更に動きを増す心臓を落ち着かせるように、胸を撫で、ベッドに倒れ込む。どうにもこの心臓は、いつもの姿に戻ってくれないらしい。脳もそれに同調し、様子がおかしくなっていく。自分が自分じゃないような感覚に陥り、どうしようも無く布団を頭まで被った。こんな姿誰かに見られたら、きっと本当に飴のように溶けてしまう。そうなる前に、気持ちを整理しなければいけない。混乱している頭を無理に使い、考え始める。
この不自然極まりない心臓は、いつからおかしくなった?大体想像は付いている。鏡の前で表情を見ようと四苦八苦し、絵心さんと話した後、この鼓動に気づいた。
絵心さん……絵心さんに関係がある?
そういえば、あの質問の時はさておき、最近は普通に話してる時、あまり目を合わせられなかった。なんとなく合わせづらくて、逸らしていた事を思い出した。それだけじゃない。あの時体調を気遣われた時、疑問と共に嬉さが募った。さっきの「好き」と言う言葉に、ちゃん付けの私の名前に、反応し、後にそれで心が埋められたた自分が居る。
よく考えたら絵心さん、最近優しいな。勘違いかもしれないが。そもそも高確率で勘違い
だろうが。その優しさを向けられたら凄く、気分が良くなる。
「……ええー…マジか……」
思わず声が出た。客観的に見たらかなり変。当時は仕事してたし、必死で何も思わなかったが……違和感しか無い。自分はバカなのか?そんな挙動したら相手も違和感で仕方ないんじゃないか。いや、それは無いか。
だとしても問題だ、何で、何でそんなに?
まるで私の感情を全て操られてるみたいで、でもそれに嫌悪感は抱けなくて、どうしようも無い気持ちが続く。もう答えは明白になっている気がして、思わず口を開く。
「これ…恋とか…そういう奴ー…?」
自分で言っていて恥ずかしい。何なんだろう私は。そもそも私はただの裏方の仕事をしてるだけの職員、彼はこの青い監獄の責任者だ。釣り合う訳が無い。そんな立場で恋なんてする訳無いじゃないか。でもそれ以外で説明出来るような感情では無い気がする。嘘だろう?そんな馬鹿みたいな、そんな恋を、私が?
どうしよう。そんな感情抱いたままちゃんと仕事は出来るのか?この感情はこの先どうなる?もう何もかも分からない。恋なんて、これが初めてだ。
今まで恋とかなんて全くした事無いのに突然これだ。恋愛の神は私に優しく無い。
「ほんとに職場で恋とか最低じゃんー…」
しかしこの間向けられた、あの優しさが垣間見えた行動をあの言葉を思い出して、今の私は正気では居られない。私は本当にチョロい女だ。心からそう思う、本当にバカみたいだと思う。
諦めたい。諦めたくない。叶えたい。叶えるなんて無理だ。アタマがごちゃごちゃして行く。
「……寝る…」
もうまともな事は考えられない。もう寝て、こんな事忘れてしまうのが1番良いんだろう。
この気持ちを忘れてくれ、頼む。
そう祈り、半ば強制的に目を瞑った。眠れないと分かっていても。
スクロールお疲れ様です!!今回個人的に気に入っていて、実は個人的なサンプルとして書いた物を少し変更して書いていました。
当時は2話になる予定だったのですが、丁寧に進めたいという事でこうなるに至りました。ここまで見てくれた方、ありがとうございます!!次回もよろしくお願いします!
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