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⚠️光が死んだ夏 ・ヒカル×よしき ・心理的調教・口調、性格違う(多分)
第一部 ― 支配の始まり ―
夏の放課後、校舎には少しずつ静寂が広がっていた。
教室の窓から差し込む夕陽が、長い影を床に落とす。
よしきは鞄を肩にかけ、廊下を歩きながらため息をついた。
「今日もやっと終わったな……」
そんな時、背後から声が響いた。
「よしき、ちょっといいか?」
振り返ると、そこに立っていたのはヒカル。
いつもの冷静な表情に、夕陽が反射して鋭さを増している。
「……ヒカル、なんで俺を呼び出したんだよ」
よしきは腕を組み、少し挑戦的に問いかける。
「理由なんて、いちいち言う必要あるか?」
ヒカルは壁に寄りかかる。淡々としているけれど、その声には妙な力がある。
「は? 普通、呼び出すなら用件ぐらい言えよ」
よしきは反発するように言ったが、どこか心がざわついていた。
「なら答えてみろよ。……おまえ、帰ろうとしてただろ」
一瞬、よしきの心が止まった。
確かに、下駄箱へ向かう途中だった。
「……っ」
反論しようにも、言葉が喉の奥で消える。
ヒカルは小さく笑った。その笑顔は優しげでもあり、どこか冷たい。
「だろ? 俺が止めなきゃ、おまえは勝手に帰ってた」
「だからなんだよ」
よしきは目を逸らし、強がるように言葉を返す。
「だから、俺が言わなきゃおまえは動けないってこと」
その瞬間、胸の奥に鋭い違和感が走った。
否定したい気持ちはあるのに、なぜか抗えない。
「……は?」
混乱した声を出すが、ヒカルはそれを待っていたかのように近づいてくる。
「おまえは黙ってても、俺に従う」
「……違う、そんなこと……」
小さく声を絞るが、ヒカルの目は逸らせない。
「否定できないんだろ?」
ヒカルの声は低く、でも心に響く強さがあった。
「おまえはもう、俺に縛られてる。まだ気づいてないだけ」
胸の奥がざわつく。
悔しい、恥ずかしい、でも、どこか安心もしている。
この矛盾に気づかないふりをしていたけれど、もう逃げられないのだと理解する。
「……っ……違う……」
必死に抗う声も、ヒカルの存在の前ではかすれてしまう。
ヒカルは満足げに微笑み、よしきの肩に手を置く。
「その顔……いいな。もっと俺に逆らえなくなれよ」
よしきは思わず後ずさる。
反発したいのに、どこか胸の奥で妙な納得感が芽生えていた。
廊下の空気が少しひんやりと感じられる。
夕陽の光と、ヒカルの視線に、心が少しずつ締め付けられる。
「……なんで、こんなに……」
小さく呟いた言葉が、自分でも理解できない感情を吐き出していた。
ヒカルはその言葉を聞き逃さず、ゆっくり顔を近づける。
「安心していい。俺に従えば、何も迷わなくていいんだ」
よしきはその言葉に胸が熱くなる。
恐怖と、そして妙な安堵。
逃げたいのに、心の奥で守られている気さえする。
「……わかんない……でも……」
言葉に詰まりながらも、よしきの体は自然とヒカルの方へ向いていた。
その瞬間、初めて自分が「抗えない」ことを自覚する。
ヒカルは微笑んで、肩を軽く叩く。
「いい子だ。まだ気づいてないかもしれないけど、もう逃げられない」
夕陽が廊下を赤く染める中、よしきは言葉を失ったまま立ち尽くす。
胸の奥に残るざわつきは、次第に静かに、でも確実に、
――自分がヒカルの支配下にあるという現実として落ち着いていった。
そして、初めて知った――
自分はもう、ヒカルの言葉から逃げられない。