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何度も抱かれたのに、まるで初めての時のように鼓動が乱れる。
胸の先端を口に含まれ、舌先で転がされる。
「ふっ——」
雄大さんは知ってる。私以上に、私の身体を。
その快感に、抗えるはずがない。
スカートをたくし上げられ、ストッキングと一緒にショーツを脱がされ、ベッドの下に放り投げられる。
雄大さんの指が、太腿を撫でる。ゆっくりと足の付け根に向かって。意識が、彼の指先に集中する。それだけで、足の間がじんわりと熱く湿る。
触れられることを期待して、思わず身体が強張る。無意識に手の甲で唇を塞ぎ、声を殺した。
雄大さんは胸から口を離すと、顔を上げて私を見つめた。
私の頭を撫で、瞼にキスをくれて、優しく微笑む。
「手、どけろよ」
既視感?
私は目を瞑り、首を振った。
「キスしたい」
口を覆う手にキスされて、私は手を口から離した。代わりに、雄大さんの唇が私の唇を塞ぐ。
違う。
舌を絡ませながら、雄大さんの手が湿った入り口を撫で、すぐ上の膨らみをつまむ。私は思わず、身体を仰け反らせた。雄大さんの指が、膨らみの上の方をコリコリと強く押したりつまんだりして、弄ぶ。
同じ……だ。
執拗な愛撫に、じっとしていられなくなる。
「だ……め……」
足を閉じようと力を入れるも、雄大さんが足を挟んで阻止する。大きく脚が開かれて、絶えず快感を与えられ、我慢なんて出来るはずもない。
「ダメダメッ――!」
「やっぱ、お前のダメは可愛いな」
やっぱり……!
「もっと、って聞こえる」
「ちが——!」
膨らみを擦る指が速度を上げ、同時に胸を吸われ、私は悦びに身体を痙攣させ、絶頂に導かれた。
「あああっ——!」
初めての時と同じ……。
「あの時、言っただろう?」
息も絶え絶えに、雄大さんの言葉に耳を傾ける。
「『お前の全部、俺のモンだ』って——」
両膝を担がれたかと思ったら、雄大さんが最奥まで一気に押し入ってきた。
「んんんっ!」
僅かな痛みと、慣れた快感。
身体は素直で、悦んで雄大さんを迎え入れた。
「痛いか……?」
私は首を振った。
最後に抱かれたのは三週間くらい前。久し振りと言えるほどの時間じゃない。けれど、それまでずっと、三日と開けずに抱かれていたから、すっかりそれに慣れてしまっていた。だから、ほんの少し痛い。
「素直じゃないな、ホント」
雄大さんは腰を引くと、勢いよく突き上げた。
「痛いのは、お仕置だから我慢しろ」
激しく突き動かされて、声も我慢出来なくて、私はただシーツを強く握りしめた。
「あ……、ああっ——!!」
気持ちいい——……。
自分でも驚いた。
忘れていたことにも。思い出したことにも。
息もつけないほどの快感に、思考は麻痺していた。なのに、突然醒めた。
「ストップ!」
自分でも驚くほどはっきりと、言った。
雄大さんも驚いて動きを止めた。
はあ、はあ、と浅く早い二人の息遣いが部屋に響く。
私は雄大さんを膣内に留めたまま、上体を起こして、雄大さんのベッドに押し倒した。膝をつき、少し身体を浮かせた。
私から見て左わき腹に、五・六センチの傷。傷口はまだ赤く、痛々しい。
私はそっと、本当にそっと、傷に触れた。
「ごめんなさい……」
涙が、溢れる。
大洪水。
「ごめんなさい」
雄大さんを傷つけた。
「ごめんなさい」
なのに。
「ごめんなさい——」
私、嬉しい——。
この傷がある限り、雄大さんは私を忘れないでしょう——?
この傷は、私と雄大さんが確かに『共犯者』だった証。
この傷は、私が雄大さんに愛された証。
私、狂ってる————。
「なぁ、馨」
雄大さんが起き上がって私の首の後ろを掴んだ。少し強引に引き寄せる。
その拍子に、膝が滑って雄大さんのお腹に体重が乗ってしまった。同時に、奥深くに雄大さんが滑り込む。
「悪いと思ってんなら、そばにいろよ」
「ゆうだ——」
「一生、そばにいろ」
雄大さんの瞳に映る私が見えた。
「どうせ苦しむなら、俺のそばで苦しめ」
『私』が、揺れる。
「これは、証だ」
『私』が、滲む。
「俺がお前のモンだっていう、証だ」
『私』が、零れる。
「この傷一つで、一生お前を縛ってやる——」
縛られたい、と思った。
一生、雄大さん《この人》の腕に縛られていたい——。
けれど、それは決して望んではいけない。
どんなに望まれても、応えてはいけない。
だから————。
「だから……言えよ」
雄大さんの頬を伝う雫を、唇で掬う。
「言ってくれ」
雄大さんの頬に、鼻に、瞼に、キスをする。
「明日には忘れてやるから」
雄大さんの唇に、キスをする。
「愛してる……」
ずっと言いたくて言えなかった。
「愛してるわ——」
夢中で、キスをした。
ほんの微かな隙間もないほど、抱き合った。
他の誰も触れることを許さない最奥が、雄大さんで満たされていく。
ずっと、自分に言い聞かせていた。
何度身体を重ねても、どんなに強く焦がれても、私と貴方は共犯者——。
けれど、今は違う。
今だけは、違う。
今だけは、愛し合う男と女。
今夜だけは————。