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それから俺と阿部ちゃんは、お試しから交際をスタートした。
驚いたのは俺の心境の変化。
会うたびに新鮮で、会うたびにどんどん阿部ちゃんを好きになっていく。
こんな恋愛は生まれて初めてだった。
今までずっとそばにいたはずのに、阿部ちゃんについてはやっぱり知らなかったことの方が多い。それが却って新鮮で、なんだかすごく楽しかった。阿部ちゃんにとってもそれは同じようで、俺たちは時々小さく衝突もしながら、概ね仲良く続いている。
◇◆◇◆
2026.11.16
俺と阿部ちゃんの誕生日のちょうど中間のこの日。
俺と阿部ちゃんは、毎年この日を二人のバースデーとして同時に祝うことにした。
「翔太。好きだよ。大好き」
蕩けるような優しく甘いトーンで耳障りの良い言葉を耳元で言われたら、俺はすごく気持ちよくて、それに長い腕をしっかり背中に回されたら安心しきってしまって。
「うん。俺も」
1年経った阿部ちゃんは、俺がそういうストレートな表現に弱いのを十分に知っていて、それでいて何度も好きだと言う。ちょっと意地悪なのだ。そして三度目に同じように甘く囁いた後で、唇でそっと俺の耳を噛んだ。
「あっ」
「ふふ。感じてるの?」
「ちが…」
言い返そうとして、今度は唇を塞がれる。甘い口付けが俺を包み込んだ。優しい抱擁と同じように、ゆっくりと愛が伝わるキスはいつ受けていても気持ちがいい。付き合ってみるまで阿部ちゃんがこんなに男らしいって知らなかったし、俺も自分がこんなに愛されることが好きだなんて知らなかった。
阿部ちゃんは何かにつけて俺に言う。
「翔太、すごく、可愛い」
聞いていてくすぐったくなるような、甘い「可愛い」も、他の男に言われたら怖気だってしまうだろうけど、阿部ちゃんに言われると嬉しい。そして、心地いい。
阿部ちゃんは俺の髪を耳に掛けて、じっと俺を見つめた。
「ハッピーバースデー翔太。いつまでも俺の隣りにいてね」
「ハッピーバースデーりょ…阿部ちゃん///…その、阿部ちゃんも」
「よし」
阿部ちゃんはまた意地悪く笑うと、俺の鼻を指先で小突いて、最後にこう言った。
「来年は俺を名前で呼んでね」
「…恥ずかしい」
「そんなの、言えなくしてあげる」
阿部ちゃんはふわりと俺に覆いかぶさって、キャンドルが揺らめく暖かい部屋の中で、ゆっくりと俺を押し倒した。
第一部・終
コメント
22件
最高すぎます〜😍 💚💙真ん中まきぴよさんの作品読めて満足して終われます❣️ ごちそうさまです💞

わぁー💚💙 天然な阿部ちゃんも 照れ照れなしょっぴーも かわいい🥰 意外な組み合わせだけど いいですね😆❤️