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車のドアを開け、先に自分が降りてから隣に乗っていた樹をうながす。
「ゆっくりね、気を付けて」
「わかってるよ」
ちょっと面倒くさそうに返す。
杖を地面に下ろし、ゆっくりと片足ずつ車から降りる。
メンバーとともに、スタッフさんに言われた場所へ行く。
今日はYouTubeの撮影で、キャンプ場に来ていた。車内からずっとテンションの高かった高地は、早速たき火の準備に取り掛かっている。
「うおーすげー!」
そしてもう一人、ハイテンションなのがジェシー。まるで初めてのものを見る子どものようにはしゃいでいる。ほかのメンバーも目を輝かせて、わくわくしているようだ。
「座んなくて大丈夫?」
心配して言っても、樹はあっけらかんとしている。
「大丈夫だよ。作業は手伝えないけど」
「まあ高地がやってくれるよ」
二人で笑い合っていると、慎太郎がやってくる。「樹ー、椅子出そうか?」
「いいよ、自分で出す。俺、なんか手伝えることある?」
「大丈夫だって」
みんながこういう風に気に掛けるのも、樹の足のことがあるから。
数年前の事故で足を怪我し、今も後遺症が残っている。右足は股関節以外ほとんど曲がらないし、左足は軽いけれど少し動かしづらいらしい。歩くときには杖がいる。形は高齢者の杖と同じだから、よく高地と一緒に「おじいちゃん」っていじられる。
でも、杖は黒色でスタイリッシュだから全然そんなことはない。
と、早速スタッフさんにキャンプ用の椅子を置いてもらったようで、樹が座っている。
大我「樹、座るの早いって!」
樹「いいもん、俺の特権」
大我「俺も座らせろっ」
京本が、半ば強引に樹の上に座ろうとしている。それでも楽しそうに笑う樹。
あの二人のやり取りは、いつも聞いていておもしろいなと思う。
でも京本も、足の上に全体重を乗せたら痛いということを知っているから、手加減している。
樹「ちょ、ごめんきょも、痛い…」
だがわずかに痛みがあったのか、足を押さえた。すぐさま京本は退き、「ああごめん! 大丈夫?」
樹「うん。心配すんな」
高地「ねえー、なんか燃えそうな木の枝拾ってきてくんね?」
着々と進めていた高地が、自由奔放に遊びだしたメンバーに声かけをする。それぞれ素直に従い、色々な枝を持ってくる。
慎太郎「見て! 天然の着火剤」
ジェシー「これをどうすんの?」
高地「だから燃やすんだよ笑」
いつものわちゃわちゃとした雰囲気で進んでいく。そして一通り用意が済んだ。というのも、ほとんど高地がやってくれたのだが。
みんなはたき火の周りで椅子に腰を落ち着け、
ジェシー「あったかーい」
慎太郎「あったけぇ…」
樹「音いいよね」
大我「音だけ録って動画にするのもいいかも」
高地「俺らなし…⁉」
「まあ、たまにはいいかもね」
樹「それに北斗のナレーション付きで。低音ボイスで」
「なんじゃそれ」
ジェシー「いいねえ、AHAHA!」
そのあとは次の回の企画を撮り、夕方になったところでお待ちかねのバーベキューだ。
買ってきた食材を広げ、チームに分かれて作業する。俺は魚チーム。
「うまそう、この魚。名前なんだっけ?」
慎太郎「イナダ。魚へんに秋って書く」
「へえ」
大我「それってサンマじゃなかったっけ?」
慎太郎「それはねえ…えーっと、秋に刀に魚だわ」
大我「ああそうか!」
慎太郎がテキパキと捌いてくれているので、少し席を離れてもう一つのチームを見に行く。
「おーい、どんな感じー?」
高地「順調ー」
樹「見て、肉、おいしそうだべ」
北斗「こっちも魚すげーうまそうだよ」
ジェシー「早く食べたい」
高地「ダメ、まーだ」
結局、いつものように喋りまくっていたせいか、準備に2時間かかって食事が出来上がった。
6人「いただきまーす」
「俺高地が炊いてくれた米食べたい」
高地「そこから自由に取っていいよ」
樹「きょも取ってー」
大我「はいはい」
ジェシー「うまーい」
大我「おいしっ」
樹「マジでうまい」
慎太郎「あっつ」
各々の反応を見て、なぜか嬉しくなる。ほんと、俺ってメンバーにのろけてるなと思う。
「んーおいしい」
隣に座った樹が、「よかったね」なんて言うから笑えてくる。
「いいよね、こんなみんなでバーベキューなんて」
樹「うん。楽しいね」
目じりにしわを寄せ、満面の笑みを見せる。
俺も微笑み返した。
続く