コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。服くらい着せてほしいです。足元は岩場のため足の裏が痛いし、なにより暖かい島と言えどずっと素っ裸では風邪を引いてしまいます。
……と言うか、なにかと裸足で外を歩かされますよね。足が痛いことばっかりですし。
私達二人は原住民達に連れられて牢を出て、森にある集落らしき場所に連れていかれました。木の上に家がたくさんありますね。多分動物や魔物から身を護るための知恵なのでしょう。
……男性は腰巻きだけ、女性は一応胸を隠していますね。流石にこれだけ大勢の人に見られたら、私だって羞恥を感じるのですが。
「大丈夫か?シャーリィ」
前を歩くルイが然り気無く私を隠してくれます。四方八方から見られているので意味は薄いですが、その気持ちが嬉しい。
「取り敢えず風邪を引かないか心配ですね」
「そっちかよ。もっと他にあるだろ?」
何故か呆れられてしまいました。首を傾げたら溜め息まで。解せぬ。
私達は木の上の集落を練り歩き、開けた広場に連行されました。そこには、如何にも偉そうなお年寄りが何人も待ち構えていました。
「よくぞ参られた、外界の民よ。我々なりの歓迎はお気に召したかな?」
長老らしき人が声をかけてきました。
「淑女を素っ裸で練り歩かせるなんて、随分と刺激的な歓迎でした。風邪を引きそうなので衣服を返していただけると嬉しいのですが」
「服など無用、我々は裸で生まれてきた。すなわち、それこそが本来あるべき姿である」
「開放的に過ぎるのではと思うのですが」
「さてお客人、此度は諸君らの来訪を祝して盛大な儀式を執り行う予定である。無論貴君らが主役であることは言うまでもない」
あっ、無視ですか。
「貴君らには神々へと捧げる生け贄の栄誉を授けたい。大変名誉なことだ。なに、遠慮は無用である」
「全力で遠慮したいのですが」
「それに、我々は運が良い!儀式には若い処女の生き血が必要不可欠なのだ。お客人には感謝する」
またそれですか。
「先程の方にも話しましたが、私はあなた方の要望に答えられません。だって、私処女ではありませんから」
「なんとっ」
あっ、また空気が凍り付きました。
「この様な幼子が!?外界の民は乱れておるな」
失礼な、これでも十七歳です。
「嘆かわしい。長老、如何なさる?」
「虚言を述べている可能性がある。それに、次の機会を待つのは無理だ」
「ならば、今すぐこの場で改める必要がありますな」
「改める?この場で!?流石に許容できませんが」
「おい!ふざけた理由でシャーリィに触るんじゃねぇ!」
ルイが私の前に立ち塞がりました。
「うむ、大切な客人を傷つけてはならん。このまま儀式の用意だ。お客人、そちらで準備が整うのを待たれよ」
私達は木製の檻の中に放り込まれました。
そして広場には大きな釜が用意されて、水で満たされたそれを火で炙りながら……私達を煮込むつもりですか!?
「まさか、祭壇に捧げるために身を清めるだけだ。最も、その最中に大半の者は天に魂を捧げるのだがね」
当たり前です。茹でられて殺されるなんて残酷ですよ。
……でも楽しそう。
「ふざけんな!客人を殺すのがここのルールなのかよ!?」
「儀式の最中に命を落とすのは、至高の最後。神々への頂へと至れるのだ。我々なりの歓迎だと考えてほしい」
これ、無理ですね。
「長老、確認します。どうあっても私達は儀式とやらに参加しなければ成らないのですか?」
「うむ、我が一族の古くからの仕来たりだ。外界の民を保護し、神々へと捧げることは我々にとっても栄誉あることなのだ」
周りはまるでお祭り騒ぎです。
武器は……斧、ナイフ、弓がありますね。原始的な部族。侮辱するつもりはありませんし、文明人だと驕るつもりもありません。
が、命を狙ってくるなら話は別です。私は差別をしないので。
「もう一度お尋ねします。私達は儀式に参加したくありません。出来れば生きたままあなた方と友好的な関係を構築したいと考えています。ご再考を願えませんか?」
「すまんが、掟に背くことは出来ない。だがお客人、恐れることはない。これは祝福なのだから」
祝福ですか。なんとも身勝手な振る舞いがあるものです。そちらがその気ならば、もう遠慮は無用ですね。
「分かりました。では最後に私の持ち物の中に刃の無い剣の柄があるはずです。それを下さい。大切なもので、肌身から離したくないのです」
ちなみに私達は檻に入れられた時から手の拘束を解かれています。全裸の男女二人に何が出来るのかと侮られた結果でしょう。
……それを逆手にとってやる。
「ふむ、持ち物にそんなものがあったのか?」
「ありました。刃は存在しません」
「ならば構わないだろう。仮に小細工があったとしても、この人数相手にはどうにもなるまい」
確かに戦士だけで百人くらい居そうですから、その判断は間違っていませんよ?慢心しているだけです。
しばらくすると戦士の一人が柄を持ってきて檻に投げ入れてきました。もっと丁重に扱ってほしいですね。
「おっと!壊れたらどうするんだよ!?」
ルイが受け止めてくれました。
周りを見ると、大きな釜の周りに肉などが用意されています。ああ、これアレですね。食人文化です。数百年前まで存在していたと聞いたことはありますが……。
つまり、彼等は島に来た人を儀式と称して食べていたと。最初から和解は無理でした。彼方からすれば私達は御馳走なのですから。
「シャーリィ、どうする?」
ルイが小声で話し掛けてきました。
「こんな場所で美味しく食べられるつもりはありません。脱出しますよ」
「わかった、俺はどうすれば良い?」
「手頃な武器を奪ってください。相手には飛び道具がありますから、そこに注意が必要ですけど」
「森の中だからな、槍は使わないようにする。シャーリィは?」
「気にしないでください。どうやら私は保有魔力だけは超一流みたいですから」
試しにマスターとの修行で魔法剣を丸一日起動しても枯渇しなかったんですよ。滅茶苦茶疲れましたけど。
「どこに逃げる?」
「島の地形から考えて、どちらに向かっても砂浜に出る筈です」
「よしきた。タイミングは任せる」
私達は小声で打ち合わせをして、長老見ました。
「話し合いは終わったかね?そろそろ儀式を執り行いたいのだが」
「長老、最後の確認です。儀式を取り止めて友好的な関係を構築するつもりはありませんか?このままでは不幸なことになってしまいますよ?」
「無理じゃな」
嗚呼、自分の顔が緩むのを感じます。私、笑ってる。
「分かりました……つまり、あなた方は私の敵ですね」
私は満面の笑みを浮かべたまま、顕現させた魔法の刃で檻を切り裂いて長老を串刺しにするのでした。
さあ、反撃の時間です。