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#死ネタ・グロ・流血表現注意
#探偵
橘靖竜
5,860
麟兎
43
赤い非常灯が、駐車場を不気味に照らしていた。
神崎は目の前の男から視線を外せない。
同じ顔。
同じ声。
だが、今まで出会った誰よりも異様な存在感を放っている。
「俺が、本物の神崎悠真だ。」
男はそう言った。
「……なら、証明しろ。」
神崎が拳銃を構える。
男は笑った。
「三年前の事件を覚えているか?」
「……覚えていない。」
「だろうな。」
男は一歩近づく。
「なら、これならどうだ?」
男は右手を上げた。
左手の指を二度鳴らす。
パチン、パチン。
神崎の顔色が変わった。
「……それ。」
「思い出したか?」
神崎の脳裏に、一瞬だけ光景が浮かぶ。
幼い頃。
母親と歩いた公園。
その帰り道。
母親が必ず言っていた。
「怖いときは、二回指を鳴らして。」
神崎は息を呑んだ。
「……母さん。」
目の前の男が頷く。
「そうだ。」
「俺は、お前の記憶の中にある人間じゃない。」
「お前の記憶を作った本人だ。」
神崎の手が震える。
────────
「じゃあ、あの人は?」
神崎は最初のもう一人の神崎を見る。
男は黙っていた。
本物を名乗る男が答える。
「コピーだ。」
「十二回目の実験で作られた。」
「お前の記憶を守るために作った、保管庫だ。」
神崎は眉をひそめる。
「保管庫……?」
「俺は、自分の記憶を全部持つことができなかった。」
「だから分けた。」
「一部をあいつへ。」
「一部を少女へ。」
「そして残りを、お前へ。」
少女が呟く。
「じゃあ……私の中にある記憶は。」
「俺のものだ。」
本物の神崎が答える。
少女の顔が青ざめる。
「私は……私じゃないの?」
本物の神崎は首を横に振った。
「違う。」
「記憶が誰のものでも、お前自身が生きた時間は消えない。」
少女は涙を拭う。
「……分からない。」
神崎は少女の肩に手を置いた。
「俺もだ。」
その言葉に、少女は少しだけ顔を上げた。
────────
佐伯が口を開く。
「じゃあ、教えてくれ。」
「なぜ転生事件を作った?」
本物の神崎は黙った。
そして、ゆっくり答えた。
「転生は存在しない。」
神崎が顔を上げる。
「じゃあ、あの噂は?」
「俺が作った。」
「……何のために?」
「人間が死んだあと、何が残るのかを調べるためだ。」
本物の神崎は淡々と語る。
「肉体がなくなっても記憶が残るなら、人間は再現できる。」
「記憶を別の人間へ移せば、同じ人格を作れる。」
「つまり……。」
神崎が言葉を失う。
「死者を生き返らせることができる。」
本物の神崎は頷く。
「それが、このプロジェクトの目的だった。」
佐伯が拳を握る。
「だから、あれだけの人間を……。」
「実験には犠牲が必要だった。」
「ふざけるな!」
佐伯が殴りかかる。
だが、本物の神崎は避けなかった。
拳が頬に当たる。
鈍い音。
本物の神崎は倒れた。
それでも立ち上がる。
「殴っていい。」
「俺自身も、同じことを何度も考えた。」
「自分を殺せば、この実験は終わる。」
神崎は言った。
「なら、なぜ終わらせなかった?」
本物の神崎は答える。
「……終わらせられなかった。」
その瞬間。
建物全体が揺れた。
ドンッ!!
天井から粉塵が落ちてくる。
警報が鳴り響く。
**《最終プロトコル開始》**
**《被験者001を回収します》**
本物の神崎の顔色が変わった。
「まずい。」
「何が?」
「俺たちは、もう施設の中にいる。」
「それが?」
「ここは研究施設じゃない。」
本物の神崎が天井を見上げる。
「巨大な記憶装置そのものだ。」
「……何?」
「この病院全体が、一つのコンピューターになっている。」
壁の奥から機械音が響き始める。
ゴゴゴゴゴ……
「この施設が起動すると、ここにいる人間の記憶が全部読み取られる。」
神崎が少女を見る。
「……まさか。」
「そうだ。」
本物の神崎が言う。
「次の転生者を作るために。」
────────
その時。
病院のスピーカーから、女性の声が流れた。
『被験者001、確認。』
神崎はその声を聞いた瞬間、動けなくなった。
「……母さん?」
声が完全に同じだった。
幼い頃に聞いた声。
何度も夢に出てきた声。
『悠真。』
スピーカーから母親の声が続く。
『あなたは、よく頑張りました。』
神崎の目から涙が落ちる。
「母さん……生きてるのか?」
本物の神崎が答える。
「違う。」
「その声は……。」
彼は苦しそうに目を閉じた。
「お前の母親の記憶を使って作られたAIだ。」
神崎は絶望する。
「……じゃあ、母さんはどこにいる?」
誰も答えない。
スピーカーから、再び声がする。
『悠真。』
『おかえりなさい。』
その瞬間。
神崎のスマートフォンに、新しいメッセージが届いた。
送り主は、
神崎悠真。
本文は一行だけだった。
**『母さんは生きている。』**
神崎は顔を上げる。
「……どういうことだ?」
本物の神崎の表情が変わる。
そして。
病院の最上階。
誰もいないはずの屋上に、一人の女性が姿を現す。
神崎が幼い頃から探し続けていた人物。
母親だった。
コメント
1件
え、待って待って待って!!!第12話「本物」、マジでやばすぎた…😭💦 「本物の神崎」登場からの展開が重すぎて息できなかったよ…。特に母親の声がAIで流れて「おかえりなさい」って…神崎の気持ち思うともう胸がギュッてなるし、最後のスマホのメッセージ「母さんは生きている」からの屋上の母親登場で涙腺崩壊したんだけど!?!? リユさん、伏線の配置と回収が上手すぎて毎話「えっ!?」ってなる…。そして病院が巨大記憶装置って設定、SFとしてめっちゃツボです。続きが気になって今夜眠れないかも…!次の話も楽しみにしてるよ🌸