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「なぁ優子。これからは、俺の前でも、君の本来の姿を見せて欲しい。俺は決して優子を嫌いになったりしないし、色々な表情の優子を…………たくさん見ていきたい」
「いいんですか? 私、けっこう気が強いし、廉さん…………ドン引きするかもしれないですよ?」
「何を言っているんだ? 俺は…………優子しか愛せない」
廉が優子を見下ろし、凛々しい表情を緩ませた。
「あ! 今、私しか愛せないって、言い切りましたね? 浮気したら、絶対に許さないんだからっ……!」
「浮気なんて、するワケないだろ。やっと…………最愛の優子を……俺だけの女にできたんだからな?」
男の色香をフワリと漂わせている廉に、優子も嬉しそうに表情を綻ばせた。
刑務所を出所し、犯罪者の烙印を背負いながら、人生のどん底にいた優子を拾った拓人と、男を通して再会した、かつての上司、廉。
二人の男の間で揺れながらも、彼女は、拓人に翻弄されつつ、本来の自分を取り戻す事を教えてもらい、廉には、生きていくための指南と、揺るぎない愛情を与えられた。
拓人が事件に巻き込まれて亡くなり、後に知った男の想いを胸に、彼女は、日の当たる道へ踏み出そうとしている。
「俺たちができる事。それは、拓人を忘れない事、時々でも拓人を思い出す事だ。それに俺は…………アイツから優子を支えて欲しい、と言われているからな。君を幸せにしないと…………あの世から拓人が文句を言ってきそうだな」
「でもアイツ、飄々としている所もあったし……好きにすれば? って言いそう……」
「何か妬けるな、その言葉。こうなったら、拓人が想ってた以上に、優子を…………とことん愛し抜いてやるからな?」
「もう……廉さん、アイツに対抗心を剥き出しにしなくても……!」
「俺と拓人は、君を愛した男だ。アイツがあの世にいても、俺にとって、中崎拓人は…………永遠のライバルだ」
二人は顔を見合わせて、微笑み合ったその時、一陣の風が優子と廉の間を吹き抜けていく。
「この風…………拓人が文句を言っているようだな」
「何を二人で、俺の悪口を言ってるんだ? って言ってそう……」
優子と廉は、水平線の彼方に視線を向けると、逞しい腕がスレンダーな身体を抱き寄せた。
人生のターニングポイントを、隣にいる廉と歩き出す事。
犯罪者の十字架を背負いながらも、彼女に後ろめたい気持ちは、もうない。
けれど、拓人という男は、これから先も優子の中で生き続ける。
男性とか、恋愛対象ではなく、中崎拓人という、ひとりの人間として。
拓人は、きっとあの世から二人の様子を見下ろしながら、優子に、こう言っているだろう。
『暁光の最果てには、あんたの幸せがあっただろ?』と。
——La fine——