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「あぁ、その事か……。監察局の長たる私を問い詰めるとは、随分な増長だな。だが、何を聞いても無駄だぞ。私は騒ぎがあった時間、ずっと妻の所にいたんだからな」
「は? 妻? え? ……アンタ、嫁さん居たのか……!?」
「なんだ、その言い方は! 私に妻がいるとそんなにおかしいのか!?」
静遠が顔を真っ赤にして机を叩き、勢いよく立ち上がる。
予想外、というレベルではなかった。
煌は目を丸くしたまま、完全に思考が停止した。
この神経質で、いつも眉間に皺を寄せて胃薬を漁っている、お堅いカタブツ神官長に、まさか家庭があったなんて。
「いや、おかしいだろ! 誰がどう見たってアンタ、一生独身で孤独に胃に穴開けて死んでいくタイプの人間じゃねぇかよ!」
「貴様、人の人生を勝手に呪うな! 万死に値するぞ!」
「うるせぇ! つーか、話逸らすな! それ、本当なんだろうな? アリバイ作りのための嘘じゃねぇだろうな!」
煌は必死に頭を振り、元の目的に軌道を戻そうと静遠を睨みつける。
だが、静遠は冷ややかな、けれどどこか勝ち誇ったような目で煌を見返した。
「嘘なものか。私は昨日、非番だったのだ。宮殿の奥にある神官宿舎の我が家で、家内と一晩中過ごしていた。――信じられないと言うなら、家内に直接確認を取るが良い。彼女は嘘をつけない人間なのでね」
「……っ、じ、じゃぁ、昨夜コソコソと中庭をうろついてたのはなんだったんだよ!」
「中庭を? 何を言っているんだ。全く、これだから野蛮人は困る。誰か他人の空似だったんじゃないのか? 私と同じような背格好で、神官の制服を着ている人間など、この宮殿には腐るほどいる」
「ぐ……っ」
図星だった。確かに、煌だってあの男影に直接話しかけたわけではない。暗闇の中、遠くからぼんやりと人影を見ただけだ。特徴的な歩き方だとは思ったが、本人だと断言するにはあまりにも証拠が曖昧過ぎる。
言葉に詰まった煌を見て、静遠はさらに冷酷に口角を吊り上げた。
「あぁ。もしや、お前のその貧相な脳みそは、私が玄武の商人と裏で密売取引でもしていると邪推したのか? 証拠もないのに神官長を疑って偵察ごっこか。……神の巫女(仮)様は、実にいいご身分だな」
「…………」
鼻で笑われ、煌は完全に言葉に詰まった。
悔しさに奥歯がガチガチと鳴る。拳を握りしめ、静遠を睨みつけることしかできない。
――けれど。
怒りで逆立ちそうになる血の巡りの中で、煌の野生の勘が、奇妙な違和感を捉えていた。
(……待てよ。俺、まだ『北の商人』のことも『密売』のことも、一言も言ってねぇぞ)
煌が燕花からその情報を聞いたのは、さっき自分の部屋でのことだ。静遠が本当に昨夜からずっと家にいて、今朝も書類仕事に没頭していただけなら、なぜ煌が「玄武の商人との裏取引」を疑っているなんてピンポイントな予測ができるのか。
静遠の完璧すぎる弁明。その足元に、かすかな、けれど致命的な「綻び」が見えた気がした。
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コメント
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**みぅ🤍🥀** うわっ、めっちゃ熱い展開!!!🔥 静遠に妻がいるってまじか…あの胃薬神官に家庭があるの、個人的に一番の衝撃だったわ(笑) でもそれ以上に、煌の“野生の勘”が光ったシーンがやばい。 「まだ何も言ってないのにピンポイントで弁明してきた」って、確かにそれは怪しいよね…! 完璧なアリバイに見えて、実は静遠の自爆っぽい伏線、すごく好き。 次が気になりすぎる!🖤