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恵ちゃんファースト💜で考えてくれてて嬉しいよね(#^.^#)コレじゃ~惹かれちゃったよね〜😍
私は女性扱いされるの事を嫌がるタイプだから、余計に三日月さんの言動に反応してしまっている。それが恥ずかしくて堪らない。
(これじゃあ、初恋を知った中学生みたいじゃん)
心の中でボソッっと呟くも、意外と的を射ていて悔しい。
私はずっと朱里だけを大切にし、男性を知ろうとしてこなかったのは事実だからだ。
「……『単純だ』って笑うなら笑ってくださいよ。……私、恋愛経験値低いですし」
恥ずかしくなってボソッと言うと、三日月さんは不思議そうに尋ねてくる。
「恵ちゃんって美人だしお洒落にも気を遣ってるし、モテそうだけど恋愛経験値低いの? ……ずっと朱里ちゃんを大切にしてきたのは聞いてるけど、……男は嫌い?」
いきなり褒められ、また頬が熱を持つ。
「びっ、……美人とか言われた事ないですし。そういうのは朱里に言ってください。あの子は本物ですから」
すると三日月さんは手を延ばし、私の顎をつまんで自分のほうを向かせた。
「今は恵ちゃんの話をしてんの」
「っっっ…………!!」
美形すぎる彼に窘めるように見つめられ、クッと心臓が止まりそうになる。
私はグググ……と首に力を入れてシャンデリアのほうを見ようとしたけれど、三日月さんは「だーめ」と再度自分のほうを向かせる。
「褒められ慣れていないのも、男慣れしてないから? 本当は男嫌い? こうされるのも嫌? 嫌だったらちゃんと自分の口で説明してみて」
彼の態度は優しいけど、普通の男性ならこんな頑なな態度をとられたら「可愛くない」と思われても仕方ない。
なのに彼はまったく感情的にならず、私の話を聞き出そうとしている。
三日月さんを前にしていると、自分の子供っぽさが嫌になる。
抵抗する力を抜くと、彼は私の顎から手を放す。
引き際もちゃとわきまえてる、ずるい人だな……。
私はバルコニーの欄干に頬杖をつき、煌びやかなシャンデリアを見て言う。
「……中学生の時に痴漢に遭ったんです」
それを聞き、三日月さんは納得したように溜め息をついた。
「私の家族はアウトドアな両親に、兄が二人。私自身、ミニバスをやったり活発な子供時代を送っていました。中学生になって制服のスカートを穿くようになっても、ガキ大将みたいな気の強さは変わらなくて、周りから女扱いされていませんでした」
私は当時の事を思い出し、無意識に息を吐く。
「……私自身、自分がおしとやかになるとは思えませんでした。当時はショートヘアだったし、本当に男の子みたいで、そんな自分が大人の男性から性的に見られるなんて、思いもしなかったんです」
「……それは嫌な経験をしたね。制服を着ている子に痴漢するなんて最低だ」
三日月さんは嫌そうに眉間に皺を寄せる。
「……『痴漢された』なんて言ったら、『お前みたいな奴に痴漢する物好きなんているの?』って言われると思っていたから、誰にも打ち明けられませんでした。だから一人でこっそり泣こうとしたんですけど……、……校舎裏で朱里に会って、何だかんだ話して受け入れてもらえたんです。……だからあの子は特別」
「……うん、分かった」
三日月さんは何回か頷き、私の話を反芻するように沈黙する。
そのあと、私を見て笑いかけてきた。
「俺は恵ちゃんに魅力を感じているんだけど、迷惑? 抵抗を感じる?」
またストレートだな、この人は!
「…………め、迷惑じゃないです……。ただ、どうしたらいいか分からなくて……。何人かと付き合った事はありますが、『私を好きになるなんてどうかしてる』と思って、すぐ気持ち悪くなっちゃうんです」
「それは多分、痴漢に遭った事で自己肯定感が低くなってるからだね。加えて男への不信感があって、少しでも性的な下心が見えると、『やっぱり無理』って傷付く前にすべて否定したくなるんだと思う」
ズバリと言われ、私は何も言えず黙る。
「でも、勿体ないと思うよ。君も分かってると思うけど、世の中、女性を傷つける男ばかりじゃない。たまたま、まともな男と縁がなかっただけだ」
「…………ですね。そうだと思います。……私はあまりに、世の男性を憎みすぎてしまいました。……朱里の元彼だってロクな奴じゃなかったし」
しみじみと言うと、三日月さんは欄干に触れている私の手をトントンとつついてきた。
「俺はどう? 今までの男と同じようだと思う? 少しはまともだと思ってくれる?」
そう尋ねられ、私は赤面すると「うう……」と唸って彼を睨む。
「分かってるくせに」
「恵ちゃんの口から聞きたいな。……俺と手を繋いだり、ハグしてみても平気そう?」
彼の言葉を聞き、私はカッと赤くなる。
手つなぎ、ハグなんて今どき小学生でもしてそうだけど、私にとっては|大事《おおごと》だ。
「……三日月さんが嫌じゃないなら……」
そんな消極的な答え方しかできない自分が嫌だ。