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何度も何度も発砲音が鳴る。そして悪魔は倒れ込む。
ジーク(凄い…いつもはもっと時間がかかってたのにあっという間に…プロが2人も居るんならそりゃ変わるか…。)
ハンターは、倒れた悪魔には見向きもせず、アリィ達の方を見る。そしてアリィ達の方へ歩き始める。
ジーク「まずい…シリル、お前は悪魔が死んだか確認してくれ。俺はアリィ達のとこに行く。」
シリル「分かった。」
(正直生きてたとして僕も攻撃を避けられる自信はないけどしょうがない…さっさと確認を済ませて早く2人のところに僕もいかないと…)
イリア「…悪いけどこの子は渡せないわよ。」
イリアはアリィを庇うように腕を広げる。そしてハンターに言う。
アリィ「……。」
(…へぇ…意外…。)
ハンター「……。」
沈黙だけの空間が数秒存在する。やがてハンターは、おもむろに手に構えていた銃を落とす。そして銃をアリィ達のほうに蹴り両手をあげる。
アリィ「…何?」
ハンター「…確かに俺達ハンターからしたら嬢ちゃんは駆除対象だが…俺は嬢ちゃん達に一切手は出さない。…すまなかった。勘違いで悪魔を逆上させて、嬢ちゃんに深手を負わせちまった。」
そう言って、ハンターは深々とアリィに頭を下げる。
アリィ「はっ!…何のつもり?」
アリィはそう鼻で笑い、謝罪を受け入れはしなかった。
ハンター「…すまない。許してくれとは言わない。ただ…俺に自分と似すぎている生き物を殺す度胸はない。俺達の拠点に痛み止めがあるんだ。それだけでも…」
アリィ「……」
アリィは何も答えない。ただ鋭い目つきで睨む。
ジーク「…信用されたいなら代わりに差し出せるものは?」
その沈黙を壊したのは駆けつけたジークだった。
イリア「ジーク…」
アリィ「信じるわけ?」
ジーク「武器を取り上げて、無力化させればいいだけの話だろ?お前が1番自分がどんな状態か分かってるだろ?痛み止めはあるに越したことはない。」
ジークがそう説得すると、アリィは渋々と文句を言わなくなる。
ジーク「全て、渡してもらおうか。あぁ、下着まで全てな。安心しろ。武器を隠してないかみるだけだから、服はすぐ返してやる。」
ハンターは迷うことなく、服を脱ぎ始める。
ジーク「即決…ハンターって変人が多いのか…?アリィとイリアは後ろ向いてろ。」
イリア「えぇ。アリィ体勢変えられそう…?」
アリィ「できればもう転がしてもらった方が楽。」
イリア「分かったわ。」
そう言うとイリアはアリィの体勢を変えようとする。
シリル「悪魔の確認は済んだよ…ってうわっ!み、身ぐるみ剥がしてる…」
ジーク「こいつが拠点に痛み止めがあるから渡したいんだとさ。だから武器を全部預かろうと思ってな。」
シリル「ジークって…もしかして取り立て屋…?」
ジーク「断じて違う。」
シリル「でもなんでわざわざ…」
ハンター「…少なくとも俺は、ヒトの命を救う為に行動する悪魔は見たことがない。害がないなら殺す理由もない。」
シリル「なんだ。信念に基づくものか。」
ハンターは脱いだ服を全てジークに投げ渡す。
ハンター「これでどうだ?」
ジーク「待ってろ。」
そう言ってジークはくまなく服のポケットの中まで調べる。
シリル「…思ったんだけどさ、これだけ調べてるのにどうして僕とイリアは…」
ジーク「お前達のことも完全に信じた訳じゃない。ただ第一印象の問題だ。シリル達はまず最初に助けてくれたのは事実だからな。こいつは真反対ってだけだ。」
そう言い終えるとジークは服のみをハンターに返す。
ジーク「名前は?」
ハンター「サンドラだ。」
ジーク「そうか。サンドラ、案内してくれ。お前らはここで待機してろ。シリル、2人を頼む。」
シリル「流石に1人は危ないんじゃ…」
アリィ「ダメだよ。ダメ。」
ジーク「アリィ…」
アリィ「ジーク1人で行かせるなんてさせないよ。」
ジーク「…お前を連れてくのは無理だ。今は止血しただけなんだ。下手に動けばまた出血しかねない。それとも俺がそんなに信用出来ないか?」
アリィ「そういう訳じゃないけど…でも…」
イリア「…アリィがどうしてもって言うなら、私でよければ代わりに一緒に行くわ。」
ジーク「いや…お前にはアリィを見てて欲しいんだが…」
イリア「大丈夫すぐ行って帰ってくるだけよ。シリルも多少は診れるから。…忘れた?」
イリアはそう言うと、ジークに耳打ちをする。
イリア「私は1人殺してるわ。いざとなれば毒を飲ます方法を私は何通りも知ってる。」
ジーク「そうだったな。2人で行ってくる。それならいいか?アリィ。」
アリィ「それなら…」
ジーク「無理に動かないで待ってろよ。シリル、頼んだぞ。今度あんなことなったらアリィがまた動きかねない。」
シリル「…分かった。」
ジーク「待たせたな。サンドラ、案内してくれ。」
サンドラ「ああ。」
サンドラの後ろにジークとイリアは着いていく。その背中はどんどん小さくなっていった。
シリル「……」
(あの悪魔は…明らかにポルポルちゃんに反応していた。でも、ジークの言う通り擬態種ではあった…。まさか…ヒトであった頃の記憶が中途半端に残っていた…?今まで見てきたのは0か100だった…ポルポルちゃんに腕を伸ばしてきたのは…ポルポルちゃんは…まさか…)
シリル「…ノア…。」
(それなら辻褄が合う…あれは…無くした記憶を取り戻そうと、助けを求めていた…?)
ポルポル「ギィ…」
ポルポルはアリィを心配そうに見つめる。
アリィ「心配しないで。大丈夫だよ、ポルポル。」
アリィはそう言って優しそうな表情を浮かべ、ポルポルを撫でる。
アリィ「…鍛えられたから、痛みには強い方だからね。」
シリル「…凄いね。痛みに強い訓練って…普通は軍人しかやらないのに…」
アリィ「正確には気絶しない訓練だけどね。」
シリル「誰に訓練してもらったの?」
アリィ「秘密。」
シリル「秘密かぁ。少なくとも、ジーク君ではないな、きっと。」
アリィ「いい線行ってる。…まぁでもたとえ答えが合ってたとして、私は答えられないけどね。」
シリル「なんで?」
アリィ「それも秘密。」
シリル「秘密ばっかだ。」
アリィ「他のことならいいから。話してないと、どうにかなりそうだから、なんでもいいから話して。」
シリル「そんな面白い話出来るかなぁ僕…あっ。じゃああの話は?」
アリィ「?」
シリル「僕が壁にハマって1時間抜けなかった話。」
アリィ「待って何それ。」