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「はぁ〜綺麗だったあ。しかし今年もここの穴場、誰にもばれてないね!うれしか〜!」背伸びをしながら目を細めて百合花が笑う。4人は、祭り会場から15分ほど歩いた堤防に川の字で寝っ転がっていた。
横になりながら大きな花火を見つめることができるここの堤防は、去年堅人が見つけた穴場である。堅人は島の中でもトップクラスの勤勉だった。ここの穴場も花火が上がる位置や木の高さ、島の地図などを見てコツコツ分析したらしい。「さすが堅人だよ!」と満面の笑みを浮かべる瀬名を見て、堅人は優しく微笑んだ。
花火を締めくくるカーテンのような煙が少しずつ薄れ、徳之島に綺麗な星空が戻ってゆく。4人はなんとなく、そのまま動かず寝っ転がって談笑していた。
「みんな大人になってもこうやって一緒に見れたら嬉しいなぁ。」瀬名は無意識に口ずさみ、横に寝転ぶ柊の表情をじっと見つめた。そして自分の手と、3センチ先にある柊の手のひらを交互に見つめ、少しだけ手を近づけ、バレないようにはにかんだ。
その時、空の違和感に気づいた堅人が「なぁ、なんかあそこからすごい煙あがってないけ。」3人は空を見た。「ほんとだ。花火の煙‥かな‥?」そのとき、4人の名前を叫ぶ聞き慣れた声が遠くから聞こえた。「ねえ、都おばさんの声せんかった?」「うん、した。なんだろ‥。」4人は立ち上がり、会場の方に歩き出した。
しばらくして4人の姿を見つけた都おばさんが、いつにない剣幕で走り寄ってくる。「あんたらどこにおったん!!しゅ、柊くんのおうちが‥燃えとるのよ!!お父さんお母さんもさっき救急車で運ばれたが!!」都おばさんは、息継ぎを忘れているのか唾を飲みながら叫んだ。
「え‥」
一瞬、何を言っているのか理解ができなかった。
瞬く間に柊の手を引いて都おばさんは町の方に走って行った。柊は力無くおばさんと共に走り去っていった。
残された3人は、星空に一本の線を描く煙を背景にしばらく立ちすくんでいた。