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「…さん??」
「はい…!?」
から返事して我にかえる。そうだ、菊田様の施術中だ。
「申し訳ありません!!」
「入り口に誰かいた??」
「はい…。ここに店を構えた時から懇意にしてくれている常連様です。徐々に私を指名する回数が増えて、今ではストーカーされるようになってて…。」
「いつから??」
「3ヵ月前からです。」
「警察に相談した??」
「はい、自宅までつけられてたのが分かった時にすぐ。なるべく巡回するって言ってくれたんですけど、その隙を狙ってくるんですよね。」
「卑怯なヤツだな。他にこのこと知ってる人は??」
「マスターと先輩です。すみません、お客様にこんな話をして…。」
「良いんだ。怯えてる顔してたから心配になって。」
「指名がない限り早めにあがらせてもらったり、マスターと先輩交代で一緒に閉店作業してきたんですけど、今日に限って2人とも居なくて…。」
「それでこの状況はまずいな。」
「はい。お店には防犯カメラがあるので中に入ってくることはないと思うんですけど…。今日はタクシーで帰るしかないでね。」
「1人暮らし??」
「そうなんです。」
「不安だよね、余計に。」
「はい。すみません、手が止まってましたね…。」
さっきのことを引きずるまいと、黙々と手を動かした。
「俺も一緒にタクシーで帰ろうか。」
「え!?」
終わってカバーを外そうとした時、そう言うので驚いて固まる。
「タクシー待ってるに間に何かあったらって思ったら1人にさせられなくて…。」
さらに言って気まずそうに視線をそらす。私も意外な申し出に戸惑って、足りない頭で返事を絞り出す。
「お願いします…。」
お互い胸を撫で下ろした。そうと決まれば。
「急いで閉店準備しますね。待ち合いのソファに座って待っててください。よかったら飲み物ご用意します、コーヒーかほうじ茶しかないんですけど。」
「ほうじ茶お願いしようかな。」
「ホットかアイスか。」
「ホットで。」
「かしこまりました。」
途中でタバコを吸うと外に出られてからなんと、家に帰ったら食べてと差し入れをいただいてしまった。
「お待たせしました。」
シャッターを下ろし、タクシーを拾いやすいところまで歩く。
「大丈夫??」
「はい。」
無意識に袖口を掴んでしまったことに難色を示すことなく、私を傍に寄せてくれる。
「止まってくれるかな。」
手をあげると止まってくれて、要人警護のように私を先に乗せてくれる。行き先を伝えしばしタクシーに揺られている間。
「俺の名刺、渡しとくね。」
「はい、ありがとうございます…。!?、あの一流貿易会社の専務でしたか。ただ者ではないと思ってましたが…。」
「驚いた??」
「とても。」
「あと、万が一のためにというのも何だが。」
◯INEの連絡先も交換してくれた。
「今日は本当にありがとうございました。この埋め合わせは必ずします。」
「いいよいいよ、気にしなくて。じゃあゆっくり休んで。」
そう言ってタクシー代も受け取らず行ってしまった。
それ以来、ストーカー行為はぱたりと止んだ。それでもまめに連絡を取ってくれて、店先でもタイミングが合えば声をかけてくれた。
だから、すっかり安心しきっていた。
ある夜、仕事から帰宅して玄関のドアを開けた時。背後から抱きつかれ、抵抗しようと揉み合いになった。その流れで部屋に押し込まれてしまって、それから、
それから…。