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私の人生を真逆に変えたのは……、君がくれた宝物だ。
恵奈々は机の引き出しを開けて、何度も何度も一つの小さな箱を眺める。その箱からは、彼女の中に今でも鮮明に残っている記憶を呼び寄せられたのだ。
恵奈々がそう思いだしたきっかけとなったのはある日、恵奈々がまだ小学生だった頃。学校祭での出し物で、ライブをすることになったと決まった日。その時に出演者も同時に決めたのだが、誰も立候補者がいなかった。推薦でも決める事はできるのだが、やはり誰も手を上げない。その時、誰かが物音を立てて座席から立ち上がった。
「推薦で、池田恵奈々さんがいいと思います!」
は?え? どういうこと? なんで私?
推薦の理由も知らず、話を聞き流していると、恵奈々を推薦してきた神峰李音という人物がいきなり彼女を推薦した理由を言い出した。
「推薦の理由は、池田さんは歌も上手だし、明るいからです!いつもの調子で、学校祭を盛り上げられると思うからです!」
いやいや、いつもの調子って…。私…、地味で暗いし…。歌は知らないけど、顔立ちも、良くないし…。
すると周りにいた友達から拍手が起こったが、恵奈々はどうも主役をやってやろうという気持ちにはならなかった。だが、心の奥底では主役をやってみたいと思う自分もいた。十分に悩んだ末、
「折角推薦してもらって、こんな機会は滅多にないと思うので、主役やります」と発言してしまい、結局まだやりたいとも思っていなかったライブの主役をすることになってしまった。
その日の放課後、恵奈々は少人数教室に呼ばれた。そこには、学校祭の主催者である教頭と、何人かの教師が立っていた。ライブで主役をする場合は、曲を作ってかつそれらを覚えなくてはならない。そういった人たちの中には、曲を作ってきたのはいいものの、それをなかなか覚えきれなくて主役を脱退する人まで出始めた。恵奈々の手元にも、音楽ノートが配られた。そして、教師からこんなこまごまとした注意を受けた。
「そのノートにびっしりと、曲を書いてくるように。すべて一から、自分一人で作ってくること」
その他にも、学校祭の1週間前までに楽譜を提出することなど細かい説明を受けた。今日は学校祭のほぼ1か月前だから、あまり時間がない。そんな事を考えながら、恵奈々はペンを手に取った。ペンを握った瞬間、曲に埋め込みたいような今の自分の気持ちが次々と思い浮かんでくる。恵奈々はノートに、そのありのままの気持ちを記した。