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#死ネタ・グロ・流血表現注意
#探偵
橘靖竜
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麟兎
43
09:12
神崎たちは地下通路を走っていた。
背後から警報が鳴り響いている。
「こっちだ!」
佐伯が先頭を走る。
少女は神崎の手を握ったまま、必死についてくる。
「あとどれくらいだ!」
「分からない!」
「じゃあ、どこへ向かってる!」
「出口だ!」
「それは見れば分かる!」
神崎が叫ぶ。
こんな状況なのに、佐伯が少しだけ笑った。
「昔からそうだったな、お前。」
「何が!」
「追い詰められると口が悪くなる。」
神崎は眉をひそめる。
「……俺たちは、本当に昔から知り合いだったのか?」
佐伯の表情から笑みが消えた。
「もちろんだ。」
「なら教えてくれ。」
神崎は走りながら尋ねる。
「俺は、三年前に何をしていた?」
佐伯は答えなかった。
「佐伯さん!」
「……お前は、あの事件を追っていた。」
「転生事件?」
「違う。」
佐伯が振り返る。
「最初はただの失踪事件だった。」
「何人もの人間が突然消えていた。」
「その中に、あの少女がいた。」
神崎は少女を見る。
少女は何も言わない。
「俺とお前で捜査した。」
「そして、この施設に辿り着いた。」
神崎は息を呑む。
「じゃあ、俺たちは最初から教団を追っていた?」
「そうだ。」
「なぜ俺は覚えていない?」
佐伯は苦しそうに答えた。
「お前が自分で消したからだ。」
「……何?」
08:21
地下通路の先に扉が見えた。
佐伯が扉を開ける。
その先には、古い病院の地下駐車場が広がっていた。
「出口だ!」
三人が駆け出す。
しかし。
駐車場の中央に、一台の黒い車が停まっていた。
その横に、人影。
白いスーツ。
あの男だった。
相談室の案内人。
「……先生。」
少女が怯える。
男は穏やかに笑った。
「お疲れ様でした。」
神崎は拳銃を構える。
「そこをどけ。」
「できません。」
「逮捕する。」
「逮捕状は?」
「今から取る。」
「では、その前に一つだけ。」
男は神崎を見る。
「あなたは、自分が誰なのか知りたくありませんか?」
神崎は黙る。
「私たちは、あなたを殺そうとしているわけではありません。」
「むしろ逆です。」
男は一枚の写真を取り出した。
それは、幼い頃の神崎。
隣には先ほどの女性。
そして写真の端に、小さく番号が記されている。
001
「あなたは最初の成功例です。」
神崎の拳が震える。
「俺が……?」
「ええ。」
男は頷いた。
「ただし、あなた自身が作った計画です。」
「嘘だ。」
「三年前のあなたは、この実験を止めようとしました。」
「だから記憶を消した。」
神崎は目を見開く。
「……俺自身が?」
「はい。」
男は静かに続けた。
「あなたは、自分の記憶を分割しました。」
「一部を自分へ。」
「一部を別の身体へ。」
神崎の脳裏に、もう一人の神崎が浮かぶ。
「あいつ……。」
「彼はあなたの記憶から作られた存在です。」
「そして、あなたが忘れた真実を覚えている。」
神崎は歯を食いしばる。
「だったら、なぜ俺を殺そうとする?」
男は答えた。
「殺すのではありません。」
「戻すのです。」
06:47
突然、少女が男へ駆け出した。
「お父さん!」
神崎が驚く。
「待て!」
少女は男の前で立ち止まる。
男は優しく少女の頭へ手を置いた。
「……よく戻ってきました。」
少女は涙を流す。
「私のお父さんなの?」
男は答えない。
その代わり、神崎を見る。
「彼女には、あなたの記憶の一部が入っています。」
「だから彼女はあなたを父親だと思った。」
神崎は少女を見る。
「……俺の記憶?」
「はい。」
男は言った。
「あなたの記憶は、すでに十三人へ分散されています。」
神崎の顔が青ざめる。
「十三人……?」
「あなたが出会った人々。」
「あなたが殺したと思っている人々。」
「そして、あなたを殺した人々。」
男は微笑む。
「すべて、あなた自身の記憶を持っています。」
神崎は言葉を失う。
その瞬間。
スマートフォンが鳴った。
画面には、また同じ名前。
神崎悠真
今度は着信ではなかった。
メッセージが届いている。
『逃げろ。あいつは嘘をついている。』
神崎は顔を上げる。
男の表情が変わった。
「……その端末を渡してください。」
「嫌だ。」
「それは危険です。」
「誰からだ?」
神崎が問い詰める。
男は答えない。
もう一度、メッセージが届く。
『地下ではなく、病院の屋上へ行け。』
『そこに本物の俺がいる。』
神崎の背後で、佐伯が呟いた。
「……本物?」
神崎は顔を上げる。
「どういうことだ?」
その瞬間。
病院全体の照明が消えた。
真っ暗になる。
そして暗闇の中。
誰かの声がした。
「神崎。」
聞き覚えのある声。
だが、今までの誰とも違う。
「やっと会える。」
神崎は息を呑む。
「俺が、お前の十三回目の人生を終わらせる。」
遠くで非常灯が点灯する。
赤い光に照らされ、駐車場の奥に一人の男が立っていた。
神崎と同じ顔。
佐伯とも違う。
もう一人の神崎とも違う。
そしてその男の胸には、
「001」
という番号が刻まれていた。
男は笑った。
「俺が、本物の神崎悠真だ。」
コメント
1件
十四人目、一気に核心へ迫る回でしたね。記憶が十三人に分割されているという設定の巧みさにまず驚きました。神崎自身が自分の記憶を消したという自己矛盾が、物語に深みを与えています。最後の『本物の神崎悠真』の登場は、これまでの伏線を回収しつつ新たな謎を生む、絶妙なタイミング。次話が待ち遠しいです。