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太宰治 異能特務課if

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太宰治 異能特務課if

3 - 荒神の人間と人間失格

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2023年12月21日

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外套を床に捨て、此方に拳を叩き込む。

が、全て避けて行く。

此方に向けられた拳を掴み、勢いで宙に浮く中也の腹に拳を入れる。

「…なンだ其のパンチはァ!!!!」

逆に殴り返され、先程まで拘束されていた場所の柱に叩き付けられる。

「ッぐ、…ッ……」

「マッサージにもなりゃァしねェ。手前の格闘術はポートマフィアでも中堅以下だ。異能無効化は厄介だが、此の状況なら異能を使う迄もねェ。」

「……立てよ。パーティは始まったばッかだぜ」

「……ふふ、流石はポートマフィアきっての体術遣い。…よっと、」

体を起き上がらせる。

「ガードした腕が折れるかと思ったよ、…君とは長い付き合いだ。手筋も間合いも動きの癖も完全に把握している。…でなきゃ相棒は勤まらない。だろ?」

此方に飛び付いてくる勢いで向かってくる。

速い。

「だッたら此の攻撃も読まれてるンだろうなァ!?」

顔に思い切り拳を叩き込まれる。

「パンチッつぅのはな、ッこうやッて打つンだよ!!!」

次は腹に叩き込まれ、壁にもう一度叩き付けられる。

「ッごは、ッ」

喉からは何も出ず、嗚咽だけが口から出る。

然して中也の手が私の首に遣られる。

「動きが読める程度で俺に勝てると思ったのか」

キンッ、と音を立て喉元にナイフを突き付けられる。

然して中也の手に入る力も強くなる。

「最後に教えろ。態と捕まったのは何故だ?此処で何を待ってた」

「……」

「…黙りか。好いさ、拷問の楽しみが増えるだけだ。」

そう云ってナイフを首に近付ける。

「___一番は」

「敦くんだ」

「敦ィ?」

「君達が御執心の人虎さ。彼の為に七十億の賞金を掛けたのは誰か。知りたくてね。」

首を絞められ乍ら為、声が掠れるが其の儘続ける。

「身を危険に晒して迄?泣かせる話だなァ。…と云いたい所だが、結果が此のザマじゃァなァ?騏驎も老いぬれば駑馬に劣るッてかァ?歴代最年少幹部さんよォ」

「ま、運にも見放されたッてワケだ。何せ、俺が西方の小競り合いを鎮圧して半年振りに帰った其の日に捕縛されンだからなァ、俺からしたら幸運だぜ」

小さく其の場で笑う。

「何が可笑しい」

「……善い事を教えよう。明日、五大幹部会が在る。」

瞬間、中也は目を見開き、「莫迦な」と独り言の様に呟く。

同時にナイフも引かれ、死の危険は首絞めに依る窒息死のみとなった。

「あれは数年に一度、組織の趨勢を決定する時にだけ開かれる、極めて強制力の強い意思決定会議だ。在るならとっくに連絡が___」

「理由は私が先日組織上層部に或る手紙を送ったからだ。…で、予告するんだけど。__君は私を殺さない。其れ処か、懸賞金の払い主に関する情報の在り処を私に教えた上で此の部屋を出て行く。」

「それも、“内股歩きのお嬢様口調”でね」

「はァ?」

「私の予言は必ず中る。知ってると思うけど?」

「この状況で何が_____」

「手紙…手紙だと」

「手紙の内容はこうだ。“太宰、死歿せしむる時 汝らのあらゆる秘匿__公にならん______。”」

「真逆手前…ッ!?」

「元幹部で裏切り者の私を捕縛した。けど上層部に太宰が死んだら組織の秘密が全部バラされるよって云う手紙まで付いて来た。検事局に渡れば、ポートマフィアの幹部全員を百回は死刑に出来る。幹部会を開くには充分過ぎる脅しだ。」

「そんな脅しに日和る程ポートマフィアは温くねェ。手前は死ぬ。処刑だ!!」

中也は声を少し荒らげるが、冷静に対応する。

「だろうね。けど其れは幹部会の決定事項だ。決定前に私を勝手に私刑に掛けたら独断行動で背信問題になる。最悪処刑に処されるだろうね」

「そして俺が諸々の据を振り切って手前を殺したとしても…手前は死ねて喜ぶだけ……」

其の通り、と云う代わりににっこりと微笑んで見せる。

「って事でやりたきゃどうぞ?」

中也は躊躇う様に少し俯く。カチャ、と少しナイフの音が聞こえる。ほら、早く、と急かし、態とらしく、まーだーかーなー?と煽ってみる。

ナイフを持つ手を挙げ、空中で少々回し、逆手持ちに変えると私の顔の輪郭スレスレに壁にナイフを突き刺す。すると、距離が近い状態から私に背を向けて歩いていく。

其れでも頬が少し切れた様で、血が滴る。

「…なぁんだ、辞めるの」

「私の所為で組織を追われる中也___ってのも素敵だったのに」

外套を拾おうとした手を止め、何かに気付いた様に声を漏らす。嗚呼、漸と気付いたのだね。これだから脳筋は…と心の中で呟く。

「……真逆、____ッて事は、二番目の目的は、俺に今の最悪な選択をさせる事…!寧ろ手前が俺に嫌がらせをする為に待ッてたッて事か……」

中也の刺したナイフを手に入れて、中也に歩み寄る。

「久し振りの再開なんだ、サプライズも悪くないだろう?」

死なす、いつか死なす、と呟く声が聞こえる。本当変わらないなぁ、弄り易い所も背が低い所も。

「所で、鎖を壊して私を解放したのは君だよねえ…私が此の儘逃げたら、君が逃亡幇助の疑いを掛けられるよお?」

煽る様に云ってみると、背を向けて居たのを此方に向けて、また怒鳴り出す。

「君が云う事を聞くなら、探偵社の誰かが助けに来た風に偽装しても良いよ」

「それを信じろッてのか」

「私はこう云う取引で嘘は付かないよ。君なら__知ってると思うけれど?」

ナイフの刃を相手に向けて投げると、身体能力の高い中也は綺麗に掴んで勢いを停止させる。

「…手前、望みは何だよ」

「さっき云っただろう」

「人虎が如何とかの話なら、芥川が仕切ってる。奴は二階の通信保管所に記録を残してる筈だ。」

「あっそ!まあ予想は付いてたけどねえ!」と煽ると矢張りあァ!?と怒る。ぷぷぷ、本当に変わらないんだねえ。

「用を済ませて颯さと消えろ蛸」

「そりゃあどおも。でも一つ訂正。今の私は昔とは違う。独りの淋しい様な自殺じゃなくて美女との心中が夢なのだよ。君に蹴り殺されても毛程も!!嬉しくないのだよ」

「あっそ」

「じゃあ今度自殺志望の美人探しといてやるよ」

「…!!中也…!!君実は善い人だったのかい…!?」

「早く死ねッて意味だよ莫迦野郎」

出入口の階段を少し許り登ると、此方に振り返る。

「此れで終わると思うなよ」

二度目は無ェぞ、と言われる____が、違うよね、中也??

「ちがうちがあう。何か忘れてなあい?」

「なあんーかあー!わーすれてなあーいかなあーっ!?」

少しの間悶えた後、キュッと内股になる。

「二度目は無くってよぉっ!」

どうやら恥を捨てたらしい中也は、迚も惨めで面白い。

「なくって……よ……」

「笑う所だろ此処!!!!!」

大きな叫び声が響いた。

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