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今は冬まっただ中。
最近はくもり続きだったけど、今日はめずらしく太陽が顔をのぞかせている。
緋翠(ひすい)中、1-2教室にて。
生徒の体温とストーブにより、教室は外の寒さを忘れてしまうくらい暖かい。この後の換気時間が恨めしく思うくらいだ。
あたし、朱兎紅音(しゅと あかね)は陽光がそそぐ窓際に立って身体を温めていた。
「ねえ、『ふたりかくれんぼ』って知ってる?」
そう言って楽しそうに笑うのは桜堂明澄(さくらどう あずみ)。怖がりのくせに都市伝説好きの、あたしの親友だ。付き合いは小2くらいからかな。
「ううん、ひとりかくれんぼみたいなやつ?」
「ほぼそんな感じかな」
ジーッ……
明澄は期待に満ちた目でこちらを見つめてくる。
あたしは苦笑し、
「じゃあそれやってみるよ」
そう答えると明澄は顔をほころばせた。
明澄があまりにも楽しそうに都市伝説を語るから、あたしも興味を持つようになったんだよね。
だけどあたしは聞くだけでとどまらず、実際に現地に行ってみたり、検証したりしている。もちろん確実に死ぬモノには手を出してないよ。
偶然なのかあたしに霊感がないのか、怪奇現象ひとつ出会ったことはないけど。
「結果楽しみにしてるね」
「え、明澄もやるんだよ?」
「え?」
明澄の鮮緑(せんりょく)の瞳が丸くなる。
数秒の沈黙。そして、
「むっむり、むりむりむり!」
勢いで首が回りそうなくらい振り始めた。
確かに怖がりの明澄にとって実際にやるのは酷(こく)だとは思うよ。
あたしはパンと両手を合わせた。
「でも他にやってくれそうな人思いつかないし、そこをなんとか……!」
本音を言うと、明澄と都市伝説の検証やってみたいだけ。昔からずっと思っていたことなんだ。
だからこれをキッカケに参加させてみせる!
「ほら、前にあたしひとりかくれんぼした時なにも起こらなかったでしょ?」
「で、でも怪奇現象くらいは起きるんじゃ」
「大丈夫、なにかあったらあたしがぬいぐるみをボコボコにしてやるからさ!」
任せてよと胸を叩く。
それでも明澄はなかなか踏(ふ)ん切(ぎ)りがつかないらしく、しばらく「うー……ん」と唸(うな)っていた。