テラーノベル
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車が夜の街を走る。
フロントガラスを叩く雨粒を、ワイパーが規則正しく払い落としていた。
前から車が来るたび、雨粒に光が乱反射して視界が悪い。
Cielo Serenoでの話し合いを終えてから、しばらく経っていた。
助手席の瑠璃香は、雨に煙る街並みを見つめながら、小さく吐息を落とした。
「……藤井田さん、大丈夫でしょうか」
ぽつりと漏れた声に、晴永は前を向いたまま答える。
「木朝くんがいる」
「……そう、ですね」
「彼が一緒なら大丈夫だろう」
瑠璃香は少しだけ表情を和らげた。
だが、その笑みも長くは続かない。
「晴永さんは……」
「ん?」
「あなたは……大丈夫ですか?」
その問いに、晴永は少しだけ苦笑した。
「俺か」
信号が赤に変わる。
車を停め、晴永は小さく息を吐いた。
「正直、大丈夫じゃないな」
「……」
「海千山千のタヌキ祖父が相手だから」
「……」
「けど……」
「……けど?」
「俺には瑠璃香がいる」
あまりにも真っ直ぐに言われて、瑠璃香は思わず目を瞬かせた。
「え……」
「だから、きっと大丈夫だ」
晴永は、そんな瑠璃香を見つめて柔らかく笑った。
そこで信号が青へ変わる。
晴永は視線を前方へ戻すと、アクセルを踏み込みながら続けた。
「今までは、全部一人で何とかしなきゃいけないと思ってた」
家のことも、会社のことも、祖父とのことも――。
誰かに頼るなんて考えたこともなかった。
「だが……今は違う」
晴永は視線を進行方向へ向けたままふっと吐息を落とすと、瑠璃香の手にそっと触れた。瑠璃香の右手を包み込むように伸ばされた晴永の薬指で、銀色の輪が鈍い光を放っている。
「お前がいてくれるからな」
瑠璃香の視線が、二人の手へ落ちる。
晴永の薬指で静かに光る銀色の輪。
それは自分のものと、ペアになったリングだ。
(私と、晴永さんを繋ぐ、絆……)
そう思うと、心の中の柔らかい部分がキュッと鷲掴みにされたみたいに切なく疼いた。
瑠璃香は今感じていることを言語化して晴永へ伝えようと思ったけれど、うまく言葉に出来なくて――。
代わりに晴永の手に左手をそっと重ねた。
「私……」
「ん?」
「そんなに頼りになれる自信、ないです……」
言葉にしたら何とも情けなくて、申し訳なさが声に滲む。
コメント
2件
頼りになれる自信がないなんて。大丈夫だよ、るりかちゃん。
「俺には瑠璃香がいる」……この台詞にやられました😭💕 晴永さんがそう言い切れるの、めちゃくちゃ尊いです。一人で抱え込んでた過去があって、今は瑠璃香と繋がるリングがある——その描写がもうエモすぎて、胸がギュッと切なくなりました🥺✨ 瑠璃香が「頼りになれる自信ない」って弱音を漏らすのも人間らしくて好きです。これからも二人で支え合っていくんだろうな〜って、じんわり温かい気持ちになりました! 続きが気になります!
鷹槻れん

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鷹槻れん

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鷹槻れん

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