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しばらくして遠くにジークとイリアが見える。
シリル「あっ2人だ。2人とも髪色が明るいから分かりやすいね。」
アリィ「無事みたいでよかった…。」
アリィはほっと息をつく。
シリル「あーでも…1人は無事じゃないかも…」
アリィ「…誰が…?」
シリル「サンドラ。」
アリィ「サンドラ…?なんでサンドラが…」
シリル「なんか地底人に、小脇に抱えられてるよ。」
アリィ「ほんとにどういうこと…??」
シリル「というか痛み止めを持ってくるだけだったはずじゃ…」
アリィ「捕虜?」
シリル「それは無いと思う。武器取り上げられてないし、2人とも表情が明るいから。」
アリィ「まって視力おかしいって。私表情まで見えないよ…。」
シリル「とりあえずサンドラはダメそう!」
アリィ「ソイツはいいや。悪いヤツだった…。」
シリル「そのセリフで良い奴じゃないことあるんだ…。」
ポルポル「ギッ…」
ジーク「思っていたよりは具合が良さそうで良かった。ただ顔色が悪いな。大丈夫そうか?アリィ。」
近づいてきたジークがアリィに聞く。
アリィ「大丈夫ではないね。」
ジーク「それはそうか。悪かった。痛み止めは手に入った。」
アリィ「本当だったんだ…じゃあ…」
ジーク「ただ、止血しただけだからな。ある程度の応急処置をすることになった。あとはこの人達から聞いてくれ。」
シリル「そ、それもすっごく大事なんだけど…サンドラについて聞きたいんだけど…」
イリア「あぁこれ?チームを組んでたみたいで、事情を説明したら速攻でシめられてたわ。死んでは無いけど気絶してる。」
地底人の1人「ケジメはしっかりつけねぇとなぁ。うちの倅が済まなかった。この通りだ。」
そう言って地底人達は頭を下げる。
シリル「倅…?」
そういってシリルは2人の身長差を見比べる。
小脇にサンドラを抱えた地底人は疑問の止まらないシリルを制する。
地底人「後でいくらでも教えてやる。今はお嬢ちゃんの治療が先だ。」
シリル「そ、そうだね」
地底人達はまるで自分達の庭のように、あちこちに物を置き始める。
テントの中でアリィはすぅすぅと寝息をたてている。それに寄り添うようにポルポルも寝ている。
地底人の1人「しっかし…なんだ?この白いぷにぷには?」
そう言って地底人の1人はポルポルをつんっと指でつく。
ジーク「…アトリさん。寝ているのでできれば起こさないでもらえると…」
アトリと呼ばれた地底人はジークに咎められると、すぐに指を引っ込める。
アトリ「おおっとすまん。生き物じゃったか。」
もう1人の地底人「見たことない生き物だな。あれか。確かー…愛玩動物とか言ったかの。それか?」
アトリ「おおスピネル、地図は見つかったか。」
アトリがスピネルと呼んだ地底人は返事を返す。
スピネル「見つかったぞ。アトリお前地図は下に突っ込むんじゃあない。」
アトリ「はっはっ。すまんすまん。」
ジーク「…愛玩動物ってなんだ?」
イリア「えっ、貴方知らなかったの?」
ジーク「ああ。」
イリア「意外…。まぁでも知らない方がいいこともあるわよ。」
シリル「それより、次の目標地の話をしようよ。スピネルさんが地図を持ってきてくれたから。」
イリア「そうね。」
スピネル「じゃあ説明するぞ。怪我してる方の嬢ちゃんはまだ応急処置をしただけじゃ。近くの町に行って、しっかりとした治療を受けてもらった方がいいじゃろ。それで今はー…」
サンドラ「ここだろ。」
スピネルが地図をグルグルと回転させていると、サンドラを一点を人差し指で指す。
ジーク「あ、起きた。」
サンドラ「スピネルじい、地図読むの苦手だろ。親父に代わってもらえば良かったのに。」
スピネル「ふん、苦手なわけじゃないわい。このなんにも特徴ない砂漠で地図の読めるお前達がおかしいんじゃ。」
アトリ「悪く思わんでくれ。コイツ、負けず嫌いなんじゃ。」
サンドラ「今居るのはここ。ここからずっとまっすぐ、北西方向に進むと町がある。」
