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私は女性扱いされるの事を嫌がるタイプだから、余計に三日月さんの言動に反応してしまっている。それが恥ずかしくて堪らない。


(これじゃあ、初恋を知った中学生みたいじゃん)


心の中でボソッっと呟くも、意外と的を射ていて悔しい。


私はずっと朱里だけを大切にし、男性を知ろうとしてこなかったのは事実だからだ。


「……『単純だ』って笑うなら笑ってくださいよ。……私、恋愛経験値低いですし」


恥ずかしくなってボソッと言うと、三日月さんは不思議そうに尋ねてくる。


「恵ちゃんって美人だしお洒落にも気を遣ってるし、モテそうだけど恋愛経験値低いの? ……ずっと朱里ちゃんを大切にしてきたのは聞いてるけど、……男は嫌い?」


いきなり褒められ、また頬が熱を持つ。


「びっ、……美人とか言われた事ないですし。そういうのは朱里に言ってください。あの子は本物ですから」


すると三日月さんは手を延ばし、私の顎をつまんで自分のほうを向かせた。


「今は恵ちゃんの話をしてんの」


「っっっ…………!!」


美形すぎる彼に窘めるように見つめられ、クッと心臓が止まりそうになる。


私はグググ……と首に力を入れてシャンデリアのほうを見ようとしたけれど、三日月さんは「だーめ」と再度自分のほうを向かせる。


「褒められ慣れていないのも、男慣れしてないから? 本当は男嫌い? こうされるのも嫌? 嫌だったらちゃんと自分の口で説明してみて」


彼の態度は優しいけど、普通の男性ならこんな頑なな態度をとられたら「可愛くない」と思われても仕方ない。


なのに彼はまったく感情的にならず、私の話を聞き出そうとしている。


三日月さんを前にしていると、自分の子供っぽさが嫌になる。


抵抗する力を抜くと、彼は私の顎から手を放す。


引き際もちゃとわきまえてる、ずるい人だな……。


私はバルコニーの欄干に頬杖をつき、煌びやかなシャンデリアを見て言う。


「……中学生の時に痴漢に遭ったんです」


それを聞き、三日月さんは納得したように溜め息をついた。


「私の家族はアウトドアな両親に、兄が二人。私自身、ミニバスをやったり活発な子供時代を送っていました。中学生になって制服のスカートを穿くようになっても、ガキ大将みたいな気の強さは変わらなくて、周りから女扱いされていませんでした」


私は当時の事を思い出し、無意識に息を吐く。


「……私自身、自分がおしとやかになるとは思えませんでした。当時はショートヘアだったし、本当に男の子みたいで、そんな自分が大人の男性から性的に見られるなんて、思いもしなかったんです」


「……それは嫌な経験をしたね。制服を着ている子に痴漢するなんて最低だ」


三日月さんは嫌そうに眉間に皺を寄せる。


「……『痴漢された』なんて言ったら、『お前みたいな奴に痴漢する物好きなんているの?』って言われると思っていたから、誰にも打ち明けられませんでした。だから一人でこっそり泣こうとしたんですけど……、……校舎裏で朱里に会って、何だかんだ話して受け入れてもらえたんです。……だからあの子は特別」


「……うん、分かった」


三日月さんは何回か頷き、私の話を反芻するように沈黙する。


そのあと、私を見て笑いかけてきた。


「俺は恵ちゃんに魅力を感じているんだけど、迷惑? 抵抗を感じる?」


またストレートだな、この人は!


「…………め、迷惑じゃないです……。ただ、どうしたらいいか分からなくて……。何人かと付き合った事はありますが、『私を好きになるなんてどうかしてる』と思って、すぐ気持ち悪くなっちゃうんです」


「それは多分、痴漢に遭った事で自己肯定感が低くなってるからだね。加えて男への不信感があって、少しでも性的な下心が見えると、『やっぱり無理』って傷付く前にすべて否定したくなるんだと思う」


ズバリと言われ、私は何も言えず黙る。


「でも、勿体ないと思うよ。君も分かってると思うけど、世の中、女性を傷つける男ばかりじゃない。たまたま、まともな男と縁がなかっただけだ」


「…………ですね。そうだと思います。……私はあまりに、世の男性を憎みすぎてしまいました。……朱里の元彼だってロクな奴じゃなかったし」


しみじみと言うと、三日月さんは欄干に触れている私の手をトントンとつついてきた。


「俺はどう? 今までの男と同じようだと思う? 少しはまともだと思ってくれる?」


そう尋ねられ、私は赤面すると「うう……」と唸って彼を睨む。


「分かってるくせに」


「恵ちゃんの口から聞きたいな。……俺と手を繋いだり、ハグしてみても平気そう?」


彼の言葉を聞き、私はカッと赤くなる。


手つなぎ、ハグなんて今どき小学生でもしてそうだけど、私にとっては|大事《おおごと》だ。


「……三日月さんが嫌じゃないなら……」


そんな消極的な答え方しかできない自分が嫌だ。

部長と私の秘め事

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コメント

2

ユーザー

まるで中学生みたいに清純な恵ちゃん、可愛いし愛おしい…✨️ きっと恵ちゃんだけでなく 涼さんも、彼女にドキドキ、キュンキュンしてると思います♡♡♡

ユーザー

恵ちゃんファースト💜で考えてくれてて嬉しいよね(#^.^#)コレじゃ~惹かれちゃったよね〜😍

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