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「一番待ち時間の長いやつからにしない?」
恵が言い、尊さんが頷く。
「だな。プレミアパスも買ったけど、早めに攻めてこーぜ」
プレミアパスは、有料だけれど人気のアトラクションを時間指定して乗れるサービスで、本来なら二百分待ちのところ、三十分待ちとかで乗れる事ができるし、パレードをいい席で見られるなどもある。
尊さんはお金にものを言わせて、プレミアパスを買ってくれたみたいだ。
ちなみに事前にレストランも予約しているので、ぬかりがない。
勿論、すべてラビティーランドの公式アプリをインストールした上での事だ。
あまりに慣れてるので「プロですか?」と聞いたけど、「せっかくのデートで失敗できねぇから、めちゃ調べた」らしい。
勿論、アプリを沢山使う事を見越して、モバイルバッテリーも持参している。
そのあと、ランド特有のメルヘンチックな世界観を楽しみ、何枚も記念写真を撮りつつ、アトラクションを楽しんでいった。
ちなみに私も恵も、世界観と遊園地的アトラクションを楽しみたいタイプで、キャラクターとの写真撮影やショーはそれほどという意見で纏まっている。
尊さんと涼さんは私たちに合わせてくれる感じなので、ほぼ私たちの希望通り楽しむ事ができた。
最初は『美女と野獣』のアトラクションに乗り、ゆったり動くカップ型の乗り物に乗り、お話の世界観に没入した。
私たちがアトラクションを楽しんでいる間も、尊さんは時間を確認して次のプレミアパスを取得している。……ありがとうございます。
いつも彼は高級腕時計をしているけれど、今日はスマートウォッチをつけて、六十分を測りながら行動していた。申し訳ない。
そのあとは宇宙戦争な映画を体感するスペースツアーズに行き、コアラ型の宇宙人、スティックのシアター型アトラクションを楽んだあと、ハッピーマックスのウキウキライドに乗った。
その時点でお昼になったので、私たちは一旦お土産屋さんが並ぶセントラルバザールに向かい、予約していたイタリアンのお店で、前菜、パスタ、お肉、デザートに飲み物とパンがつくコースを食べた。
キャラのついた料理ではなく、普通の高級そうなレストランで出てくる雰囲気の料理だけれど、お店の内装も落ち着いていながら、壁に絵皿が飾ってあったりでとても可愛い。
料理は綺麗で美味しいし、私と恵はキャーキャー言いながら写真に撮り、美味しくいただいた。
そのあとは船に乗ってジャングルを楽しみ、カリブ海の海賊たちに襲われる雰囲気を味わう。
お目当ての一つであるビッグボルケーノマウンテンに乗って絶叫したあと、ウェーブマウンテンで丸太のボートに乗ってまた絶叫する。
その頃には尊さんは真顔になっていて、「老いを感じるな……」と呟いていた。
ぐるりと回って最後にホーンテッドハウスに行ったあと、特等席でパレードを見るために歩いていった。
無事、パレードが来る前に番号が書かれてあるところに着いて待機している間、私は疲れ切って恵と一緒に座り込む。
「よく遊んだな。……俺、すげぇ久しぶりだわ」
地面に胡座をかいた尊さんが溜め息をついて言い、後ろの人の邪魔にならないようにキツネの耳がついた帽子をとる。
私たちはラビティーのカチューシャをつけているけれど、男子組は抵抗があったのか帽子だ。
「たまにはいいんじゃないですか? 童心に返ったって事で」
「……だな。あんまりこういう所で遊ぶタイプじゃなかったから、いい経験になったわ」
言われて、彼が友達とランドどころじゃなかったのを思い出し、私はポンポンと彼の背中を叩く。
「悪い、変な空気にした」
「いえいえ、いいんですよ。いま楽しいならそれが一番」
ニコッと笑うと、尊さんは安心したように微笑み、私の手をそっと握ってくる。
一日遊んだなかで恵と涼さんもかなり距離が詰まったみたいで、入園前の雰囲気はもうない。
日没前でまだ明るいなか、私たちは寄り添ってパレードを待つ。
今日一日、なんのアトラクションが楽しかったかを話している傍ら、私は恵と涼さんの会話にも耳を澄ましていた。
「恵ちゃんは食べ物、何が好きなの?」
いつの間にか、涼さんは恵の事をちゃん付けで呼ぶようになっていた。
最初、「距離感が近いな」と鬱陶しがっていた恵だけれど、一日一緒に過ごすなかで涼さんへの印象を改めたからか、そう呼ばれる事を許している。