この前、龍聖と琴音、バスケ部のみんなで会ってから、ますます自分が父親としてしっかりしなきゃと思うようになった。
いつか自分の店を持ちたいという夢も、必ず叶えたいと強く決意した。
「絵麻、大丈夫?」
「大丈夫だよ~今日はすごく調子がいいの。散歩でも行く?」
「そうだね。気持ちの良い日だし、桜を見に公園まで歩こうか」
「うん」
絵麻は、転ばないように歩きやすいスニーカーを履いた。
「日差しも強くないから日傘もいらないかな」
「いいよ。俺がさすから、中に入って」
「うん、ありがと」
ひとつの傘の中、すぐ隣にいる絵麻を上から見下ろす。
ただ歩いてるだけなのに、自然に笑みがこぼれる。
これを「幸せ」と呼ばず、何を幸せと呼ぶのか。
俺の人生は……今が1番「幸せ」だ。
「赤ちゃんの名前だけど、絵麻、もう決めた?」
「いっぱい考えてるけど~どうしようかなぁって感じ。まだちゃんと決めてないよ」
「そっか、慌てなくていいよ」
「ねえ、碧君」
「ん?」
「碧君は、私のどこが好きなの?」
「えっ、えっ!?」
「そんな焦らなくても~」
「あっ、いや、そんなこと聞かれたことなかったからね。びっくりした」
「ねえ、答えてよ~」
絵麻は、俺を見上げてねだるように言った。
「えっ、あ、いや、その……」
言いたいことは山ほどある。
こういう時、照れないで言うのって難しいんだな。
「絵麻は……か、可愛いし、優しいとこもたくさんあって……」
「可愛い? 私って可愛いの?」
「えっ、うん。すごく可愛いよ」
「だったら……良かった。みんな私のこと可愛いって言うけど、やっぱり……1番大切な人にはちゃんと『可愛い』って思っててほしいから」
絵麻?
今、1番大切な人って言った?
聞き間違いじゃないよね?
うわ……心臓がドキドキうるさい。
こんな調子で、2人でゆっくり桜を見上げても、何だか今日はずっと落ち着かない。
「ちょっと冷えてきたね。絵麻が風邪引いたら大変だから、帰ろうか」
「うん」
帰り道、スっと絵麻の手が俺の手に滑り込んできた。
指と指が重なり合う……
ずっと離さないよ、この手。
俺、絶対、絵麻を守るから。
「ただいま~」
「気をつけてね、そこ段差あるから」
「毎日歩いてるんだから大丈夫だよ~ほんと心配性なんだから、碧君は」
「あはは、ごめん。そうだよね」
「お腹空いたでしょ? ご飯作るね」
2人で暮らし始めてから、ずっと作ってくれてる。
つわりがひどい時はもちろん実家に戻ったりしてたけど、絵麻は本当に料理が好きみたいだ。
「俺も手伝うね」
「ありがとう~今日は何作ろうかなぁ」
冷蔵庫の中を覗いて考えてる絵麻。
俺は、何気なくそこに置いてあった料理本を開いた。
絵麻が好きな料理のページには、可愛いイラスト入りの付箋がたくさん貼られてる。
パラパラめくると、1枚のメモが挟んであるのが目に入った。
「ん?」
数秒後、俺は急激に胸が熱くなった。
ダメだ、こんなとこで泣いたら……
俺は、何も知らないフリをして、そっとページを閉じた。
いつか、子どもも一緒に3人で料理したりする日がくるのかな?
俺がカットした髪で出かけたり……
いろんなことが楽しみだよ、すごく。
これから先も、ずっと一緒に幸せな時間を過ごそうね、絵麻。
『男の子なら碧琉(あいる)』
『女の子なら碧莉(あいり)』






