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「ほくと」(𝓡𝓲𝓷)『ジェシー』(友達)『こーち」(友達の好きな先輩)
『あ、北斗……っ!』
校門まであと数メートルのところで、ジェシーが急に立ち止まった。
僕の腕を掴む彼の手に、ぎゅっと力がこもる。
驚いてジェシーの視線の先を追いかけると、校門の前に一列に並ぶ生徒たちの姿があった。
「あ、今日って挨拶運動の日か」
我が校では定期的に、生徒会や有志の先輩たちが校門に立って[挨拶ボランティア]を行っている。
そして今日、その列の真ん中に立っていたのは、緑のタスキを付けた髙地先輩だった。
『どうしよう北斗、髙地がいる!心心の準備が……!』
「落ち着きなよ。ただ校門通るだけだし、挨拶する絶好のチャンスじゃん」
ジェシーは完全にパニックを起こしていて、長い足をバタバタさせながら僕の後ろに隠れようとする。
さっきまで『今日も絶対に挨拶するぞ』と意気込んでいた男と同一人物とは思えない。
『無理無理!距離が近すぎる!ほら、もうこっち見てるって!』
「見てないよ、全体の流れを見てるだけ。ほら、行くよ」
僕は情けない声を出すジェシーの背中をぐいぐいと押し、無理やり校門へと進ませた。
一歩、また一歩と近づくにつれて、先輩の姿がはっきりしてくる。
少し大きめの制服を着こなして、登校してくる生徒一人ひとりに『おはようございます!」と声をかけている。
その笑顔は、朝の太陽よりも眩しくて、ジェシーが盲目になる理由もほんの少しだけ分かった気がした。
ついに、僕たちの番が来る。
ジェシーを見ると、完全に直立不動で、顔を真っ赤にしながらロボットみたいな歩き方になっていた。
「おはようございます」
僕が先にいつも通りのトーンで頭を下げると、髙地先輩は『おう、おはよう!」と爽やかに返してくれた。
そして、先輩の視線がジェシーへと移る。
ジェシーは息を飲むと、胸の前で拳をぎゅっと握りしめ、壊れたおもちゃのように勢いよく頭を下げた。
『お、おはよーごっ、ざいますッ!!』
声が裏返っているし、声量が大きすぎて周りの生徒が一瞬ビクッとした。
だけど、髙地先輩は驚く風でもなく、いつものあの、目尻をふにゃっと下げた優しい笑顔をジェシーに向けた。
『うん、おはよう!元気良くていいね、今日も一日頑張ろうな」
『……ッ、はい!!!』
会話はそれだけだった。
時間にして、わずか数秒。
特別な言葉を交わしたわけでも、足を止めて話し込んだわけでもない。
ただの朝の義務的な挨拶。
だけど、校門をくぐりり抜けた瞬間、ジェシーは息を吸い込むのも忘れていたかのように『ぷはぁっ!』と大きく息を吐きだした。
そのまま胸を押さえて、その場にへたり込みそうな勢いでよろめいている。
『……生きててよかった……』
「大げさだな。ほら、立ち止まると迷惑だから歩いて」
『北斗、見た!?髙地俺のこと見て『がんばろうな」って言った!俺、今日の数学の小テスト、絶対に満点取れる気がする!』
「はいはい。声が裏返ってたの、めちゃくちゃ格好悪かったけどね」
『えっ、嘘!?最悪だわー!』
頭を抱えてガチで落ち込み始めるジェシーを見て、僕は思わず吹き出してしまった。
挨拶を交わしただけ。
ただそれだけで、世界がひっくり返ったかのように大騒ぎする。
やっぱり僕にはまだよく分からない世界だけど、先輩の一言でここまで幸せそうになれるジェシーが、少しだけ羨ましいかもしれない。
「ほら、教室行くよ。遅刻する」
僕は、まだ自分の世界に浸っているジェシーの背中をもう一度叩いて、下駄箱へと歩き出した。
ChatGPT
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コメント
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みぅです🤍🥀 第2話、読ませてもらいました〜! ジェシーのパニックっぷりがもう可愛くて可愛くて…『生きててよかった』って(笑) 声裏返ってるのバレバレなとことか、数学満点取れる気がする発言とか、推しの一言でそこまで変われるの、純粋すぎて眩しいです✨ 一真くん(北斗)の冷静なツッコミと、それでも羨ましそうな最後の一言がすごく好き。彼の距離感、物語のスパイスになってて良いですね。 挨拶だけでここまでドキドキできる世界、私もよく分かります…! 続きが楽しみです🌙