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こんな不思議な事件だから怖くはないんだ。でも、時々……怖くて仕方がない時もある。
そんな時は、裏の畑の子供たちのことを考えて勇気をだすんだ。
「では、歩君……。私はこれから藤堂君の家に行くけど、その間。私の車の中で二人だけで相談しましょう。何かの力になってあげるから」
ぼくは勇気を振り絞って答えた。
「うん!」
自分でも驚くほど力強い声だった。
空想が壊れないなら、ぼくはちっとも怖くはないんだ。
午後の4時に羽良野先生の車に乗った。
隣の羽良野先生は至って普通に話している。
「ちょっと運転するね」
羽良野先生はニッコリと笑って、ハンドルを回した。
ぼくは勇気を振り絞って、後部座席のリュックを素早く確認した。
外は相変わらず厚い雲が覆い。光を遮るカーテンのように、何かを隠しているようだ。それは小さな生命を育む光を隠しているのだろう。
家の砂利道から御三増駅とは反対の方へと車は向かった。
多分、昔父さんと栗を拾った雑木林へ行くのだろう。
西の方には大きな雑木林がある。
ぼくの家から車で45分だ。
更に薄暗い舗装されていない道へ差し掛かると、隣の羽良野先生は生徒のことや学校のことを楽しそうに話していた。
車は人気がないところを進んでいく。ぼくはニッコリと前方を見ていたけど、喉が緊張でカラカラだった。完全に人気がなくなると、急に車が道端に停まった。
「お前はここで、死ぬんだよ!!」
羽良野先生は一変して人間とは思えない形相と声になった。
羽良野先生は、懐から鉈のような形状の刃物を取り出して、狭い車内で振り回した。
ぼくは急いで後部座席へと体を捻じ込んだ。後部座席に転がりリュックを掴むと、外へと車のドアを開ける。
「待て!」
いつの間にか、羽良野先生の鉈がぼくの左肩と右手に傷を負わしていた。
激痛が空想を一部破壊した。
ぼくはそれでも、リュックを背負うと雑木林の中に一目散に走っていた。
「大丈夫! 怖くない! これはホラー映画の中だ! 追いかけてくるのは、羽良野先生じゃない! ホッケーのマスクをした大男だ!」