テラーノベル
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それでは、
どうぞっ。
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事前撮影の済んだセットには先ほど当てられていたスポットライトに煌めく世界はもう見えない。
代わりに薄い光が散りばめられたこの空間で來亜は1人溜め息を着いていた。
沢山の人から生まれてきたことを祝われ、祝福の言葉を贈られる特別な日。
朝から沢山の愛に囲まれては「おめでとう」と贈られることが嫌なわけではなかったし、純粋に嬉しいと感じている。
しかし、満足しているかと言われたらそれは嘘になってしまいそうだった。
そんな心の影を見抜くかのようにひっそりと柚葉は來亜に近づいた。
🩵「今日この後スケジュールないよね?」
🤍「…うん。ないよ。」
🩵「じゃあちょっとだけ寄り道して帰らない?」
その言葉に振り向いた來亜の手をそっと引く柚葉の髪先は、薄い照明に照らされて淡い色に揺れている。
🤍「良いけど、何処に行くの?」
🩵「…秘密。」
その言葉と温かい指先に全てを委ねるようにスタジオを出る。
柚葉から手渡された目深な帽子のつばを下げながらもこれからに胸を躍らせていた。
夏が近づくほどに、昼は夜を覆い尽くす。
夏でも冷たい風に來亜は思わず小さなくしゃみをこぼした。
柚葉は笑って自分のジャケットを脱ぐと、來亜の肩にかけた。
🩵「風邪を引かれたら困る。」
🩵「…色んな人が。」
言葉の最後にちゃんと線引きをする柚葉の真面目さに來亜は思わず笑った。
これもちゃんと不器用な柚葉なりの優しさである事を知っているから。
🤍「ありがとう。」
お互いがお互いの歩幅を意識するように歩きながら、來亜は何度も行き先を尋ねた。
しかしその度に柚葉はただ「秘密。」と笑って誤魔化した。
next.
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ささみチーズ。
9
M.S
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コメント
1件
第1話からもう心掴まれた……!來亜の「祝福されるのが嫌なわけじゃないけど満足してない」っていうモヤっとした気持ち、すごくわかる。柚葉の「秘密」の誘い方と、ジャケットかけて「色んな人が」って線引きするところ、優しさの裏に距離感があって切ない。二人の歩幅を意識する描写が細かくて、この先の関係性がすごく気になる。続き待ってます🔥