考える。
俺も。仁人がいなくなって。
いや、本当はもう、あの時、気づいていたのかもしれない。
でも、溢れ落ちるくらい抱えた荷物じゃ、
はみ出てた愛に気づかない。
……そんなこと、今さら思うなんて。
「はぁ……」
無意識にため息が漏れる。
自分では、上手くやってたつもりだった。
学校行って、友達と話して、ゆりとも笑って。
もちろん、『仁人』とも、いつも通り一緒にいるつもりだった。
でも。そんなことは、なかったみたいで。
海の音とか、
ため息の中で、
仁人との時間が、二人の時間が減っていることも、
俺は気づいてたはずなのに。
『最近なんかあった?』
そう聞いた時の仁人の顔を思い出す。
あいつ、ちゃんと笑えてなかった。
なのに俺は、“そういう時もある”って勝手に思い込んで。
踏み込まなかった。
……踏み込めなかった。
海の方から吹く風が、白い工事幕を揺らした。
その向こう側を見せたくないかのように
…俺も仁人のこと、ちゃんと最後まで見ようとしなかった。
仁人のこと、ちゃんと見た気になってただけだった。
コメント
1件
うわあ…めちゃくちゃ刺さった。「はみ出てた愛に気づかない」ってフレーズ、胸がぎゅっとなったよ。工事中のロータリーが、まさに“見えなくなった関係性”の比喩になってて、上手いなって思った。仁人が笑えてなかったのに踏み込めなかった後悔、すごくリアルで…読んでて自分も一緒にため息ついちゃった。続き、めっちゃ気になるわ🔥