アトリ「そこそこ大きめの町だったはずじゃから、そこでなら嬢ちゃんの治療も出来るはずじゃ。」
ジーク「分かった。教えてくれてありがとう。そこに行ってみる。」
サンドラ「あ…ただ…」
イリア「?」
サンドラ「砂漠の生き物は皆例外なく、夜行性だ。悪魔も含めて。ただあの悪魔が夜以外に活動していたということは、ここから1番近い町もなにかしらの影響を受けてるかもしれない。気をつけてくれ。」
ジーク「……。」
サンドラ「どうした?」
ジーク「いや…ちゃんとハンターなんだな…って。」
シリル「にしても人間のハンターはともかく、珍しいね。地底人でハンターって。」
イリア「あ、いや…この人達は…」
アトリ「儂と、スピネルは別にハンターじゃないぞ。」
シリル「そうなの?ならどうしてこんなところに?地底人は日光強いのがダメなはず…」
スピネル「それがなぁ…その通り儂らは強すぎる日光には耐えられんが、このままじゃ不便じゃろ?」
シリル「うん。」
アトリ「じゃから日光を浴びても平気な装備を作ろうってなってなぁ。儂らは鍛治で稼いどるし、儲けそうじゃから作るまでは良かったんだが…」
スピネル「誰も試してくれねぇんだ。みーんな怖がっちまって。そこで家が砂漠に近かったから丁度ええわってなってのぉ。試してる最中じゃ。」
アトリ「悪魔にはかなわんからの。それで倅を護衛に雇ったんじゃ。元々、儂が長期契約を結んでてな。ほら、ハンターって危ない仕事じゃろ?せめて傍に置いておきたくてのぉ。」
サンドラ「勘弁してくれ。もう俺は150だぞ。」
アトリ「儂の息子には変わらん。」
アトリがそう言うと、サンドラはため息をつく。
アトリ「まぁいいじゃろ。儂は老い先短いし、お前はその倍生きれるんじゃから、その時自由にするといい。」
イリア「寿命が倍…ってことはハーフ?」
サンドラ「あぁ。人間と地底人のな。」
アトリ「儂に似てしまって人間にはモテないがの。これでも地底人達にはモテモテでのぉ。」
サンドラ「親父…そういう話はやめろって」
暗闇の中1人、アリィは歩く。
アリィ「…またこの夢…。」
(そう、また。体調が悪い時はよくこんな夢をみる。私はただ暗闇を1人で歩いている。)
アリィ(そうして…私のところに来るのは…)
ジーク「アリィ。」
アリィ「…ほらね。」
いつだってワンパターン。
アリィ「…悪趣味だね。ホント。」
(夢の中現れる、もう1人は決まっていつだってジークだ。)
ジーク「どうした?アリィ。ほら行こう。」
そう言って、ジークはアリィの手を引こうとする。しかし、アリィはその手を振りほどく。
ジーク「アリィ…?」
アリィ「…悪いけど、私の唯一の家族に化けて、騙そうとするやつと旅する趣味なんてないの。」
そう言うと、アリィはジークの首に手をかけ、締め始める。
ジーク「かはっ…おい…ア…リィ…なんで…」
首を絞められたジークは苦しそうにもがく。
アリィ「その瞳でこっちを見ることも、その口で喋ることも、その腕で私の手を離そうとすることも、その足で逃げようとすることも、全部反吐が出る。その体はあんたのじゃない。」
ジーク「なに…いって……」
アリィ「その体はジークだけのものだよ。…誰にも穢させたりしない。」
アリィがそう言うと必死にもがいていたジークの腕はだらんと落ちる。それを見てアリィは持ち上げていたジークの体をぼとっと落とす。
アリィ「…綺麗な顔だこと。」
(私は彼の死に顔を見たことがない。死んでないから当たり前なんだけど。…それでもいつもリアルな死に顔で。夢は記憶に基づくらしい。なら、想像出来るはずのない彼の死に顔が夢で見えるのはきっと)
アリィ「…殺しすぎちゃったんだろうな。」
(でもそれでいい。…もう二度と、ジークに人を殺させたりなんてしない。手を汚させたりなんてしない。)
アリィ「……」
アリィの視界が歪む。冷や汗が止まらない。
アリィ(彼の死に顔を見るのが別に平気なわけじゃない。むしろ、彼まで本当に居なくなってしまったらなんて、考えてしまって。…それでも、彼が無事で幸せでいてくれてるなら。)
アリィ「…私はアビスにだって耐えられる。」