翌日、いつもより少し緊張した雰囲気が教室に漂っていた。かなは、昨日一緒に帰ったはるとのことを少し考えていたが、その思いが少し複雑になっていた。普段ならあまり感じないような気持ちが、昨日の会話をきっかけに湧き上がってきたからだ。
授業が始まる前、教室のドアが開いてはるが入ってきた。その瞬間、かなの心臓が少し早く打つのがわかる。
「おはよう、かな。」
はるはいつも通り、穏やかな笑顔で声をかけてきた。
かなはその言葉に少し驚き、何となく視線をそらす。昨日の温かい言葉が、なんだか恥ずかしく感じてしまった。
「…おはよう。」
かなは素っ気なく返事をする。いつも通り冷たい態度で、普段の自分を取り繕おうとする。
はるは少し驚いたように眉をひそめるが、それでも穏やかに言う。
「どうしたの? 昨日みたいに、もっと笑顔で話してくれてもいいのに。」
「…別に、何もない。」
「そっか…。でも、なんか元気ないみたいだね?」
かなは少し困ったように言葉を濁す。心の中で、昨日の自分をどう説明したらいいのかがわからなかった。急に冷たくなった自分が、どこか不安に感じていた。
「私は…そんなに気にしてないから。」
「でも、かな、昨日はちゃんと一緒に帰ったじゃん。」
「だから、なんだっていうの?」
「え?」
かなは視線を逸らし、少し冷たい笑みを浮かべる。はるの優しさが、今は少し重く感じている自分がいた。
「…なんでもない。」
「かな?」
はるは本当に心配そうな顔をして、かなに歩み寄る。しかし、かなはそれを拒むように立ち上がり、少し大きめの声で言った。
「私は別に、そんな優しくされるような人間じゃないんだから。放っといてよ。」
その言葉に、はるは一瞬言葉を詰まらせるが、すぐに何も言わずに黙ってしまう。かなはそれに気づかないふりをして、席に戻る。
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