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舜太 「 … 俺が言い出したことやから 。」
勇斗 「 … 何を 。」
舜太 「 殴って良いって 、 俺が 、 言い出したことやから 。」
勇斗 「 ─── は ? 」
頭を殴られたような感覚 。
耳の奥がきん 、 となったような気がして
舜太の声が少し遠い 。
勇斗 「 お前 何言って 、」
舜太 「 あの人には 、受け止めてあげられる人がおらなあかんねん。」
勇斗 「 おい 、」
舜太 「不安に押し潰されそうになったり 、 心が壊れそうになってまうくらいなら 、俺が 、」
勇斗 「 舜太 !!」
正気を取り戻させるように 、 連れ戻すように強く肩を掴み 彼の名前を呼んだ 。
若干の興奮状態にあった舜太はその声にハッとしてゆっくりと勇斗に視線を戻す 。
勇斗 「… 好きな奴 殴る馬鹿がどこにいんだよ 。」
諭すように 、 けれど間違えないように必死に言葉を探す 。 唇が 、 喉が 緊張でカラカラに乾いていた 。
勇斗 「好きな奴に 「殴ってもいい」なんて言わせる馬鹿がどこにいんだよ 。 なあ 。」
─── 目を覚ませ 。
そう強く願いを込めて 、 舜太の肩を揺さぶる 。 肩を掴む手に力が入ってしまいそうになるのを何とか押し止めながら 。
勇斗 「 頼むから 、そんなこと言うなよ 。 」
舜太 「 … 勇ちゃ 、 」
勇斗 「痛ぇだろ 、 ここ 。 」
青紫色に鬱血した手首の痕を親指で さり 、となぞれば防衛本能のように舜太の身体が小さく揺れる 。それを見て勇斗の胸はキツく締められた 。
勇斗 「こんな傷だらけになってまで一緒にいる理由ってなんなんだよ 。 」
重い沈黙 。
それを破ったのは舜太だった 。
舜太 「… 好きやから 。」
至極シンプル 。
それは 、 舜太にとって当たり前の答えで
勇斗にとって 一番聞きたくない答えだった。
─── 俺に 、 舜太は止められない 。
そんな現実を突き付けられたようで 、 無意識のうちに拳を強く握っていた 。
勇斗 「好きだから って 、 お前 … 」
舜太 「普通やないことなんて分かっとる 。
周りに理解されたいとも思わん 。
ただ 俺は 、あの人が苦しんどる姿見る方がこんな傷よりずっと痛いし 、 しんどい。
…. おかしいやろ 、 そんな事 ほんまは ちゃんと分かっとんねん。」
どこか諦めたように自嘲気味に笑う舜太に 、 勇斗はどうにかなりそうだった 。
止められない 、 頭では分かっている 。
勇斗 「 … なんだよ 、 それ 。」
それでも 、 こんなに苦しそうに笑う彼を前にして引き下がる気なんてさらさらなかった 。
勇斗 「 好きだから 、 相手が苦しむのが嫌だからってなんでも受け入れるのは違うだろ 。
それでお前が傷付けられてんの見て 、 周りの人間がどう思うか 考えたことあんのかよ 。 」
舜太 「 ッ 、 それは … 」
勇斗 「ねえだろ 、 良くも悪くも前しか見えないタイプだもんな 。 」
舜太の瞳が緩く揺れる 。
─── やめろ 、 怖がらせるな 。
そう思うのに 、 一度爆発してしまった感情は簡単には抑えられない。
勇斗 「 … 昔からそうだよ 、 お前は 。
何かを選択しなきゃいけないって時 、いっつも自分が傷付く方を選ぶ 。」
勇斗 「自己犠牲も大概にしろよ 。」
舜太 「 … 自己犠牲て何 ? 一度だってそんなんした覚えないよ 。」
押し黙っていた舜太がゆっくり口を開く 。
その表情には、珍しく僅かに怒りの色が混ざっていた 。
舜太にだってプライドはある 。
仮にもアイドルだ 。自分をぞんざいに扱ったり 、安売りしたりするような真似 する訳がない 。 と 、 自分では思っている 。
彼が自分の意志を蔑ろにするがあまり一時期スタッフの間でちょっとした問題になった程だというのに。
そんな事など知る筈もない舜太は 「ていうか」と乾いた笑いと共に付け足す 。
舜太 「さっきも言うたけど、そもそも勇ちゃんがそんな深刻な顔する必要ないんよ 。 最年長やからってメンバーの面倒事まで抱え込む必要なんて 、」
勇斗 「 関係ねえよ 」
舜太の言葉を遮るように被せる 。
勇斗 「最年長だからとか 、 メンバーだからとか 、 関係ない 。 」
勇斗 「 ── 舜太だからだよ 。」
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